紅白歌合戦・藤井フミヤの軌跡~ステージ編~

 この記事では藤井フミヤがソロで出場した第44回(1993年)~第48回(1997年)を、本人のステージ中心に振り返ります。チェッカーズ時代のステージはこちらの記事を参照してください。

第44回(1993年)「TRUE LOVE」

作詞・作曲:藤井フミヤ
前歌手:THE BOOM、工藤静香
後歌手:小林幸子、小林 旭
曲紹介:堺 正章
(白組司会)

 ソロで紅白初出場となったステージは、奇しくも曲順・前後のステージとも前回の解散時と全く同様でした。

 「TRUE LOVE」はこの年10月からフジテレビで放送されたドラマ『あすなろ白書』の主題歌として大ヒットしました。当時は現在と比較してテレビドラマのヒットは非常に多く、特に「月9」は通称が定着し始めた時期でした。前回の紅組司会・石田ひかりは連続テレビ小説『ひらり』のヒロインでしたが、2年連続司会起用に至った理由はNHKでなくこのドラマのヒットが大きかったと言われています。石田さんとともに主演を務めた筒井道隆も連続テレビ小説『かりん』の縁でゲスト審査員、この場面では登場しませんがSMAPの木村拓哉も同作に出演しています。

 堺さんの曲紹介では、民放であるドラマのタイトル『あすなろ白書』まで読み上げられます。紅組司会の石田さんも、この曲だけは白組応援をしなければならないというやり取りでした。民放のドラマ主題歌が紅白で歌われる例はそれ以前にも多くありますが、タイトルがはっきりと曲紹介で明示されるのは初でした。これまでは1980年・第31回の海援隊「贈る言葉」で『3年白組の金八先生』と紹介されたのが限度です。

 アコースティックギターを弾きながらのステージで、バンドメンバー無しで非常にシンプルな舞台が作られています。ドライアイス演出に客席のペンライト、照明もやや暗めで星空をイメージした内容でした。演奏はおそらくCD音源で、フミヤさんが鳴らすギターの音もマイクには入っていない様子です。途中2番Aメロで”雨”を”風”と間違えるハプニングもありました。

 とは言えドラマは名作、楽曲も200万枚以上CDを売り上げた大ヒットかつ名曲です。間奏のスイッチングでは筒井さん、そして石田さんが微笑む表情も映りました。フミヤさんが紅組側にいる石田さんに笑顔を向けたようですが、彼の動きが映像に映っていなかったのが惜しい所です。

 間奏もカット無しの完全フルコーラス、前年同様この年の紅白もフミヤさんが最大の見どころでした。歌い終わりには石田さんがフミヤさんに花束を贈るシーンも入ります。見ようによっては紅組司会が白組に買収されたような状況で、実際この年も白組が大勝する結果になりました。

 なおソロになってからは、チェッカーズ時代と比べても自身のステージ以外の出演は少なかった気がします。全員合唱「山に抱かれて」で和田アキ子工藤静香と1番歌い出しを担当した時と、中間発表の時くらいでした。その中間発表ではミニコントがあり、冒頭「楽屋いてたんがさだまさしと藤井フミヤ2人だけ」と紅組応援で偵察に来た宮川花子に言われるシーンがあります。オープニングやエンディングで全員集まる場面は、ハ行だと後列や端になることも多く、また本人の身長もあまり高くないので(公表だと164cm)見つからない回もたまにあります。

第45回(1994年)「DAYS」

作詞・作曲:藤井フミヤ
前歌手:香田 晋、中山美穂
後歌手:
Dreams Come True、米米CLUB
曲紹介:古舘伊知郎(白組司会)

 ステージは珍妙な曲紹介から入ります。ビニ本美男子研究家のタスキをかけて登場する谷村新司が、二枚目の法則を発見したそうです。「グループであること」「男ばっかし」「地域では九州」「グループ名がカタカナ」。この原則に当てはまるのは横にいる前川清(長崎出身/クールファイブ)かと思いきや、フミヤさんというオチでした。二枚目なので終始女子ファンの声援多数、当然こんなやり取りは耳に入ってなどいません。

 前年同様ギターを弾きながらのステージです。音源はCD同様で、手の動きと音が合っていないのも同様です。整髪剤で髪の毛を固めて、リーゼント一歩手前という髪型でした。歌声はもちろん生歌、ルックスだけでなく声もバリバリのイケメンであることを、ステージをもって証明しています。

 「DAYS」は直近リリースのバラードで、当時TBCのコマーシャルで耳にすることが多かった楽曲です。歌い上げるサビ以外はやや地味な作りですが、フルコーラスだと6分半にもなる大作です。したがって1コーラスながら演奏時間は3分を超えるという、レアな構成になりました。歌唱力の高さはデビュー当時からずっとそうですが、14回出場した紅白でそれをもっともアピールした内容だったのではないかと感じます。

 この年は自身のステージ以外の出番がほぼなく、エンディングで何とか顔が確認できた程度でした。

第46回(1995年)「GET UP BOY」

作詞:藤井フミヤ 作曲:藤井尚之
前歌手:郷ひろみ、森口博子
後歌手:森高千里、SMAP
曲紹介:古舘伊知郎(白組司会)

 森口博子「あなたにいた時間」に続く形のステージ、せり上がり(ドライアイス噴出の演出あり)から格好良く舞台に登場します。古舘さんは夜のヒットスタジオ時代から歌手に2の名をつけるのが大好きな司会者ですが、ここでは「三十路の少年」というキャッチフレーズが採用されました。

 前2年とは違うアップテンポの曲調、マイクスタンドを持ちながらの熱唱です。矢沢永吉のライブでお馴染みの演出ですが、当時はまだ永ちゃんの紅白出場など考えられない時代。紅白歌合戦では初めて見る新鮮な風景です。この曲ではサビの”傷だらけ”で足を大きく蹴り上げるのがポイント。歌声はもちろん素晴らしいですが、この年は体の柔らかさを活かしたパフォーマンスが特に印象的でした。

 この年は3段式のセットに出場歌手が勢揃いするオープニング、白組司会の古舘さんが実況でざっと紹介しています。フミヤさんは3段目、森進一南こうせつに挟まれる立ち位置です。17時から日本武道館で『2095 WINTER TOUR』最終公演を開催、その会場から移動して紅白出演というスケジュールでした。武道館の大晦日ライブはこの年から2009年まで毎年行われる、ファンにとっての恒例行事になっています(2013年以降も2015年と2019年~を除いて開催)。

第47回(1996年)「Another Orion」

作詞:藤井フミヤ 作曲:増本直樹
前歌手:SMAP、安室奈美恵
後歌手:華原朋美、玉置浩二

曲紹介:古舘伊知郎(白組司会)

 本人が主演を務めたTBSテレビ『硝子のかけらたち』主題歌として大ヒットしました。ドラマで共演した江角マキコが、審査員席に座っています。

 古舘さんの「歌うフェロモン」にズッコケるフミヤさん。歌前トークでは共演した江角さんとの話題、「男同士みたいな付き合い」というフミヤさんの言葉に大笑いしてました。「そこに座ってるの変だもん」とさらにツッコミを入れてます。「少しおとなしくしなさい審査員らしく」「白組よろしくね」という言葉を残して、イントロの演奏が始まります。

 冒頭テロップでスイッチングミスがありました。歌手名を出す所で一瞬歌い出しの歌詞が表示されます。ややバタバタした画面ですが、ステージは落ち着いたものです。1996年を代表するバラード大熱唱でした。レーザー状の光線が入る演出は現在全く珍しくありませんが、当時は目新しい部分もありました。

 曲順は後半白組2番手、これは当時その年を代表する大ヒット曲が集中する時間帯でした。今なら「あなたに逢いたくて~Missing You~」が大ヒットした松田聖子(後半紅組3番手)とともにトリ抜擢も十分考えられましたが、この年はまだJ-POPの終盤登場が珍しい時代です(翌年の安室奈美恵、2年後のSMAPで少しずつ緩和され始めはしますが…)。

 この年は長年コント番組で共演している木梨憲武が憲三郎として出演。またRATS&STARで出場した田代まさし桑野信義は、当時バラエティータレントでもお馴染みでした。「蛍の光」は後ろの方で全く映っていないことも多いのですが、この回は真後ろにゴスペル隊がいる中で、その3人と手を左右に動かして歌う姿がバッチリ映っています。

第48回(1997年)「Go the Distance」

日本語詞:藤井フミヤ 作詞:David Zippel 作曲:Alan Menken
前歌手:シャ乱Q、伍代夏子
後歌手:森高千里、前川 清
曲紹介:中居正広(白組司会)、河村隆一

 この年も歌前トークあり。初出場で女性人気の高い河村隆一が曲紹介に登場。この年「Glass」「Love is…」などLUNA SEA時代以上にヒットした河村さんはフミヤさんを目標にソロ活動、彼が方向性で迷っていた時に「いい声してるから大丈夫だよ」と激励してくれたらしいです。14回目の出場も、女性ファンの声援は多めでした。

 曲紹介でのアナウンスはありませんが、この年はディズニー映画『ヘラクレス』日本語吹替版主題歌です。日本人歌手がディズニー映画テーマソングを歌うのは、この曲が史上初でした。世界的に知られている楽曲ですが、同年のフミヤさんのCD売上はドラマ『ミセスシンデレラ』主題歌の「DO NOT」の方が上です。

 1コーラスもしくは1コーラス半の歌唱が多い紅白ですが、この年は2コーラス半の大熱唱でした。Cメロの光の演出が楽曲にもよく合っています。間奏とアウトロが若干短くなる程度のフルコーラスで約3分40秒の歌唱時間は当時の紅白でもかなり長め、歌い終わりには客席から大きな拍手が起こりました。

おわりに

 翌年にポニーキャニオンからソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズにレーベル移籍、新曲「わらの犬」をヒットさせますが(オリコン年間129位)、残念ながら紅白出場はこのタイミングでストップします。弟の藤井尚之と結成したF-BLOODでは「SHOOTING STAR」がNHK長野五輪中継テーマソングに起用されましたが、こちらでも出場ならずでした。後者は中継でも当然多く流れていたので、CD売上があまり上がらなかったのは当時としても非常に意外な印象でしたが、Youtubeやストリーミング再生という概念があれば結果はまた違っていたのかもしれません。

 日本武道館の大晦日ライブは1999年からカウントダウン化、実質的にはこれをもって紅白卒業という形になります。ちなみにフミヤさんはチェッカーズ時代を含めると109回武道館単独公演を開催、100を超える回数は矢沢永吉松田聖子と彼の3組のみという記録になっています。

 今回の特集はファンの皆さんからの反響も非常に多いですが、この反応の多さが人気健在の証拠を如実に表しているように感じます。今年の7月で60歳になることがまるで信じられませんが、歌声も格好良さもまだまだ健在。今後の活躍も、あらためて期待します。

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