第72回(2021年)NHK紅白歌合戦~まとめ~

 今回の紅白歌合戦は大変素晴らしい内容でした。そういう回は大体の場合翌年の出来は良くありません、と前回の総括記事で書きましたが、今回はその不安を覆す上々の内容だったと思います。ただ前回と一番違うのは、視聴率が大きく下がっていることです。今回は前回記事のフォーマットに加えて、視聴率についても語ることにします。

今回の紅白で良かったこと

積極的な姿勢

 『カラフル』というテーマを決めた瞬間から、今回の紅白歌合戦はこの姿勢で一貫していました。紅組白組総合の区分けを撤廃した司会者選出、想像もしなかった出場歌手の選出、花を大胆に使ったセットに会場の良さを活かした舞台づくり、ラストは優勝旗授与のシーンまで大胆にカットしていました。当然ネットを含む反対意見も多かったのではないかと想像しますが、この「思い切りの良さ」が少なくともSNSを見る限り、評判の良かった理由になったことは間違いありません。今回新しく試みたことを継続すべきかどうかはまた別の話になりますが、この挑戦的な姿勢は次回以降も、それこそ紅白歌合戦が続く限り継続して欲しいと願います。

スムーズな司会者の進行

 司会の担当を一括にしたことで、今回は非常にスムーズな進行だったという印象が残りました。キャラクターも分かりやすく、大泉洋がどんどん喋って川口春奈が繋ぎと止め役に徹して和久田麻由子アナが裏回し、非常に見ていて分かりやすかったです。

 大泉さんは今回前回以上にうるさいという声が目立ちましたが、ある意味うるさくなければ大泉さんではないので私はこれでいいと思います。次回の継続は、今回の評判と本人の意向次第ではないでしょうか。川口さんはほとんどミス無く確実に、今回の台本を演じていたという印象でした。やや司会者として目立っていなかったのが本人にとって損な感じもありますが、司会者が出場歌手より目立つのも本来は違うので、その点では良い意味で司会の仕事を全うしたという形だと思います。和久田アナはあれだけゴタゴタしていた前々回でノーミスだったので絶対大丈夫だと信じていましたが、今回もまさにその通りの結果でした。過去に同じくらいのキャリアで先輩の有働由美子小野文惠が紅組司会を担当していましたが、間違いなく当時の2人より今の和久田アナの方がアナウンス能力も番組進行能力も高いと思います。現在のNHKで、一番外してはいけない存在だとあらためて感じました。基本的には報道メインなので何とも言えない面もありますが、出来れば和久田アナは当分の間紅白司会は続投して欲しいです。

 そもそも第58回以降司会者はトリ近辺以外紅も白も関係なく一緒に曲紹介することが多く、第67回では武田アナも含めほとんどが3人一緒という状況でした。今回実質的に初めて紅組白組総合の枠を取っ払う形になりましたが、次回もこれで別に問題ないように思います。ただこれは将来的に女性・男性・アナウンサーという図式を崩して男性のみ3人、あるいは女性のみ3人の人選にする可能性も今後出てくるので、それが今の視聴者に受け入れられるのかという問題はあります。やるとしたら男性3人よりは女性3人の方がいいですが、それはそれで男女平等の理念から外れる結果になるので、難しいところです。今の段階では男性タレント(俳優)・女性タレント(俳優)・アナウンサーという組み合わせが一番バランス良いように思うので、無理に変える必要はないだろうというのが個人的な意見です。

曲間のすっきりとした雰囲気

 曲間については前回の良さを受け継いでいた印象で、特に前半VTR使用を少なくしたのが印象的でした。またゲスト出演も最小限に抑えられていて、賑やかさが足りないという意見もありそうですが、全体的に前回ほどではないとしても落ち着いた雰囲気でした。あとは前半中心に2曲続けてという場面が目立ちましたが、これ自体は良かったと思います。そうならざるを得ない状況は正直申し上げると、また別の問題です。

メドレーの少なさ

 結果的には本番で1曲追加というステージも多かったですが、今回は第70回であったような無意味なメドレーが全くありませんでした。2年前のメドレーがダメだった理由は当時の総括記事に「選曲センス」と題して大批判を展開しましたが、もしそれが活かされているとしたらこれほど嬉しいことはありません。次回もこの選曲は是非、是非継続して欲しいです。

カメラワーク・音響

 今回は例年に比べるとカメラワークの上手さが非常に印象に残りました。乃木坂46氷川きよしなどはその最たるものです。また前回一部で不備が目立った音響も今回はかなり改善されていて、ガラス棟やスタジオなどメインホール以外からの中継が多かったにも関わらずそこで不満を憶えた部分は非常に少なかったです。何より審査員ルーム撤廃というのが一番大きかったように思いました。

ゲスト審査員席

 ゲスト審査員は久々に客席配置になりました。前方だと客席内のステージが見えにくく、ステージ舞台袖だと画面が賑やか過ぎると考えた結果、1階席中段に置いたのはベストな位置だと思います。ただこれは客席エリアが広い東京国際フォーラムだからこそ可能なことで、NHKホール内だとやや難しいかもしれません。

 今回ゲスト審査員を6人に減らましたが、その理由は本番を見る限り1人1人の紹介が出来ることではなかったかと思いました。近年ゲスト審査員はいっぺんに紹介されることが増えましたが、これは1人ずつの紹介が時間的な負担になっていたと考えられます。人数的には少し寂しい気もしましたが、1人1人の紹介は個人的にあった方が良いと思うので、次回以降もこの流れでいいのではないかと思います。今回ウラトークが無くなりましたが、次回も復活しないのならばウラトーク席があった所をゲスト審査員席にするのも一つの方法ではないでしょうか。

粋な演出

 今回石川さゆりがコラボ曲として披露した曲は「火事と喧嘩は江戸の華」ですが、これはアルバム『粋~Iki~』からの選曲です。思えば今回ほど「粋」を感じた演出が多い紅白も珍しく、東京五輪開会式をイメージしたマツケンサンバ・ドラクエ・エヴァンゲリオン・おかえりモネ・生田絵梨花卒業に藤井風サプライズなど挙げればどんどん出てきます。これだけ毎年揃えるのも非常に難しいとは思いますが、次回以降もこういった場面が一つでも多く出てこれば、視聴者的にはとても嬉しいです。

次回以降改善して欲しいこと

前半のパフォーマンス時間の短さ

 前半でも20時台の途中以降、および後半は以前と比べて相当改善されていて、曲間の無駄なコーナーや企画も確実に少なくなっていますが、それでも前半はDISH//NiziUといった大ヒットでも歌割りがカットされている場面が目立ちました。演歌勢も前半は水森かおりを除くと、演奏時間はかなり短かったです。今回は曲間で出来る限り時間を節約するように演出されていたので、原因は非常にはっきりしています。それが難しいとしたら、放送時間を再び10分伸ばすか出場歌手数を2組減らすかどちらかになります。

ドキュメンタリーVTRの扱い

 今回は前半のSDGs、後半の気仙沼と五輪関連で合計3回、3分近いドキュメンタリー映像が挿入されました。いずれも直後のステージに関連する内容ですが、特に前半のSDGs関連のVTRは長いという声が非常に多かったです。これは私も全くの同感でした。後半はピークのステージが続いたので、ある意味休息のためにこういったVTRを作るのも無意味ではないと言えますが、SDGsの映像はカットが多いステージが連発した後だったので余計にタイミングが悪かったです。

 SDGsの取り組みを伝えたいという意図は理解できます。そもそも「ツバメ」がそういう歌なので、ある程度やることは必要でしょう。ただこれは紅白ではなくNHKの取り組みに関わることでもありますが…、単純にあまりマジメに小難しいことは紅白歌合戦でやらない方がいいです。紅白歌合戦を見る人が求めているのは基本的に出場歌手のステージ、仮にそうでないとしても企画コーナーや司会者のやり取りといった“見ていて楽しい”、ある意味では非現実的な部分だと思います。したがって、極めて現実的な社会問題を考えさせるSDGsは番組との相性が悪いような気がします。もちろんある程度こういった要素を取り入れるのに反対はしませんが、結果的に言うと前半のVTRは”ある程度”で済まなかった、というのが実情だと思います。

要検討

後日非常に細かく発表された出場歌手

 12月23日にアニメ企画で高橋洋子の出演発表、同日に細川たかしミドリーズ、24日に藤井風、25日にさだまさし、26日にKREVAMIYAVI、27日0時にケツメイシ…といった具合で今回は特に直前の歌手発表が相次ぎました。前回までは早い段階で特別出演発表となった歌手もいたので、余計に今回は後からどんどん増える…という印象が強かった人も多かったのではないかと思われます。

 正直申し上げると本番を迎えれば発表のタイミングはどうでも良くなるのですが、本番前はこれに関する批判が一部メディアで見られました。確かに私も記事整理する上で面倒だと感じた面もありますが、これ自体は決して悪いことではないと思っています。むしろそれがより楽しみな面を増幅させる部分も大きいです。賛否はあって然るべきだと思いますが、出演者をより豪華にするという意味ではスケジュール調整などを考えても仕方のないことで、少なくともこの方法を撤廃するという選択肢は現状有り得ないと考えています。

 全体の出場歌手発表を遅らせたり、あるいは2回に分けて発表するのも一つの方法だと以前から総括記事でも書いてはいます。ただロックフェスの発表とは違ってマスコミ取材の記者会見などもあるので、実際にはおそらくそうもいかないと思います。そもそも特別枠自体が紅白らしくない…という意見もありますが、今はこれで余計に自由度が上がってうまくハマってる印象もあるので、難しいところです。

スタジオの中継・事前録画をどれくらい残す?

 前回は企画も入れた全47組中101スタジオは10組(うち後半7組)、オケスタジオは4組(同後半2組)、中継は3組(同後半2組)でした。今回は同じく全49組中ガラス棟5組(うち後半3組)、スタジオ10組(同後半5組)、中継4組(同後半3組)で前回とほぼ同数がメイン会場以外の使用でした。

 次回はNHKホールに戻るはずなので、まずガラス棟のような場所は使えません。前回が無観客・次回観客をフルに入れることを考えると、スタジオを含めた中継は減らすと考えるのが自然だと思います。ただここ2回で、中継を巧みに駆使することでセット転換に余裕が出来て、演出に幅が生まれたことも間違いない事実です。昔からの紅白視聴者的には、せめて半分くらいに中継を減らして欲しいとも思っていますが、そうなると放送時間を少し伸ばすか出場歌手の数を減らすかしないと厳しいような気がします。

 あとは事前録画の問題もあって、特に星野源はここ3回連続しているとともに、民放で生放送される歌番組でも同じ状況でした。事前収録の方が演奏しやすく音も確実なのでメリットは大きいのですが、次回の紅白出場のためどう判断するのかは気になります。テレビで滅多にパフォーマンスしないアーティストなら、それでも良いのですが…。

紅組白組の分け方

 この項目、最初の2段落は前回のまとめで書いたことを再掲します。

 男女別が一番分かりやすいというのは以前から書いていますが、そうは言っても曖昧な事例は既に出てきているわけです。第56回の和田アキ子ゴリエ、第58回の中村中、「恋音と雨空」を歌った時のAAAなどなど。男性が紅組司会をしている例も、第58回の中居正広がそうですが、1950年代の時点で宮田輝アナウンサーがやっています(もっとも当時は客席から直でヤジが挙がりましたが)。ここまでジェンダーの議論が進み、出演者側もパフォーマンスで表現していて、どちらにも属さない特別枠が続出している現状を考えると、確かに必ずしも絶対に男女別にする必要性は微塵もありません。ただそれまで回を重ねた第72回までの総合成績に照らし合わせた上で考える必要があるかな、という程度です。

 さてもし男女別にしない場合、どう分けるのが理想でしょうか。地域別・事務所対抗など色々考えられますが、個人的には出場歌手を一括で発表して、曲順発表時点でくじ引きみたいなので決めても良いのではないかと思ってます。組で分けることにそもそも意味を感じないとすれば、毎年変わっても、なんなら色を変えちゃっても良いのではないかとも思います。ただこういう選び方が続くとあまりにも男性もしくは女性に出場者が偏る年も絶対に発生するので、そこがやや難しい所です。また部屋数も限られている楽屋のことを考えると、さすがに大部屋を男性女性混合にするのはあり得ないはずなので、そうなると何度議論を重ねても、結局男女別が一番やりやすいのかもしれないとも感じてるところではあります。

 あとは大まかに男性・女性の組に分けることで男女比を合わせるというのも結果的にジェンダー平等に繋がるということも記しておきます。現在は男性アーティストの方がヒットしている数が多く、特に今回は特別枠を追加した結果男性アーティストの出演が女性よりかなり多くなるという結果になりました。男女対抗の無意味さ、あるいは男性と女性で対抗すること自体がおかしい、極端な意見だと女性が負けたらそれが差別になるという声もありますが、男性と女性は仕事選択や権利などで平等を目指すべきとしても、お互いの特徴まで一緒くたに考えることが必ずしも正しいとは思えないです(とは言えトランスジェンダーの問題も無視はできません)。一番大事なことは、お互いがお互いを配慮する関係なのだと考えます。

最終審査の有無

 これもまずは前回のまとめで書いたことを、一段落分そのまま再掲します。

 確かに大晦日紅組白組に分かれてわざわざ大きい番組でチーム対抗戦する意味はありません。どちらが勝とうと世の中の大勢に影響はない、と大昔から番組内でも多々言われています。しかしこれも以前から書いていますが、最終審査が無くなれば”合戦”でなくなる以上、「紅白歌の祭典」辺りに番組名を変えて回数もリセットする必要があります。大晦日にこういった音楽番組が無くなる可能性はゼロだと思いますが(今もし無くなると音楽業界どころか経済的に負の影響が半端なく出ます)、対抗戦をどうしても無くして欲しいという人が余程圧倒的に増えない限りは、そのまま継続で良いのではないでしょうか。

 ただ今回は長年恒例だった優勝旗授与が撤廃されました。実際の優勝旗に紅組優勝のリボンがつくかは不明で、また単純に72という回数を重ねてリボンを増やした結果重くなり過ぎたので…という可能性も考えられます。ただいずれにしても、紅組白組の勝敗を決める意味は年々薄くなっているようには思います。もっとも本当に最終投票が無くなれば最初は「寂しい…」と感じる視聴者が続出するのは確実で、そこをどう捉えるかが今後のポイントではないかと思われます。

視聴率

 最後に視聴率について話します。今回は関東地区を筆頭に、ほとんどの地域で世帯視聴率・個人視聴率ともにダウンしました(ビデオリサーチより)。前回は在宅率が非常に高くならざるを得なかったので視聴率も自然に上がるという形でしたが、内容が決して良くない第70回より下という現実は受け止めた方がいいのかもしれません。

 とは言え7割くらいは「仕方がない」と割り切れる事象でもあります。今回年末の歌番組は紅白に限らず全て歴代の最低視聴率更新という結果でした。また2年前と比べると、個人で動画・音声配信する人も確実に増加しています。BSやCSだけでなくネットTVも充実してきて、昨年からはNHKプラスで見逃し配信も開始されました(しかも番組内の宣伝も多数)。さらにBS4K8K放送が視聴率に含まれないとなると、この数字は実感より低いと考えることも可能です。アナログBS時代ならいざ知らず、より画質の良い4K8K放送を見ることが出来るならばおそらく大半はそちらで紅白を見るのではないかと思います(もっとも地上波総合とアングルが変わるので、全員がそうとは言えないですが)。

 紅白は生で見た方が確実に面白いとは思いますが、歌番組ではあるのでスポーツ中継と比べると即時性は低いコンテンツです。そう考えると、30%以上も取れることがまず異常と捉えることも十分可能です。30%を切るとさすがに寂しいという印象にはなりそうですが、70%台が当たり前だった1980年代後半に目に見えて毎年下がり続ける状況でなければ大丈夫だと思います。たださすがに20%を切ると通常番組よりちょっと高い程度でしかなくなるので、本当に打ち切りを考えた方がいい段階に入るかもしれません。

 紅白歌合戦は年齢が高くなるほど視聴率も高くなるコンテンツですが、特に今回はある年齢以上だとついていけないコーナーも目立ちました。少なくとも70代以上はエヴァンゲリオンが分からない人も相当多いのではないかと思います。まだ細かい分析記事がないので断言は出来ないですが、「何があっても紅白を見る」という層が結構な減り方をしている可能性もあります。さらに言うと、昔の高齢者は1家族にテレビ1台という関係上比較的若い世代にも寛容でしたが、今の60~70代は昔と比べて「若い世代についていけない」「中高年に配慮しろ」という人が多いようにも見えます。単純にSNSで可視化されてるだけかも分からないですが、例えばカラオケランキングでは10代~50代が大きく変わらないのに対して、60代で一気に上位の内容が変わるという現象が起きているようです。

 したがって10代~30代の視聴者を伸ばそうとした反面、50代~70代くらいの視聴者が一定数離れたのではないかという印象はあります。とは言え主なターゲットの年齢層を上げる必要はないと思います。ヒットチャートの上位は、今に限らず昭和の時代でも基本的には若い人が中心です。「最近の音楽についていけない」と言っている人は、自分たちが若い時にヒットしていた音楽が当時50代くらいのベテランばかりだと思っているのでしょうか。そんなことは決してないはずです。そういったミュージシャンも現在年齢が増し、人によっては引退してる人も多く、「最近の音楽が分からない」という意見について理解はしますが、だからと言って「今の音楽は昔と比べてイマイチ」というのはあまりに主観が過ぎるという印象です。世代論で一般化するのは些か乱暴ではありますが、少なくともそういう人を相手にする必要は全くもってないと思います。

 あとは時々演歌の削減が視聴率低下に繋がったという意見も見られますが、そう思う人は2010年代の歌手別視聴率を確認してください。紅白歌合戦完全マニュアルで過去の分は載ってます。全くもって的外れな考えであることが、理解できるはずです。

 個人で視聴率を爆上げさせる歌手が少ないのも一因として挙げられます。前回までは、それより前はSMAPがいました。今はこういった存在を呼べるかどうかも大きな要素になりますが、今回はそれにあたるアーティストがあまりいなかったのも事実です。同時に、年々そういったアーティストが少なくなっている現実もあります。国民的スターが生まれにくい時代であることは疑いようがなく、その点では簡単に視聴率を稼ぐことが今後どんどん難しくなることは間違いありません。

 とは言え正直見る方にとっては視聴率は全く関係なく、「質の良い番組」が見られるかどうかの方が圧倒的に重要です。もし上げるとしたら多少年齢層を上げてベテラン歌手を増やす・懐メロの選曲を多くするなどの方法が考えられますが、個人的には数%の視聴率を上げることがそこまで重要なこととも思えません。それより何よりも、「見る人の満足度を上げる」ことの方が圧倒的に大事なような気がします。

 番組の評判はいまやすぐに可視化される時代、今回はアーティスト単位でのステージは前半の一部を除くと非常に良く出来ていて、その間を繋ぐ番組でいう幹の部分もうまく考えられていました。視聴率は低くとも、決定的な悪評は番組中のSNSを見る限り多くはなかったと思います。良いも悪いも相手にすべきは、全世帯で測っているわけではない視聴率よりも番組を見ている視聴者の感想だと思います。建設的な提言はともかく、最初から批判することだけを目的とする一部マスコミの記事は、本当にほっといても良いのではないでしょうか。

 以上です。今回は東京国際フォーラムでの開催という非常にイレギュラーな回でしたが、まさにそれを活かした内容に仕上げた良質な紅白でした。スタッフや関係者、出場歌手の皆さんも今回の紅白を作り上げるにあたって、間違いなく例年以上に苦労したと思います。本当に心からお疲れ様でした、ありがとうございましたというのが正直な気持ちです。

 NHKホールは来年7月に供用再開予定、次回はほぼ間違いなくリニューアルした元の会場からの紅白となります。ただ無観客の前回・別会場の今回という具合で実質的に有観客紅白となると3年ぶり、その間にステージ進行はかなり変わりました。またさらにリニューアルするか、あえて以前の雰囲気に戻すかは第73回の制作陣の判断になると思います。昔みたいに賑やかな紅白も好きですが、そこは時代との呼吸が必要になります。どちらがいいのかは、正直本番を見るまで判断は出来ません。

 平成初期には紅白歌合戦存続論も取り沙汰されましたが、令和初期にも全く別の意味で存続論が湧き上がっています。歴史は繰り返すとも言われますが、不思議なものです。私自身は第100回まで紅白歌合戦を見たいと思っていますが、それが現実的に難しいのなら折り合いをつけるのも一つの方法です。ただ紅白歌合戦が日本を代表する番組の一つであるという認識は、仮に番組が終了してもずっと変わらないような気がしています。放送前も放送後も、これだけずっと話題になってマスコミのネタになるような番組ははっきり申し上げますと、他にありません。私もこの番組に魅力を感じたからこそ、10年以上こうやって個人で記事を書いているわけです。

 というわけで第72回NHK紅白歌合戦の記事は、これが総括となります。あとはビルボードチャートの記事で紅白効果、さらに前年同様ティーザー再生数からの分析記事も作る予定です。第73回の紅白については、おそらく7月か8月の出場歌手予想が最初になるでしょうか。とりあえずは今年もよろしくお願いします。それと同時に、明日以降ビルボードチャート他の記事もどんどん更新するので、そちらも是非見てください。

コメント

  1. 今回は中々良かったとは思います。ただ、ウラトークがないのが残念でした。あれがあってこその紅白だと思ったんですがね・・・。
    藤井風とYOASOBIは本当に素晴らしかったです。
    ただ、DISH//が前半で2分ぐらいで終わってしまったのが残念。今回の前半はあっさり終わった歌手が多かったと思います。
    あと、SDGsは正直長々やりすぎかなぁ。もっと短く説明することもできたと思います。

    正直今回視聴率は下がるだろうとは思っていました・・・。
    でもたとえ今回のメンバーにBTSやヒゲダンやAdoが加わったとしても視聴率が上がっていたという保証はないと思っています。
    今や「家族全員で紅白を見る」という選択肢しかない時代ではもうありません。
    民放裏番組の充実、パソコンやスマホの定着、Tverやアマプラなどのサブスク・動画配信・ネット中継の充実。
    選択肢が多岐にわたるようになり、若者は態々TVを見なくても構わないという考えの人が多いのかもしれません。
    そうなってしまえばたとえ若者からの支持の高いアーティストを出したとしても何も変わらないでしょう。
    次回、NHKホールへと戻る紅白、対戦形式だけでなくそれ以外も見直さなければならないのかもしれません。

  2. 更新ありがとうございます。
    私も今回の内容自体は良かったですが、視聴率は落ちると思っていました。
    まず前回出場していた嵐・ユーミン・YOSHIKI・ミスチル・玉置浩二などと比べると明らかに目玉不足感は否めませんでした。
    特に優里・Ado・Official髭男dismの不出場は大きな痛手です。
    ただ、誰もが知るアーティストが今はいないので、今後視聴率を40%以上取るのは極めて難しいと思われます。

    紅白の分け方についてですが、最初に出場歌手を発表してから分ける、という意見には賛成です。
    ただ単純にくじ引きにしてしまうと演歌歌手やアイドルだけで固まってしまう可能性もあるので、人為的に分けて良いと思います。
    また、男女で分けることが無くなったとしても、今までと変わらず男女同数で選出して欲しいです。

    ところで優勝旗は今回で廃止されたのでしょうか。多くの人が勝敗を気にしていないとはいえ、無ければ無いで物足りない気はします。

  3. まずは予想から全体纏めまでの長期間の記事執筆本当にお疲れさまでした。
    今年は例年以上に一つ一つのステージレビューが丁寧で力が入っていたように感じ、見ているこちらも非常に楽しませていただきました。

    番組内容に関しても本当に素晴らしかったと思います。70回のように音楽という主軸から外れることなく、「カラフル」というテーマを表現するという意図のはっきりした選曲や演出を貫いていました。
    テーマを基に作り上げる「作品」としての完成度は、豪華メンバーを集めた神回と名高い69回をも上回るのではないかと思います。

    それだけに視聴率の伸びが悪かったのは残念ですが、カーシーさんも仰っていた通り見逃し配信や4K8K等多様な視聴形態が提供されており、若い世代にシフトしたことは地上波視聴率の優先度を下げることとほぼ同義語でしょう。
    数字を取れる目玉がいないのは紅白というより昨年の音楽界の問題ですし、今回については「ベストは尽くした、戦略の結果なので視聴率は仕方ない」という結論になるでしょう。

    低視聴率を受けて紅白の在り方についても色々と議論がなされています(批判ありきの無内容な記事が多いですが)。
    私自身も巷で言われる通り男女対抗である必要は全くないと思います。
    「歌合戦」という名前は残しつつ勝敗は決めない形でもいいでしょう。
    個人的な思いとしては「紅白歌合戦の看板を下ろすことだけはしないでほしい」というところに尽きます。

    現在の社会の流れを考えると、近い将来にはTVと動画配信サイトで紅白をリアルタイム同時配信という形もありえるのではないかと考えています。
    そうなった場合、紅白が近年(70回を除く)のように若い世代の信頼を積み上げれば「J-popもロックもボカロも歌謡曲も何でも楽しめる最強のオンラインフェス」として史上まれにみる大型音楽コンテンツへと脱皮できるポテンシャルがあると感じています。
    今から新しくフェスや番組を立ち上げてもそれは恐らく不可能です。70年かけて磨いてきた「紅白」という看板を使えるからこそ可能なことだと思います。
    だからこそ今短絡的に紅白を終わらせることは、大きく言うと日本の音楽文化にとって大きな損失であるとまで考えています。

    コロナ禍で新たな番組・音楽の形を模索し続けているNHKスタッフや歌手の皆さんに最大限の敬意を払いつつ、これからの紅白の行く末を大きな期待と少しの不安を胸に見守っていきたいと思います。
    改めまして、記事作成本当にお疲れさまでした。

  4. カーシーさん記事更新お疲れ様でした。僕も今年の紅白は誠に素晴らしい内容だったという風に感じます。「カラフル」というテーマに沿うような多様なステージや企画の数々、殆どのステージにおいて安定していた音響やカメラワーク、そして素敵な演出の数々、、見応えがものすごくありました。また藤井風さん、YOASOBI、BUMP OF CHICKEN、MISIAさん、乃木坂46などカーシーさんが言ってらっしゃるように「粋」なパフォーマンスもいっぱいでしたね。ただ、コメントで何人か書かれていらっしゃるように「今年の顔」と言えるアーティストがあまりいなかった印象は受けざるを得ないですね。Official髭男dism、優里、Ado、、といった言った面々ですかね。まあと言ってもこの辺りのアーティストを揃えても視聴率が必ずしも良くなる保証はどこにもないというのが現状ですから、そこもまた難しいですね。。この流れで視聴率の話をしますと、個人的にはどのような内容であろうと視聴率が下がるのはほぼ確定なのかな、と本番を見る前に思っていました。在宅率の低下、国民的アーティストの不足、視聴プログラムの変化、、理由は色々あります。こういった理由の中で、今後この視聴率に対してどう向き合うのかが今後の紅白の課題と言えると思います。いずれにしろ昨年はとても素晴らしい内容であったため、今年も視聴率や世間の過剰な意見に振り回されすぎずに、いい番組づくりを続けてもらいたいですね。昨年の紅白に関わったアーティストの皆様、そしてスタッフの皆様などなど全ての皆様に最大限の感謝を表すとともに、今後の紅白もしっかりと見守っていこうと思います。

  5. 毎年、楽しく記事を読ませていただいております。

    裏トークの副音声がなくなったのもそうなのですが、BS4Kの別アングル放送もなくなっていたように感じます。バラバラで別個に観たので断言出来なくて恐縮なのですが、録画の4K放送を観た限り、地上波と別アングルはないように感じました。裏トークに関しては、副音声に変えられなければなくなったのが分かるのでよいのですが、票数の関係で同一チャンネルでの連続視聴を推奨している以上、初めからキチンとアナウンスしてほしかったです。そうすれば初めから4Kで観たのに・・・。

    愚痴はこのくらいで、紅白歌合戦に関しては自分も末永く続いてほしいものだなと感じます。アメリカの方だと本家のビルボードチャートが1960代から継続性のあるランキングとして脈々と続いていますが、日本の方はというと、これを模倣したチャートが歌番組のオリジナルだったという特性上、番組の終了とともに終了してしまったことが非常に残念に感じます。その後は長らくオリコンチャートがその役割を担ってきたわけですが、自分が語るまでもなく、10年代頭あたりからトレンドチャートとして見るには不適なものに変質してしまい、ビルボードジャパンチャートが重宝され始めるという実に残念な流れ。

    その一方で、日本では一年に一度スター歌手が一堂に会して、ぱーっと華やかにやろうぜという稀有な番組が70年間以上脈々と続いているわけです。紅白歌合戦のセットリストこそが日本の音楽史そのものであり、続けることこそが「政府から独立して 受信料によって運営され、公共の福祉と文化の向上に寄与することを目的に設立された公共放送事業体」の責務である。と私は声を大にして言いたい。

    また、年ごとに出来不出来はもちろんありますが、スタッフの方々が、年齢を問わずみんなが楽しめる番組を作るという、今のご時世では難しすぎる難題に、実に真摯な姿勢で取り組まれておられるということに対して、心からのリスペクトを。

    最後に5回ほど現地で観覧させていただきましたが、応募方法の変更により力技ができなくなってしまったことへの恨みつらみを、、、と思ったのですが、観覧応募が始まった時の定例の会見時に、NHKの会長さんから名指しで文句を言われた気がした(同じ方ばかり来場している的な)ので、仕方ないと諦めモードです。

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