今年の紅白歌合戦出場歌手は、各所で殊更に「若者向け」やら「高齢者には分からない」といった声が聞かれます。確かに初出場のメンバーは例年よりフレッシュな印象もありますが、過去の紅白歌合戦は果たしてどうだったのでしょうか。というわけで、今回は各回における紅白歌合戦出場歌手の平均年齢を調べることにしてみました。
データは出場歌手の年齢の合計/出場組数としますが、グループの歌手についてはメンバーの平均年齢を1データとします。特別出演歌手に関しては集計していません。また、年齢不詳および非公表の歌手については集計しないものとします。また、多少のミスがある可能性があることもご了承下さい。
1950年代
該当回 | 平均年齢 | 最年長 | 年齢 | 最年少 | 年齢 |
第1回(1951年) | 38.1 | 東海林太郎 | 52 | 菅原都々子 | 24 |
第2回(1952年) | 33.7 | 鈴木正夫 | 51 | 宇都美清 | 23 |
第3回(1953年) | 34.6 | 松島詩子 | 47 | 荒井恵子 | 23 |
第4回(1953年) | 36.4 | 鈴木正夫 | 53 | 宇都美清 | 25 |
第5回(1954年) | 33.3 | 藤原義江 | 56 | 河野ヨシユキ | 11 |
第6回(1955年) | 36.5 | 藤原義江 | 57 | 河野ヨシユキ | 12 |
第7回(1956年) | 34.7 | 東海林太郎 | 58 | 大津美子 | 18 |
第8回(1957年) | 31.4 | 松島詩子 | 52 | 浜村美智子 | 19 |
第9回(1958年) | 31.3 | 松島詩子 | 53 | 東郷たまみ | 18 |
第10回(1959年) | 31.1 | 松島詩子 | 49 | 伊藤エミ・ユミ (ザ・ピーナッツ) |
18 |
草創期の紅白は戦前から活躍する歌手も多かったですが、出場組数が紅白各20組以上に拡大した第7回以降はデビュー10年以内の戦後組が中心になります。第8回の大トリは20歳の美空ひばり、時代の移り変わりをおおいに感じさせるフレッシュさでした。
1960年代
該当回 | 平均年齢 | 最年長 | 年齢 | 最年少 | 年齢 |
第11回(1960年) | 30.5 | 松島詩子 | 52 | 橋 幸夫 | 17 |
第12回(1961年) | 29.4 | 淡谷のり子 | 51 | 橋 幸夫 | 18 |
第13回(1962年) | 27.2 | 森繁久彌 | 49 | 弘田三枝子 | 15 |
第14回(1963年) | 27.6 | 森繁久彌 | 50 | 伊東ゆかり | 16 |
第15回(1964年) | 29.5 | 淡谷のり子 | 57 | 三田 明 | 17 |
第16回(1965年) | 28.0 | 東海林太郎 | 67 | 山田太郎 | 17 |
第17回(1966年) | 26.9 | 三波春夫 | 43 | 山田太郎 | 18 |
第18回(1967年) | 27.1 | 三波春夫 | 44 | 山本リンダ | 16 |
第19回(1968年) | 28.2 | 三波春夫 | 45 | 今 陽子 (ピンキーとキラーズ) |
17 |
第20回(1969年) | 28.1 | 三波春夫 | 46 | 今 陽子 (ピンキーとキラーズ) |
18 |
弘田三枝子と中尾ミエが戦後生まれ初出場を果たした第13回以降、完全に10代~20代がメインになります。第17回以降はキャリア20年を超える、戦前戦中から歌謡界で活動する歌手の出場は皆無になりました。平均年齢を見ても分かる通り、完全に若者向けの紅白です。もっとも当時は家族でテレビ一台の時代、明治~大正生まれである中年以上の年齢層にとっても馴染みの深い名前は多かったかもしれません。
1970年代
該当回 | 平均年齢 | 最年長 | 年齢 | 最年少 | 年齢 |
第21回(1970年) | 27.0 | 三波春夫 | 47 | おりも政夫 (フォーリーブス) |
17 |
第22回(1971年) | 28.3 | 三波春夫 | 48 | 南 沙織 | 17 |
第23回(1972年) | 27.3 | 三波春夫 | 49 | 野口五郎 | 16 |
第24回(1973年) | 26.8 | 三波春夫 | 50 | 森 昌子 | 15 |
第25回(1974年) | 27.9 | 三波春夫 | 51 | 山口百恵 | 15 |
第26回(1975年) | 28.0 | 三波春夫 | 52 | 山口百恵 | 16 |
第27回(1976年) | 29.8 | 三波春夫 | 53 | 山口百恵 | 18 |
第28回(1977年) | 29.6 | 三波春夫 | 54 | 高田みづえ | 17 |
第29回(1978年) | 29.0 | 三波春夫 | 55 | 高田みづえ | 18 |
第30回(1979年) | 29.8 | 三波春夫 | 56 | 石野真子 | 18 |
アイドルという単語が一般化し始めた時代、1970年代中盤は特にこのジャンルの初出場が相次ぎました。第24回は歴代の紅白歌合戦で最も平均年齢が低くなっています。この時期の紅組は第27回初出場の二葉百合子を除いて全員が30代以下、最年長かつ最多出場者の島倉千代子が1978年にようやく40歳になるという状況でした。
1980年代
該当回 | 平均年齢 | 最年長 | 年齢 | 最年少 | 年齢 |
第31回(1980年) | 30.2 | 三波春夫 | 57 | 松田聖子 | 18 |
第32回(1981年) | 31.4 | 三波春夫 | 58 | 近藤真彦 | 17 |
第33回(1982年) | 31.3 | 三波春夫 | 59 | 薬丸裕英 (シブがき隊) |
16 |
第34回(1983年) | 30.7 | 三波春夫 | 60 | 早見 優 | 17 |
第35回(1984年) | 32.0 | 三波春夫 | 61 | 堀ちえみ | 17 |
第36回(1985年) | 31.1 | 三波春夫 | 62 | 原田知世 | 18 |
第37回(1986年) | 33.5 | 三波春夫 | 63 | 荻野目洋子 | 18 |
第38回(1987年) | 33.9 | 村田英雄 | 59 | 荻野目洋子 | 19 |
第39回(1988年) | 33.0 | 菅原洋一 | 55 | 佐藤敦啓 (光GENJI) |
15 |
第40回(1989年) | 39.5 | 藤山一郎 | 78 | 佐藤敦啓 (光GENJI) |
16 |
1980年代に入ると平均年齢は30代突入となります。1970年代までと比べて出場歌手の入れ替わりはやや少なく、80年代後半はベテランの復帰・初出場も目立つようになりました。第40回は前半が完全に懐メロ中心の構成、そのため平均年齢は一気に上がっています。
1990年代
該当回 | 平均年齢 | 最年長 | 年齢 | 最年少 | 年齢 |
第41回(1990年) | 35.1 | 植木 等 | 64 | オユンナ | 15 |
第42回(1991年) | 34.6 | アンディ・ウィリアムス | 64 | 香取慎吾 (SMAP) |
14 |
第43回(1992年) | 35.6 | 谷 道夫 (デューク・エイセス) |
58 | 香取慎吾 (SMAP) |
15 |
第44回(1993年) | 36.4 | 北島三郎 | 57 | 香取慎吾 (SMAP) |
16 |
第45回(1994年) | 36.4 | 北島三郎 | 58 | 長瀬智也 (TOKIO) |
16 |
第46回(1995年) | 37.4 | 北島三郎 | 59 | 長瀬智也 (TOKIO) |
17 |
第47回(1996年) | 38.5 | 北島三郎 | 60 | 長瀬智也 (TOKIO) |
18 |
第48回(1997年) | 37.0 | 北島三郎 | 61 | 島袋寛子 (SPEED) |
13 |
第49回(1998年) | 37.0 | 北島三郎 | 62 | 福田明日香 (モーニング娘。) |
14 |
第50回(1999年) | 39.2 | 三波春夫 | 76 | 後藤真希 (モーニング娘。) |
14 |
放送時間が拡大した平成以降は、出場歌手の半分近くが演歌・歌謡曲系で占められていました。1990年代後半以降はSPEEDやモーニング娘。など10代半ばのメンバー出場が増えましたが、それ以上に長年連続出場している歌手の新陳代謝が進まず平均年齢の上昇が続きます。
2000年代
該当回 | 平均年齢 | 最年長 | 年齢 | 最年少 | 年齢 |
第51回(2000年) | 37.9 | 北島三郎 | 64 | 加護亜依 (モーニング娘。) |
12 |
第52回(2001年) | 40.0 | いかりや長介 (ザ・ドリフターズ) |
70 | 新垣里沙 (モーニング娘。) |
13 |
第53回(2002年) | 35.2 | 北島三郎 | 66 | 新垣里沙 (モーニング娘。) |
14 |
第54回(2003年) | 36.7 | 北島三郎 | 67 | 田中れいな (モーニング娘。) |
14 |
第55回(2004年) | 37.0 | 北島三郎 | 68 | 田中れいな (モーニング娘。) |
15 |
第56回(2005年) | 36.3 | 北島三郎 | 69 | 久住小春 (モーニング娘。) |
13 |
第57回(2006年) | 38.2 | 北島三郎 | 70 | 久住小春 (モーニング娘。) |
14 |
第58回(2007年) | 38.0 | 北島三郎 | 71 | 萩原 舞 (℃-ute) |
11 |
第59回(2008年) | 38.4 | 北島三郎 | 72 | 大橋のぞみ | 9 |
第60回(2009年) | 38.9 | 北島三郎 | 73 | 松井珠理奈 (AKB48) |
12 |
第52回ではついに平均年齢が40の大台になります。ただ翌年に多少の出場歌手入れ替えがあったことで、その後は30代後半での推移が続きます。
2010年代~現在
該当回 | 平均年齢 | 最年長 | 年齢 | 最年少 | 年齢 |
第61回(2010年) | 40.4 | 北島三郎 | 74 | 松井珠理奈 (AKB48) |
12 |
第62回(2011年) | 39.8 | 北島三郎 | 75 | 芦田愛菜 | 7 |
第63回(2012年) | 39.9 | 美輪明宏 | 77 | 江籠裕奈 (SKE48) |
12 |
第64回(2013年) | 40.7 | 美輪明宏 | 78 | 山内つばさ (NMB48) |
13 |
第65回(2014年) | 39.2 | 美輪明宏 | 79 | 田中美久 (HKT48) |
13 |
第66回(2015年) | 41.0 | 美輪明宏 | 80 | マリウス葉 (Sexy Zone) |
16 |
第67回(2016年) | 39.0 | 五木ひろし | 68 | 平手友梨奈 (欅坂46) |
15 |
第68回(2017年) | 38.4 | 五木ひろし | 69 | 中村麗乃 (乃木坂46) |
16 |
第69回(2018年) | 38.1 | 五木ひろし | 70 | 伊藤理々杏 (乃木坂46) |
16 |
第70回(2019年) | 36.8 | 五木ひろし | 71 | 新津ちせ (Foorin) |
9 |
第71回(2020年) | 37.7 | 五木ひろし | 72 | 新津ちせ (Foorin) |
10 |
第72回(2021年) | 38.5 | 天童よしみ | 67 | 山崎 天 (櫻坂46) |
16 |
第73回(2022年) | 36.6 | 天童よしみ | 68 | LEESEO (IVE) |
15 |
第74回(2023年) | 40.3 | さだまさし | 68 | 小川 彩 (乃木坂46) |
16 |
近年の出場歌手の平均年齢はかなり高いです。数字を大きく押し上げていた北島三郎や美輪明宏が出場しなくなって以降は多少落ち着きましたが、それでも30代前半の数字には遠いです。
第73回は平均年齢が下がり、第56回の水準まで数字が戻りましたが第74回は8年ぶりに40代平均を記録します。その割に近年は出場者の若返りという文字を記事で目にする機会が多いです。ただ昭和の紅白は草創期を除いて軒並み20代後半が出場歌手の平均年齢、そう考えると現在の60代~70代は現役当時かなり若者向けの人選の紅白を見ていたと言っても過言ではないと思います。テレビを取り巻く環境が現在と違うので単純に今の時代を当てはめるのは良くないですが、少なくとも高齢者世代の一部が自分たちの世代中心の人選にすべきという意見には個人的に賛同出来ません。
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