第71回(2020年)NHK紅白歌合戦~その5~

紅10(全体21):NiziU(初出場)

・2020年結成、デビュー
・15~19歳・9人組
・楽曲:「Make you happy」(2020/6/30 配信)
  詞:J.Y.Park “The Asiansoul” / Yuka Matsumoto
  曲:J.Y.Park “The Asiansoul” / Lee Hae Sol
・歌唱中テロップ:今年大ブレイク!”縄跳びダンス”

・演奏時間:3分0秒

 後半戦開始、司会者の3人は髪の色やネクタイなども含めて黒一色で統一されています。紅組司会がここまで黒を基調にビシッと決めたことはほとんどなかったかと思いますが、そんな二階堂さんの曲紹介からスタート。ただよく見ると、二階堂さんの靴の色は赤です。

 演奏が始まって舞台上は8人、一瞬ハラっとさせましたが、原因は体調不良ではなくマイクトラブル。マユカがオープニングに間に合わないハプニング、ただ歌い出しを担当するリマを映している間にうまく合流させていました。ちなみにラッパー・Zeebraの娘はリマのことを指しています。

 K-POP、と言ってもメンバーはほとんどが日本育ちですが、国民的ヒットにまで成長する曲はいつしか振付にも名称が加わります(最初からかもしれないですが)。この「Make you happy」は縄跳びダンス。特徴的なかわいい振付です。ただカッコ良いを主軸と考えるとするならば、その振付以上に後半のラップパートにグッとくる部分が大きかったです。更に言うと、BTSなど特に現在目覚ましく活躍しているK-POPを目標として考える場合、そのカッコ良い要素は作品を経るごとに割合を増していくのではないかな、と思いました。

 2020年に世間を席巻した「Make you happy」は”プレ”デビュー曲。あれだけのプロモーション攻勢が仕掛けられたことを考えると、彼女達への期待は業界内でも半端ないわけです。おそらく2021年、末恐ろしいほどの活躍を見せるのではないでしょうか。そんな予感を早くも感じさせる、堂々のステージングでした。

 

(ウラトーク)
 渡辺直美がホールから復帰、そして黒柳徹子がこの席に加わります。徹子さんはドキュメンタリーを見てNiziUを研究、「心に響かない!」と厳しく言われる様子を見て相当な感銘を受けたと話しています。個人的には87歳にして好奇心旺盛に学ぶ姿勢を忘れることのない徹子さんに感銘を受けましたが…。山里さんではないですが、本当にそのうち徹子の部屋に呼びそうな雰囲気はありました。

 徹子さんはラップのことを早口言葉と称してます。縄跳びダンスについては「ふふふ…」と笑いながらいかにも出来ますと言うような素振りを見せています。

 

(解説)
・2019年から開催されたNizi Projectオーディションで26人選抜、翌年1月からHuluで合宿トレーニングがドキュメンタリーとして放送されました。東京や韓国での厳しいトレーニング後に最終メンバー9人が決定、彼女たちがNiziUとして2020年12月にシングル「Step and a Step」でデビューという形になります。Huluだけでなく、朝の『スッキリ』でも特集企画としてたびたび放送、この段階でお茶の間の知名度が大きく広がります。

・「Make you happy」はプレデビュー曲という扱いで、この年6月30日に配信開始・YouTubeでもMV公開されました。MVは公開から半年経った時点で再生回数1億を突破、正式デビューを前に大ヒットした形ですが、何をもってデビューというべきかという点では解釈が分かれる部分にもなっています。

・10月にミイヒが体調不良のため活動休止になりましたが、12月25日に活動復帰、紅白では無事9人でのステージになりました。

・オーディションからデビューするグループは近年増えていて、『PRODUCE 101 JAPAN』のJO1とINI、『THE FIRST』のBE:FIRSTなどがいます。『PRODUCE 101』は元々韓国の番組で、同番組からデビューしたIZ*ONEはAKB48のメンバーが複数オーディションに参加したことも話題になりました。

白10(全体22):瑛人(初出場)

・2019年デビュー
・1997年6月3日生 神奈川県横浜市出身
・楽曲:「香水」(2019/4/21 配信)
  詞・曲:8s Gt. 小野寺淳之介
・歌唱前テロップ:今年大ブレイク!新世代アーティスト
・歌唱中テロップ:今年大ブレイク!新世代アーティスト
・演奏時間:2分28秒

 NiziUのステージに大盛り上がり、大泉さんが紅組に偏っている内村さんにクレームを入れますが「あんたもこうやって踊ってたじゃない」と一瞬で返されます。そんな司会者の後ろを横切る形で瑛人さん登場。「楽しみと感謝でいっぱいです」歌前に話します。

 大泉さんの話によると、彼の母親にもお会いして大変ノリが良いのですが、ものすごく福山雅治のファン。そんなお母さんのために、裏に本人がいるのに福山さんのモノマネをさせられます。オチの見えない内容に「もういいんじゃないですか!私今結構なケガしました!」。大泉さんらしさを内村さんが見事に引き出しています。

 ステージは小野寺さんのギター演奏のみで大変シンプル。各歌番組で衣装が大きく変わっている印象ですが、紅白は黒フチ丸フレームのメガネとカジュアルなコートが良いアクセントになっています。過去の事例を考えるといかにも一発屋っぽいブレイクにも思えましたが、テレビ出演後個性的なキャラクターは周知されて、新しいアルバム収録曲も動画再生数は決して少なくありません。彼だけではありませんが、出来れば今回初出場の方々は引き続きヒットして、有観客の紅白のステージにも立って欲しいとあらためて願うところであります。

 

(ウラトーク)
 徹子さんは大概のテレビ番組をチェックしているので、勿論瑛人さんについてもご存知だそう。歌詞が良いことをおっしゃってました。ステージが始まり、山里さんは「良かったチョコプラじゃない」と安心。以降は歌詞を見てそれぞれ適当に反応するという流れ。徹子さんは、「ここが好き」と話すサビのハミングを披露。サビだけでなくラストサビ前のCメロも同様で、やはりしっかり聴き込んでいるようです。後半のウラトークはほぼ徹子さんのハミングメインで、瑛人さんの歌声が聴こえなくなってしまいました。

 

(解説)
・近年多くなったTikTokからのヒットですが、これが一番最初に話題になったのは「香水」だったように思います。楽曲は2019年4月に配信で発表、ブレイクに至るまでTikTok以外のタイアップや番組披露などは一切ありませんでした。

・作詞作曲の8sは本人のペンネーム、ギターを弾く小野寺淳之介は瑛人さんの友人で音楽学校の同級生らしいです。彼もシンガーソングライター、というより彼が瑛人さんにギターを教えたというエピソードがあるようです。

・ファッションブランドの”ドルチェ&ガッバーナ”が広告にならないかということで議論もありましたが、紅白以前に『シブヤノオト』でそのまま歌われて無事解決となりました。古くは第29回(1978年)の「プレイバックPart 2」で”真っ赤なポルシェ”がそのまま歌われた例、第24回(1973年)で”クレパス”の歌詞をきっかけにかぐや姫が出場を辞退した例があります。

・年明け元旦にアルバム『すっからかん』を発表、映画『トムとジェリー』日本語吹替版主題歌の「ピース オブ ケイク」リリースもありましたが、やはり「香水」のヒットが鮮烈過ぎたせいか2021年はほとんど話題にならず、紅白も結局連続出場はなりませんでした。

紅11(全体23):Perfume(13年連続13回目)

・1999年結成、2002年デビュー 第59回(2008年)初出場
・31~32歳・3人組 広島県出身
・タイトル:「Perfume Medley 2020」
 楽曲1:「Dream Fighter」(2008/11/19 シングル)
 楽曲2:「Baby cruising Love」(2008/1/16 シングル)
 楽曲3:「Time Warp」(2020/9/16 シングル)
  詞・曲:中田ヤスタカ 振付:MIKIKO
・歌唱前テロップ:中田ヤスタカが手がけた20周年SPメドレー
・歌唱中テロップ:結成20周年!紅白だけのSPメドレー

・演奏時間:3分21秒

 後半の若手2組ステージ終了後北島三郎のコメント。時代の変化とともに、今の人たちの美しさ・リズム感の良さ・歌の上手さ・長い歌詞を間違わずに歌えることに、ビックリしつつも最高というコメントを出していました。

 Perfumeのステージは101スタジオ、中継で歌前トークあり。結成20周年を内村さんに祝ってもらい、これから始まるステージの内容をあ~ちゃんが話します。カメラが引く直前に思わず笑ってしまう所が可愛いです。大泉さんの20年前は『水曜どうでしょう』で騙され続けていた頃、放っておくと何時間でも喋りそうな雰囲気なので、内村さんがかなり強い調子でトークを止めます。そして2人のやり取りを制するように二階堂さんが曲紹介。方程式が上手いこと完成しています。

 紅白歌合戦に初出場した2008年に歌ったのは前年リリースの「ポリリズム」。というわけで2008年発表の楽曲は歌っていません。「Dream Fighter」は2008年11月発売、”最高を求めて”で始まる歌詞は大変前向きな内容の名曲で、今でもライブのセットリストに入る機会の多い楽曲です。更に「Baby cruising Love」は同年1月リリースで「ポリリズム」の次のシングルです。

 バックで登場するアナログテレビに映し出されるのは、2000年代の彼女たちが発表した楽曲のMV。アナログ放送が停波したのは2011年、まだこの当時は4:3画角のテレビも家庭で十分残っていて、MVも4:3で撮影されていた作品がいくつもありました。この年発表したアルバム『GAME』は第1回CDショップ大賞の準大賞。私自身にとっても2008年のPerfumeは非常に特別な存在です。

 過去12回出場した紅白歌合戦の映像がバックに流れる中で披露されるのは2020年の新曲「Time Warp」。ここ数年、これまでの彼女たちの歴史を振り返る映像をバックに踊るステージも自らのライブで披露していますが、その紅白版に限りなく近いと言って良さそうです。これでNHKホール、横浜アリーナ、東京のビルの上に今回の101スタジオと4ヶ所からの紅白出場を果たしました。この歌唱場所の多さもまた、平成以降に出場した歌手の中で最多記録を樹立したという形になります。

 

(ウラトーク)
 黒柳さんはPerfumeも大好き、登場した瞬間テンションが上がります。好きな曲は今日歌う曲、「Dream Fighter」だということ。画面に合わせて手を動かして踊る徹子さん。それに合わせて2人も踊ります。位置的には徹子さんが左端のあ~ちゃんの模様。「4人目のPerfumeが見つかりましたよ!」

 演出には全員素直に脱帽。徹子さんはやはり、『ザ・ベストテン』をやっていたことで最新音楽へのアンテナはまだまだ張れているようです。新曲の「Time Warp」でも、直美さん曰く割と完璧に踊っている徹子さん。素直に凄いです。

 

(解説)
・2008年のシングルは「Baby cruising Love/マカロニ」「love the world」「Dream Fighter」、アルバムは何と言っても『GAME』。このステージをもって、2006年~2018年までのリリース曲が紅白で最低1曲歌われる形になりました。

・前回の紅白と同様、今回もNHKホールで開催されたことのある『Reframe』公演がモチーフとなったステージになっています。コロナウイルスで公演中止になる直前まで行なわれたドームツアーでも、メジャーデビュー以降の歩みをダンス化したステージが作られています。

・ちなみに『水曜どうでしょう』は1996年~2002年まで北海道ローカルでレギュラー放送されましたが、番販を通して全国区になります。言うまでもなく大泉さんの出世作、というより何かあるたびすぐにネタになる作品で、幾度となく再編集版も作られています。

紅12(全体24):BABYMETAL(初出場)

・2010年結成、2011年デビュー
・21~23歳・2人組 広島県・愛知県出身
・楽曲1:「イジメ、ダメ、ゼッタイ」(2013/1/9 シングル)
  詞:NAKAMETAL / TSUBOMETAL 曲:KxBxMETAL / TSUBOMETAL / TAKEMETAL
・歌唱前テロップ:強いメッセージが込められた代表曲
・歌唱中テロップ:世界も熱狂!メタル・ダンスユニット

・演奏時間:2分38秒

 BABYMETALのVTR映像では「ヘドバンギャー!!」「メギツネ」などのステージが紹介されます。ゲスト審査員の宮崎美子が彼女たちの大ファン、元気をもらえる曲は「META! メタ太郎」とテロップで紹介されます。東京ドームにも足を運びましたと話しますが、それ以上に40年ぶりのビキニ姿の写真が映像で登場したことにビックリしています。大泉さんも思わずそこにツッコミ。

 ステージはスタジオではなくNHKホール。2018年にYUIMETALが抜けたので、代わりに入るアベンジャーズ(ダンサー)は岡崎百々子。メンバーの2人と同様、アミューズの小中学生アイドルグループ・さくら学院出身、『あさイチ』でお馴染みの博多華丸の次女なのだそうです。

 迫力ある歌声を存分に見せつけていました。炎の演出も含めて、ただただカッコ良かったです。もっとも2分半という演奏時間は、やはりもう少し長く見たい!という気分にはなってしまいます。

 

(ウラトーク)
 徹子さんはBABYMETALの人気も知っているようです(詳しくはないみたいですが)。宮崎さんの「なんであんなの出ちゃう…」という呟きは、こちらのマイクにしっかり入りました。「挑戦しようという気持ちにさせてくれたから、あの伝説の写真集が出たということか…」「あの時期唯一、鬼滅を倒したっていう、売上で」

 キレッキレの動きと激しい演奏に、直美さんは鳥肌。合いの手の部分は2人も一緒に。キツネ、キツネ、「キツネもきっと飛べるよ、っていう」「それは生態系メチャクチャでしょ」。素晴らしいステージ、徹子さんも歌詞に感銘を受けたようです。

 

(解説)
BABYMETALは2010年に結成、当初はさくら学院・重音部としての位置づけでした。アミューズ内のユニットであるさくら学院は当時クッキング部・バトン部・新聞部といった部活名のユニットが他にも存在しています。

SU-METALはさくら学院加入前にも小学生ユニット・可憐Girl’sのメンバーだったので、10歳の時から歌手活動をしています。可憐Girl’sは3人組で事務所もアミューズ、当時はPerfumeの妹分とも呼ばれていました。特にSU-METALは広島出身・アクターズスクール広島出身なので余計にその側面が強いです。

・BABYMETALは2011年に命名、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」はこの名義で一番最初にパフォーマンスされた楽曲のようです。メジャーデビューシングルとして発売されたのは2013年1月9日なので、音源化までは意外と間がありました。

・国際的な評価を得るきっかけになったのは2013年のフェス出演で、特にサマソニでは海外のアーティストと一緒に写真を撮るシーンが複数見られました。2014年のアルバム『BABYMETAL』以降は日本以上に海外での活動が積極的に展開されるようになります。

・スクリーモ&ダンサー2人を含めた3人組でしたが、2018年にYUIMETAL卒業後はアベンジャーズと称したサポートを1人呼ぶ体制になりました。紅白では岡崎百々子が担当、それ以外の2人は元モーニング娘。の鞘師里保と元さくら学院の藤平華乃がいます。なお岡崎さんは2023年4月よりMOMOMETALとして正式加入、再び3人体制としての活動に戻っています。

・BABYMETALの大ファンと話す宮崎美子は、2021年カレンダー撮影で40年ぶりの水着を披露したことが大きな話題になりました。その40年前にミノルタのCMでブレイクした宮崎さんですが、現在は女優活動と持ち前の頭脳を活かしたクイズ番組で当時以上の活躍を見せています。

白11(全体25):郷ひろみ(10年連続33回目)

・1972年デビュー 第24回(1973年)初出場
・1955年10月18日生 福岡県出身
・タイトル:「筒美京平 トリビュートメドレー」
 楽曲1:「男の子女の子」(1972/8/1 シングル)…47年ぶり2回目
  詞:岩谷時子 曲:筒美京平
 楽曲2:「よろしく哀愁」(1974/9/21 シングル)…23年ぶり2回目
  詞:安井かずみ 曲:筒美京平
・歌唱前テロップ:筒美京平にささげるヒットメドレー
・歌唱中テロップ:筒美京平にささげるヒットメドレー
・演奏時間:2分31秒

 作曲家・筒美京平を追悼するVTRが流れます。「木綿のハンカチーフ」のBGMに載せられる本人写真を皮切りに、尾崎紀世彦「また逢う日まで」(第22回)、ジュディ・オング「魅せられて」(第30回)、麻丘めぐみ「わたしの彼は左きき」(第24回)、松本伊代「センチメンタル・ジャーニー」(レッツゴーヤング)。シングル総売上枚数は7560万枚・歴代作曲家第1位。追悼ステージを歌う郷さんが、第24回で初出場した映像も流れます。当時はジャニーズ事務所所属、登場時に騎馬を作っているのは先輩のフォーリーブスです。郷さんと筒美さんのツーショット、もう1曲歌う「よろしく哀愁」の映像で締めます。これは昭和の紅白だと未歌唱、当時のルックスも考えるとおそらく1979年出演のビッグショーの映像と思われます(発表された1974年当時のNHK音楽番組の映像は残っていない可能性が高いです)。

 VTR明けのトーク、流れで大泉さんが勝手に「また逢う日まで」のサビを生歌唱。なかなかの歌唱力です。こちらはSTARDUST REVUEとのコラボで2004年に「本日のスープ」をヒットさせた実績があります。

 紅白で歌う郷さんの過去曲はほぼ1980年代以降なので、「男の子女の子」はなんと初出場以来47年ぶり。紅白史上最長ブランク記録になりました。この曲をダンサーも何もないバックで歌うのは完全に今回ならではで、他の年ならば確実に何かしらのダンサーもしくは袖にいる出場歌手の”ゴーゴー!”コールがあったものと思われます(コーラスで付加されてはいましたが)。

 1コーラス歌った所で立ち位置移動、若き日の郷さんと筒美さんの写真をバックに「よろしく哀愁」。よく考えると紅白でここまで誰もいないステージで郷さんが歌うのは、第61回メドレーでバラードの「愛してる」を歌って以来で相当久々。アップテンポの曲調に限定すると、昭和の時代でも実は全く無く今回が完全に初(ダンサー無しで歌手席にいる白組出場歌手がトップバッターで応援、はありましたが)。65歳にして、紅白で郷さんの新しいステージングを見られるとは思いもしませんでした。勿論ダンサーや演出でおおいに盛り上がるステージも良いのですが…。このステージが持つ意味は、筒美さんが亡くなられたという部分以上に、今後の紅白を作る上で相当大きいのではないかと感じてます。

 

(ウラトーク)
 筒美京平追悼VTR、黒柳さんも「また逢う日まで」がお好き。流れる曲が全部知っていることに、進行の2人も驚き。ただ大泉さんが歌うのは2人も画面を通して止めてます。なお直美さんは裏でふざけ過ぎではないかという話を本人に尋ねたところ、「俺は一切ふざけてない」という返答があったようです。自覚症状がまるでありません。

 ゴーゴー!コールはウラトーク席で挙がりました。「よろしく哀愁」は五木さんが今回聴きたい曲だと事前番組で話していました。トークは自然に控えめになり、郷さんの歌声と姿を堪能するウラトーク席でした。

 

(解説)
・筒美京平の紅白歌合戦における業績はこちらの記事に書きました。作曲家として歌われた曲数は歴代2位の記録です。ちなみにレッツゴーヤングの映像で振り返られた「センチメンタル・ジャーニー」を歌う松本伊代は、紅白出場歴がありません。

・現在のようにステージを大きく使うようになった第32回(1981年)以降、郷さんがアップテンポの曲でダンサー無しの演出になったことは一度もありません。トップバッターで歌うことが多かったそれ以前はダンサーがいなくても後ろにある白組歌手席の応援が盛り上がる場面が多く、特に第29回(1978年)までは衣装も派手でした。

・「男の子女の子」も世代を超えて有名な曲ですが、意外と紅白で歌われる機会はありませんでした。「裸のビーナス」「誘われてフラメンコ」「ハリウッド・スキャンダル」など、ヒットしながらも紅白で歌われていない1970年代のヒット曲はまだまだ多いです。複数回歌唱も今のところ「マイ レディー」のみです。逆に「よろしく哀愁」は1970年代最大のヒットということもあって、リアルタイムでの披露がないながらも今回で複数回歌唱の楽曲になっています。

紅13(全体26):JUJU(初出場)

・2004年デビュー
・1976年2月14日生 広島県庄原市出身
・楽曲:「やさしさで溢れるように」(2009/2/11 シングル)
  詞:Shinquo Ogura / Seiji Kameda 曲:Shinquo Ogura
・歌唱前テロップ:深い思いを込めて 紅白初歌唱
・歌唱中テロップ:初紅白 深い思いを込めて

・演奏時間:2分55秒

 デビュー17年目での初紅白、「すごい初心者です」「今「また逢う日まで」を歌われてるのを聴いて、代わって欲しいくらいだな、と」と話すJUJUさんは尋常ではない位に緊張しています。「微力ですけど、皆さんに優しさをちょっとでも届けられたら」というメッセージ、仲の良いゲスト審査員・杉咲花も直々に応援。スタンバイ後も杉咲さんと暫しトーク、JUJUさんの家にお邪魔した時に手打ちのパスタを作ってくれたのだそうです。

 ステージには後ろだけでなく、本来客席のある前側にも棒のセットが作り込まれている形。あれだけ緊張するということは、それだけこの場に賭ける想いがあるということで、今まで何度となくテレビで見たパフォーマンスをはるかに凌駕するような熱唱でした。本当に聴く人の胸を打つ歌声は感動的でしたが、さすがにCメロ~ラストサビのカメラワークは臨場感を出す為とは言えグルグル回しすぎではないでしょうか。好みもあるとは思いますが、個人的には真正面であまり動かないカメラワークで表情をはっきり捉えるショットの方が好きです。

 

(ウラトーク)
 2人とも随分声のトーンを落としています。手打ちのパスタという言葉にかなり引っかかっているようです。一旦徹子さんが抜けて元の席に戻ります。ステージは緊張していても上手い、直美さんでもこの曲の高音が出せないとのこと。先ほどのディズニーメドレーでも、乃木坂46のキーが出せないのでキンプリと同じキーで歌ったそう。360度ずっと回るカメラワークは、山里さんが目を回してしまいました。

 衣装の帽子に注目する2人、頭にはまる部分がないので激しい歌唱に取れないか心配していますが、さすがにこれは伊達さんが「取れるわけねぇだろ」とツッコミを入れました。もっともこれも、あまりの勢いで帽子どころかメガネを飛ばした歌手も過去いるので、あながち的はずれな指摘でもないような気はします。

 

(解説)
杉咲花は当時放送中の連続テレビ小説『おちょやん』のヒロインでした。ただ主題歌「泣き笑いのエピソード」を担当した秦基博はリリースタイミングの悪さもあってヒットせず、残念ながら今回の紅白歌合戦でも不出場という形になっています。CD発売・配信開始ともに翌年1月、とはいえMr.ChildrenDREAMS COME TRUEスピッツのような辞退でないとすれば、朝ドラ主題歌で選出されないケースは非常に珍しいです。

・紅白では初出場となったJUJUですがNHKとの関係は決して悪くなく、ドラマ主題歌を手掛けた時期もあります。2018年からは『世界はほしいモノにあふれてる~旅するバイヤー極上リスト~』の司会も担当していました。

・その番組で一緒にMCを担当していた三浦春馬は、この年7月に亡くなります。2日前に一緒に収録した彼女は、3日後に自身のコンサートで思いの丈を述べています。普段どれだけヒットしていても出場していなかった紅白歌合戦にこの年出場することになった理由は、番組では触れられていませんでしたがこういった背景があるのはおそらく間違いなさそうです。

・「やさしさで溢れるように」は2009年2月に発表、非常に高い配信売上を記録して後世まで伝わる名曲にもなっていますが、CDセールスは週間11位止まりだったので発売当時はあまりヒット曲として取り上げられなかった印象があります(むしろオリコン週間2位のドラマ主題歌「明日がくるなら」がブレイク曲として扱われていました)。この時期ダウンロードも十分浸透していたもののまだまだCD偏重主義という雰囲気は強く、なかなか正当にヒットが取り上げられなかったという側面もあります。なお2016年に発表したFlowerのカバーも大ヒットしました。

・JUJUさんのプライベートは謎に包まれている印象が定着していて、この紅白歌合戦でもそんな雰囲気のトークになっています。個人的に以前足を運んだライブでは、本人曰くごく普通だと話していましたが…。

企画2(全体27):連続テレビ小説「エール」紅白特別企画

 今年上半期に放送された連続テレビ小説『エール』の名場面がVTRで流れます。内村さんと大泉さんがそれぞれ作品の感想を述べた所で、ヒロインの古山音役を演じた二階堂さんがコーナー紹介。

窪田正孝、山崎育三郎、中村 蒼「福島行進曲」

・楽曲1:「福島行進曲」(1931年5月 天野喜久代)
  詞:野村俊夫 曲:古関裕而
・歌唱前テロップ:”朝ドラ”「エール」出演者が登場!福島そして全国へ届けるエール
・歌唱中テロップ:復興への祈りを込めたエール
・演奏時間:1分32秒

 主演・古山裕一役を演じた窪田正孝のハーモニカ演奏で始まります。ギター演奏は村野鉄男役・中村蒼、歌い出しを担当するのは佐藤久志役・山崎育三郎。福島三羽烏の3人が、初めて野村・古山コンビで昭和6年にヒットさせた楽曲を歌います。過去の紅白で歌われた機会は全く無く、紅白初歌唱となります。

 ルーフステージでの歌唱。山崎さんは本職だから当然としても、窪田さんや中村さんもなかなかの歌唱力。昔は俳優でレコードを出していても歌唱力自体はもう少し、という方も多数いましたが、今は歌を出していなくても歌唱力高い人はゴロゴロいるのかもしれません。ルックスや衣装も含めて、バッチリ決まったステージでした。

森山直太朗、堀内敬子「長崎の鐘」

・楽曲2:「長崎の鐘」(1949/7/1 藤山一郎)…41年ぶり5回目
  詞:サトウハチロー 曲:古関裕而
・歌唱中テロップ:復興への祈りを込めたエール
・演奏時間:2分33秒

 紅白歌合戦では記念すべき第1回(1951年1月3日)大トリ、その後第15回白組歌手、第24回特別出演、第30回特別出演メドレーで計4回藤山一郎の歌唱で披露されています。NHKホール落成1年目となった第24回では、古関裕而がパイプオルガンを演奏していました。藤山さんの持ち歌が紅白で歌われるのは、第60回メドレーでNYC boysが「青い山脈」を歌って以来11年ぶり。

 このステージで歌うのは藤堂清晴役・森山直太朗と藤堂昌子役・堀内敬子。メインステージではピアノ演奏のみのシンプルな編曲。直太朗さんは白組歌手で3回も出ているので当然上手いのは織り込み済みですが、堀内さんは元劇団四季としても今まであまり歌声を聴いた機会は個人的にあまりありません。結果、双方ともものすごく上手いです。2番の堀内さんの主旋律と森山さんのハモリは、本当に見事でした。そして間奏で見つめ合って夫婦を演じるシーンも、歌声同様屈指の名場面となりました。

山崎育三郎、窪田正孝、森山直太朗、中村 蒼「栄冠は君に輝く」

・楽曲3:「栄冠は君に輝く」(1949/7/1 伊藤久男)
  詞:加賀大介 曲:古関裕而
・歌唱中テロップ:全国へ届ける感謝のエール
・演奏時間:2分32秒

 主演を務めた窪田さんが視聴者へメッセージを話した後に、山崎育三郎がアカペラで大熱唱。今年は紅白のみならず各年末歌番組でも引っ張りだこでしたが、やはり一番印象に残ったのはこの紅白のステージでした。一言で言うと、度肝を抜かれました。夏の高校野球を見に行った時に何度も甲子園球場で聴いた曲ですが、これだけ感動を憶えたのは間違いなくこのステージが初めてです。

 途中で演奏の音も少しずつ入り、2番からは窪田さん、中村さん、森山さんも加わって4人で大合唱。舞台袖では、二階堂さんも一緒に歌ってます。連続テレビ小説をキッカケとした企画では、間違いなく第64回(2013年)の『あまちゃん』第157回と同じくらいの素晴らしさを憶えた最高の内容でした。と言うより、連続テレビ小説単位で考えても『あまちゃん』以前以後で印象も大きく変わり、紅白で大々的に扱われることも本当に多くなったとあらためて感じます。

 

(ウラトーク)
 VTRが始まると2人も興奮。GReeeeNにも期待が高まります。ここで杉咲花染谷将太がウラトーク席に登場。杉咲さんは先ほどのJUJUが印象的と話しています。染谷さんは「椅子の座り心地がすごい良くて危険ですね」。また大河の撮影中、目の前に瑛人さんが通ったことがあったそうです。

 山里さんはJUJUさんが作るパスタについて杉咲さんに質問。トマトパスタなのだそうです。直太朗さんについては基本ふざけているけど歌は上手い、「ふざけてる時に会うとすごい下に見ちゃうんだよな俺」「ここで見直すの」「俺が今まで会った直太朗さん史上一番直立不動」と話してます。ゲストの2人は喋れる状況ではなくステージを堪能、メインの2人は仕事なので喋っているという状況です。ですので杉咲さんは山里さんに「ちょっと静かにもらって…」と思わず笑いながら一言注意。

 「栄冠は君に輝く」、「”き”と”光”の間こんな間空いてるの初めて聴いた」。山崎さんの歌声には2人して鳥肌、「俺球児だったらヘッドスライディング出来ないね。優雅だもん」。4人の歌唱、感動しながらも「2/4がサスペンダーをしているよ」と仕事はしっかりしていました。

 

(解説)
窪田正孝が演じた役のモデルは作曲家・古関裕而、同様に中村蒼は作詞家・野村俊夫、山崎育三郎は歌手・伊藤久男です。森山直太朗は古関さんが通った小学校の担任教師、堀内敬子は彼の奥様役です。直太朗さんが白組歌手で3度出場している他に、窪田正孝も『花子とアン』コーナーで出演があるので2回目の紅白です。

・「福島行進曲」は1931年発表、歌い手の天野喜久代はドラマだと山田麗が演じています。1945年の東京大空襲で亡くなったと言われていますが、実際の所は分からないそうです。古関・野村両名にとってこの曲はデビュー曲という形になりました。

・森山直太朗は『エール』出演の俳優という形で12年ぶり、思わぬ形での紅白歌合戦復帰となりました。過去の出場歌手が朝ドラ俳優として紅白出演した例は、『澪つくし』の桜田淳子や『あまちゃん』の小池徹平などがあります。

・『エール』は他の朝ドラ出演者と比べても紅白出場経験のある歌手出演が多く、薬師丸ひろ子松井玲奈志村けん野田洋次郎といった面々が揃っています。野田さんは古賀政男をモデルとした役を演じていました。志村さんは山田耕筰がモデルと言われる役、新型コロナウイルスで急逝されたのでこの作品が遺作となっています。

・「栄冠は君に輝く」は夏の甲子園で必ず歌われる作品ですが、紅白での歌唱は初めてです。オリジナル歌手の伊藤久男は生前紅白に11度出演しました。なお山崎さんは翌年の第103回大会でイメージアーティストとして起用、開会式で独唱を披露しています。

特別2(全体28):GReeeeN(初出演)

・2004年結成、2006年デビュー、2007年メジャーデビュー
・年齢非公表・4人組
・タイトル:「星影のエール 紅白SP」
 楽曲1:「星影のエール」(2020/5/11 配信)
 楽曲2:「キセキ」(2008/5/28 シングル)
  詞・曲:GReeeeN
・歌唱前テロップ:「星影のエール」「キセキ」のSPメドレー
・歌唱中テロップ1:”朝ドラ”「エール」主題歌
・歌唱中テロップ2:東北に歌でエールを
・演奏時間:3分25秒

 グリーンボーイズ、ではなく先ほど歌った4人が紹介してVTRが流れます。「星影のエール」「愛唄」「キセキ」の映像を交えたグループ紹介。NHKホールにはGReeeeNのメンバー4人が本当に登場、ただテレビではシルエット姿です。MC席には窪田さんも参加、ドラマで夫婦役の二階堂さんとツーショット。この曲を聴くと音さんが裕一を通して出てくる、と窪田さんのメッセージ。二階堂さんも胸がワクワクする音楽だったので、私も大好きになりましたというメッセージを残します。HIDEさんも生の声でメッセージ、福島出身なので東日本大震災から10年、復興への想いと今回のステージについて話します。

 窪田さんと二階堂さんが一緒に曲紹介。「星影のエール」を歌うバックの映像は『エール』の名場面、今年亡くなった志村けんの出演シーンも映ります。先ほどシルエットで映った4人には、はっきりとした人の姿が浮かび上がります。本当に実在しているかのように歌っていますが、それにしては動きが少し不自然です。じっくりよく見るとAIであることは推測可能ですが、やはりパッと見ると本物ではないかと思ってしまいます。

 「キセキ」のバックは東日本大震災からの復興に向けた応援映像。歌っている姿は結局本人モデルのAIなのか全然違うのか余計に謎が深まるような状況ですが、楽曲と歌声が語りかけるメッセージは間違いなく本物です。その証拠に窪田さんは感動で涙を見せていました。

 ラストのHIDEさんのメッセージ「世界中で、エールが贈り合われたこの年に、この場で歌えたことを、光栄に思っています!皆さま、良いお年を!」窪田さんや二階堂さんもそれぞれステージの感想と、ドラマや紅白への感謝を語りました。

 なお4人の外観のモデルは、2017年に結成されたグリーンボーイズの写真をモチーフにしたもののようです。その造形は本人たちに寄せたものという情報もあります。ですのでこのレビューの冒頭で”グリーンボーイズ、ではなく”と記しましたが、曲フリを担当した本人たち(プラス台本)は本当にそれを多少意識したアクションなのかもしれません。

 

(ウラトーク)
 GReeeeNの4人が登場した瞬間大興奮。「結構背高いんだ」「動いてる姿を初めて見たかもしれない」。HIDEさんの喋りの後いよいよステージ開始。

 姿が見えた瞬間、一同ビックリ。「顔出てません?思った人と違う」「どういうこと?」。とりあえず山里さんはドラマの映像に注目します。審査員席も全員前のめりになって見ているとの報告もありました。

 「異空間じゃないですか?」「何が起きてるの?」「ステージは…おかしいね?言っちゃだめか」「これはキセキってこと?」「凄いけどなんかちょっと…何かを感じるよね」。杉咲さんは「3Dですか?」、言った後ツボにハマってしまいました。

 「AI…っぽいですよ」「顔出ししたってこと?」「人以上の躍動感がある」「全身ゴムのような」「どういう気持ちになるの?」「謎を残して2021!」。素で戸惑う2人ですが、「謎は謎のまま…」「という指示が来ましたね。これ以上踏み込むなと」「確かにずっと、私がさっき、動きがゴムっぽいって言った時に、スタッフさんが睨みつけてました」「人だということに、出来ないのかお前は」「感じ取れよ、と」

 

(解説)
・福島の大学で結成されたGReeeeNは2007年にメジャーデビュー、その年5月の「愛唄」で早々に大ヒットグループになりました。2010年にメンバー全員が歯科医師免許を取得、HIDEは東日本大震災の検視作業に参加しています。したがって東北復興への想いは、他アーティストと比べても非常に強いです。

・2017年に「キセキ」の誕生までの実話をテーマにした映画『キセキ-あの日のソビト-』が公開、菅田将暉などの4人でグリーンボーイズが結成されています。上にも書いた通り、紅白で使われたアバターは彼らの造形になっています。

・「キセキ」は2008年にドラマ『ROOKIES』の主題歌として大ヒット、その後も長く国民的名曲として伝わっています。2015年からは郡山駅の新幹線発車メロディとして採用、それこそ古関裕而と勝るとも劣らない福島県ゆかりの音楽家になっています。彼ら以外にも作曲家の市川昭介や猪俣公章、作詞家の丘灯至夫に歌手では春日八郎などこの地ゆかりの音楽人は非常に多いです。

・歯科医という本業もあるため顔出し出演はNGですが、声の出演はたびたび行なわれています。2021年3月からはNHK-FMで『GReeeeN HIDEのミドリの2重スリット』という番組も放送開始されました。紅白歌合戦のステージが実現したのは、間違いなく無観客開催だったことが一番の理由だと思われます。

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