紅白名言集解説・63~結婚式場に様変わりした紅白のステージ~


 昨日発表された星野源さんと新垣結衣さんのご結婚。ビックリしました。そして本当におめでとうございます。ゲスト審査員だったガッキーがいる中で源さんが「恋」を歌った時に、彼女が少し恥ずかしそうに恋ダンスを踊ったシーン。これは平成紅白歌合戦の歴史に残る名場面として、今後さらに語り継がれる場面になると思います。

 さて今回の名言集解説、「恋」を歌う前のガッキーと源さんのやり取りでも良かったのですが、それだとあまり芸がありません。紅白ファンでなくてもこれを取り上げている人はいっぱいいるはずで、何より私が逃げ恥をちゃんと見ていません。他の人に任せた方がおそらく良い記事になります。もしくは過去話題になったカップルもしくは結婚前の共演辺りを取り上げても良いのですが、これは正直申し上げると縁起がよろしくありません。1984年のあの共演とか、2007年とか2013年とか…。少なくともこのタイミングで書くような記事ではありません。

 というわけで、今回選んだのは1973年より、佐良直美「世界は二人のために」のステージ。曲中に、ちょっとした企画が設けられる内容となりました。

選曲について

 「世界は二人のために」は、1967年に発表された佐良さんのデビュー曲。早々に大ヒットを記録して、当時では珍しい(いや、現在も少ないですが)デビュー1年目からの紅白初出場となります。楽曲のヒットはレコード大賞を受賞した「いいじゃないの幸せならば」以外そこまで大きなものはありませんでしたが、歌唱力の高さと話術の巧みさで紅白出場は13年連続の常連となります。紅白では紅組司会を5度務めましたが、民放でも歌番組やバラエティの司会を務めてドラマの出演もこなすマルチタレントでした。

 昭和の紅白はよほどのベテラン以外、歌謡曲を歌う歌手はその年発売の楽曲を歌うのが原則でしたが、1973年はNHKホール1年目ということもあって中堅以上はよほどヒットした人以外ほぼ全員が過去曲でした。佐良さんもその一環での選曲でしたが、その分ステージに大きな工夫を凝らします。

 勿論大掛かりで綺麗な映像は当時ありません。それどころか、舞台やセットの転換もない時代。ですので、考えたのは人の動かし方編曲です。

ステージレビュー~演出の工夫

 まずは舞台中央後方から、歌いながら移動する佐良さんを紅組歌手全員で出迎えます。ステージ中央に移動完了、2番に入ったところで司会のチータが着物姿のアグネス・チャンを引っ張り出します。彼女はデビュー2年目・この年「ひなげしの花」で初登場。香港からやって来た当時バリバリの超人気アイドルです。

 さらにもう1人、応援団長の和田アキ子さんが引っ張り出したのが白組司会の宮田輝アナウンサー。こちらもタキシード姿でしっかり決めています。この2人を並ばせて、紅組歌手が全員で拍手。2番が終わり、間奏で演奏されたのはなんとウェディング・マーチ。その間に、こんなテレビ実況も入ります。


 折しも当時は第2次ベビーブームの真っ只中、成立するカップルも群を抜いて多いです。1985年にも司会者のやり取りで結婚組数を話す場面もありましたが(名言集解説31参照)、その時点で約72万。2019年のデータが約60万、80万を切ったのが1978年なので、いかに当時の20代人口が突出して多かったがよく分かります。その世代が、今は70代の高齢者になっているわけですが…。

 おそらく2人を引き合わせるような演出はその場のノリで決めたはずで、台本ではなかったと推察されます。アグネスさんが手が口を隠して、少し恥ずかしそうな笑顔を見せていたのが印象的でした。当時の感覚だと非常に微笑ましい光景で私もそう思っているのですが、今の時代にそのまま当てはめるとアグネスさんの意志を無視した演出としてごく一部から色々言われそうな予感もします。

 そして演出が魅力的になったのも、楽曲と歌手の素晴らしさがあってこそ。ラストサビの、迫力と優しさを併せ持ったロングトーンは本当に美しくて圧巻でした。

ちなみに

 同じ年の紅白では、チェリッシュが「てんとう虫のサンバ」を歌っています。当時のウエディングソングの定番は「世界は二人のために」ですが、その図式は少しずつ変わっていきます。

 近年の紅白でもっともウエディングを意識した演出を挙げるとすれば、第66回(2015年)のでしょうか。メドレーで歌った「愛を叫べ」はゼクシィのCMソングで、教会を模したバック映像がとても印象的でした。もしくは翌年の西野カナ「Dear Bride」でも良さそうです。そういえばぺこ&りゅうちぇるが、この年大晦日に結婚発表して紅白にもゲスト出演していました。で、その年最大の名場面がガッキーの目の前で歌った源さんの「恋」…。当然ながら、結婚発表当日に紅白出演したカップルはその1組だけなので、そういう意味でも第67回NHK紅白歌合戦は大変縁起の良い回だったと言えそうです(?)

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました