紅白歌合戦・バンド出場歌手の歴史(まずは一括データ編の前編)

 現在の音楽シーンに欠かせないのはバンド形態のアーティスト。ロックを中心に各ジャンルひしめいています。ただその活躍ぶりと比較すると、紅白歌合戦に出場するケースはやや少ないような気がするというのが毎年の感想です。

 そこで、本日から紅白歌合戦とバンドで出演する歌手の関係について、しばし書いていくことにします。

 まずはある程度時期ごとに出場歌手をまとめ、その歴史・傾向について簡単に書くことにします。次回以降の記事で、紅白に出場した時の活躍について書いていきます。なお便宜上、バンドだけでなくいわゆるユニット形態の出場歌手についても触れていることをあらかじめご了承ください。

 なおこの記事は昭和期について扱っています。平成~令和のバンドについてはこちらの記事を見てください。

黎明期・ハワイアンからグループサウンズへ

 バンド形態で紅白歌合戦に出場した最初の歌手は、おそらく第4回(1953年)~第6回(1955年)に出場した浜口庫之助ではないかと思われます。後に作曲家として活躍する浜口さんは、この当時「浜口庫之助とアフロ・クバーノ」というハワイアンバンドで活躍していました。もっとも映像や写真・文献でも確認できる資料がなく、あくまで推測の域でしかありません。グループで音楽活動するという概念は当時無く、出場歌手もあくまで「浜口庫之助」名義。演奏もバンドメンバーを引き連れてではなく、紅白側で用意しているオーケストラが担当している可能性さえあります。アーカイブスで第6回の音声は聴けますがまだ確認できていないので、それで判明次第またこちらで文面を更新することをご了承ください。

 初のグループ出演は、第9回(1958年)のダーク・ダックスです。楽器を手にしたグループの出場は、第10回(1959年)の和田弘とマヒナスターズが初でした。ハワイアンギターを主体としたサウンドで、第18回(1967年)まで9年連続出場を果たします。マヒナスターズの楽器は和田弘が担当するスチールギターのみスピーカー使用、それ以外のギター・コントラバス・ウクレレはスタンドマイク越しの生音演奏でした。

 いわゆる今日のJ-ROCKまで繋がるバンドサウンドは、第17回(1966年)のジャッキー吉川とブルー・コメッツが初となります。紅組では第19回(1968年)のピンキーとキラーズが初、これは紅白史上初の男女混合グループでもありました。ソロ歌手の専属バンドは「恋をするなら」を歌った第15回(1964年)の橋幸夫が初、同時にこれが紅白初のエレキバンド演奏になっています。

 ムード歌謡全盛期はメンバーがギターを弾きながら歌うステージも存在しています。バンドとは異なりますが、一応表には加えることにしました。また音楽ジャンルに限らずバンド形態での出場は太字表記、ユニット形態に留まっているグループはそのままの字体で表記しています。

出場回歌手楽曲メンバー備考
第10回(1959年)~
第18回(1967年)
第40回(1989年)
和田弘と
マヒナスターズ
夜霧のエアー・ターミナル(10)
お百度こいさん(11)
惚れたって駄目よ(12)
泣かせるね(13)
男ならやってみな(14)
お座敷小唄(15)
愛して愛して愛しちゃったのよ(16)
銀座ブルース(17)
男の夜曲(18)
誰よりも君を愛す(40)
松平直樹(ボーカル
三原さと志(ボーカル
佐々木敢一(ウクレレ/コーラス)
日高利昭(ギター/コーラス)
山田競生(ベース/コーラス)
和田 弘(スチールギター
第40回は松尾和子とデュエット
第13回(1962年)ダニー飯田と
パラダイス・キング
グッドバイ・ジョーダニー飯田他6名写真では太鼓1名以外全てボーカル・コーラス
当時の女性ボーカル・九重佑三子は不参加
第17回(1966年)~
第19回(1968年)
ジャッキー吉川と
ブルー・コメッツ
青い瞳(17)
ブルー・シャトー(18)
草原の輝き(19)
井上忠夫(ボーカル/サックス/フルート)
三原綱木(ボーカル/ギター
高橋健二(ボーカル/ベース
ジャッキー吉川(ドラムス
小田啓義(キーボード
グループサウンズ活動期の出場歌手はブルコメのみ
第19回(1968年)黒沢明と
ロス・プリモス
たそがれの銀座森聖二(メインボーカル/ギター)
黒沢明(コーラス/ギター)
大川公生(コーラス/ベース)
他2名
他2名はマラカスを振りながらコーラスを担当
第19回(1968年)~
第22回(1971年)
ピンキーとキラーズ恋の季節(19)
星空のロマンス(20)
土曜日はいちばん(21)
何かいいことありそうな(22)
今 陽子(ボーカル
ジョージ浜野(ギター/コーラス)
エンディ山口(ギター/コーラス)
ルイス高野(ベース/コーラス)
パンチョ加賀美(ドラムス
第22回の男性メンバーはコーラスのみ
第19回(1968年)~
第24回(1973年)
鶴岡雅義と
東京ロマンチカ
小樽のひとよ(19)
君は心の妻だから(20, 24)
別れの誓い(21)
追憶(22)
くちづけ(23)
三條正人(ボーカル
鶴岡雅義(ギター
奥山浩章(コーラス)
山崎雅義(コーラス)
有沢幸男(コーラス)
松田直也(コーラス)
浜名ヒロシ(コーラス)
浜名ヒロシは1969年加入
第19回はコーラス4人中3人がギター、1人ウクレレ
第20回は3人ギター・2人ウクレレ
第23回は5人でパーカッション、第24回はコーラスのみ
第20回(1969年)
第31回(1980年)
内山田洋と
クール・ファイブ
長崎は今日も雨だった(20)
魅惑・シェイプアップ(31)
前川 清(ボーカル
内山田洋(ギター/コーラス)
小林正樹(ベース/コーラス)
森本 繁(ドラムス/コーラス)
宮本悦朗(キーボード/コーラス)
岩城茂美(サックス/フルート/コーラス)
第20回・第31回以外の出場はボーカル+コーラスで、メンバーの演奏無し

1970年代・フォークグループの登場~ロックバンドの台頭

 1970年代前半はフォークグループの初出場が目立ちます。多くが1回限りの出場で、ヒットも長続きしないアーティストが大半でした。

 ロックバンドが歌謡界でヒットを残し、紅白歌合戦初出場まで果たすのは第26回(1975年)のダウン・タウン・ブギウギ・バンドが最初です。複数回出場は第29回(1978年)のツイストが最初、第30回はツイストの他にサザンオールスターズゴダイゴも初登場。邦楽シーンでバンドが市民権を得たのは、概ねこの時期と考えて良いのではないかと思います。

 殿さまキングスのコーラス隊が第27回(1976年)のみギター・マラカス・コンガ演奏あり、チェリッシュの松崎悦孝が第26回のみギター演奏などイレギュラーな例もありますが、それらは表から省く形にしました。

出場回歌手楽曲メンバー備考
第22回(1971年)はしだのりひこと
クライマックス
花嫁藤沢ミエ(ボーカル
はしだのりひこ(ボーカル
坂庭省悟(ギター/コーラス)
中嶋陽二(ギター/コーラス)
メインボーカルは女性ながら、白組から出場
第23回(1972年)青い三角定規太陽がくれた季節西口久美子(ボーカル
岩久 茂(ギター/コーラス)
高田真理(ギター/コーラス)
メインボーカルは女性ながら、白組から出場
第23回(1972年)ビリー・バンバンさよならをするために菅原 進(ボーカル/ギター)
菅原 孝(ボーカル/コントラバス
第24回(1973年)ガロ学生街の喫茶店大野真澄(ボーカル
堀内 護(コーラス/ギター)
日高富明(コーラス/ギター)
第24回(1973年)ぴんから兄弟女のみち宮 史郎(ボーカル
宮 五郎(ギター
第25回(1974年)、
第31回(1980年)他
海援隊母に捧げるバラード(25, 49)
贈る言葉(31, 44)
武田鉄矢(ボーカル
中牟田俊男(ギター/ハーモニカ)
千葉和臣(ギター
ハーモニカ演奏は第44回のみ
第25回(1974年)ペドロ&カプリシャスジョニイへの伝言高橋まり(ボーカル
ペドロ梅村(タンバリン/コーラス)
ヘンリー広瀬(フルート/コーラス
古城マサミ(ギター
他3名
当日はボーカル・ギター・ベース・ドラムス・
オルガン・フルート・タンバリン
の7名体制
第26回(1975年)ダウン・タウン・
ブギウギ・バンド
港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ宇崎竜童(ボーカル/ギター)
和田静男(ギター
新井武士(ベース
相原 誠(ドラムス
第28回(1977年)森田公一と
トップギャラン
青春時代森田公一(ボーカル/ピアノ)
渡部玲子(コーラス/タンバリン)
原田正美(ギター/コーラス)
岩田康男(ギター/コーラス)
小原重彦(ベース/コーラス)
北村勝彦(ドラムス
第29回(1978年)、
第30回(1979年)
ツイストあんたのバラード(29)
燃えろいい女(30)
世良公則(ボーカル/ギター)
鮫島秀樹(ベース
ふとがね金太(ドラムス
神本宗幸(キーボード
太刀川紳一(ギター
松浦善博(ギター
太刀川紳一は第29回のみ、松浦善博は第30回のみ出場
第30回(1979年)、
第33回(1982年)、
第34回(1983年)他
サザンオールスターズいとしのエリー(30)
チャコの海岸物語(33)
ピースとハイライト(65)
東京シャッフル(65)
希望の轍(69)
勝手にシンドバッド(69)
桑田佳祐(ボーカル
関口和之(ベース
松田 弘(ドラムス
原 由子(キーボード
野沢秀行(パーカッション
大森隆志(ギター
第34回「東京シャッフル」はメンバーの演奏無しでダンスを披露
第65回は横浜アリーナから特別出演
第69回は全出場歌手のステージ終了後に特別出演で演奏
ギターの大森隆志は第34回まで出演
第30回(1979年)、
第31回(1980年)、
第50回(1999年)
ゴダイゴビューティフル・ネーム(30, 50)
ポートピア(31)
タケカワユキヒデ(ボーカル
浅野孝已(ギター
トミー・スナイダー(ドラムス
ミッキー吉野(キーボード
スティーヴ・フォックス(ベース
吉澤洋治(ベース
第30回・第50回はスティーヴ、第31回は吉澤がベースを担当

1980年代・テレビで活躍するバンドが増加するも…

 1980年代に入るとギターは完全にアコースティックからエレキが主体となっています。ソロ歌手もこの頃になると、専属バンドを従えて登場するケースが多くなっています。

 第33回(1982年)は「ウエディング・ベル」のシュガーが初出場。バックバンドも従えてという形でしたが、女性のみで演奏するグループの紅白出場はこれが初でした。

 アルフィー安全地帯など複数ヒット曲を持つバンドも多いですが、アイドル的側面もあったチェッカーズ以外はほとんど1回のみの出場に留まっています。1980年代後半はバンドのヒットも増えましたが、BOOWYやTHE BLUE HEARTSのようなテレビ出演の少ないアーティストだけでなく、普段テレビの歌番組に出ているにも関わらず紅白歌合戦には出演しないアーティストも多くいました。

出場回歌手楽曲メンバー備考
第31回(1980年)クリスタルキング大都会田中昌之(高音ボーカル
ムッシュ吉崎(低音ボーカル
山下三智夫(ギター
野元英俊(ベース
金福 健(ドラムス
今給黎博美(キーボード
中村公晴(ピアノ
第31回(1980年)もんた&ブラザーズダンシング・オールナイトもんたよしのり(ボーカル
高橋マコト(ギター
豊島修一(ギター
渡辺 茂(ベース
マーティー・ブレイシー(ドラムス
林 政宏(キーボード
第33回(1982年)シュガーウエディング・ベル笠松美樹(ボーカル/キーボード)
長沢久美子(コーラス/ギター
毛利公子(コーラス/ベース
女性のみで演奏するグループの出場はこの時が初
第34回(1983年)THE ALFEEメリーアン桜井 賢(ボーカル/ベース)
坂崎幸之助(コーラス/ギター)
高見沢俊彦(コーラス/ギター)
第35回(1984年)~
第43回(1992年)
チェッカーズ多数藤井フミヤ(ボーカル
高杢禎彦(コーラス/電子ドラム)
鶴久政治(コーラス/キーボード)
武内 享(ギター
大土井裕二(ベース
徳永善也(ドラムス
藤井尚之(サックス
詳細はこの記事を参照
高杢禎彦と鶴久政治の演奏担当は第38回のみ
第36回(1985年)C-C-BLucky Chanceをもう一度渡辺英樹(ボーカル/ベース
笠 浩二(ボーカル/ドラム
関口誠人(コーラス/ギター
米川英之(ギター/コーラス)
田口智治(キーボード
第36回(1985年)
第73回(2022年)
安全地帯悲しみにさよなら(36)
メロディー(73)
I Love Youからはじめよう(73)
玉置浩二(ボーカル
矢萩 渉(ギター/コーラス)
武沢 豊(ギター/コーラス)
六土開正(ベース/コーラス)
田中裕二(ドラムス
第73回は特別出演
田中裕二は2022年12月逝去のため、当日は4人での出演
第38回(1987年)竜童組八木節イントロデュース宇崎竜童(ボーカル
他9名
当日はボーカル・ギター・ギター・ベース・ドラムス・ヴァイオリン・
テナーサックス・アルトサックス・パーカッション・ハープ
の10名体制
第39回(1988年)、
第40回(1989年)
男闘呼組DAYBREAK (39)
TIME ZONE (40)
成田昭次(ボーカル/ギター
高橋一也(ボーカル/ベース
岡本健一(ギター/ボーカル)
前田耕陽(キーボード/ボーカル)
第39回(1988年)、
第40回(1989年)
爆風スランプRunner (39)
大きな玉ねぎの下で~はるかなる想い (40)
サンプラザ中野(ボーカル
パッパラー河合(ギター
ファンキー末吉(ドラムス
江川ほーじん(ベース
バーベQ和佐田(ベース
第39回は江川、第40回は和佐田がベースを担当
第39回(1988年)TM NETWORKCOME ON EVERYBODY宇都宮隆(ボーカル
木根尚登(ギター/コーラス)
小室哲哉(キーボード/コーラス)
第40回(1989年)ザ・タイガース花の首飾り
君だけに愛を
沢田研二(ボーカル
加橋かつみ(ボーカル/ギター
森本太郎(ギター/コーラス)
岸部一徳(ベース/コーラス)
岸部シロー(タンバリン/コーラス)
詳細はこの記事を参照
第40回(1989年)聖飢魔II白い奇蹟デーモン小暮(ボーカル
Sgt.ルーク篁III世(ギター
エース清水(ギター
ゼノン石川(ベース
ライデン湯沢(ドラムス

平成以降…

 バンドの出場歌手について、紅白出場を予想する観点から考えると話題にすべきはやはり平成以降ではないかと思われます。

 ただ昭和の時点で結構なボリュームの記事になり、ここから平成以降となるといつまでかかるか分かりません。

 というわけで、平成から令和までの紅白におけるバンド出演者は次の記事でまとめる形とさせて頂きます。

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