今回も長年紅白歌合戦に出場を続けた歌手の特集を組みます。通算出場29回、紅組歴代通算6位の記録を持つ都はるみについて取り上げます。
都はるみの紅白歌合戦エピソード
デビュー年でヒットするも、初出場は2年目
1964年「困るのことヨ」でデビューした都さんは、早くも10月発売の「アンコ椿は恋の花」が大ヒットを記録します。同年の日本レコード大賞新人賞受賞(当時は最優秀選定前)、この時まだ16歳という若さでした。
ただ10月発売だったので、第15回(1964年)の歌手選考時点で候補に挙がっていたかどうかは分かりません。当時は平成以降のような初登場◯位という概念は存在せず(そもそもオリコンがない時代)、特に新人はチャート下位から上昇してヒットに至るのが通例(そういえば令和以降、サブスク発のブレイクが概ねこういう状況になっているような…)。年齢的に出場が難しい(もっとも弘田三枝子は15歳で初出場)、NHKのオーディションに合格してなかったなどデビュー年で出場できなかった理由は様々推測されているようですが、個人的には単純にヒットの時期が紅白歌合戦の歌手選出に間に合わなかったという説が一番濃いのではないかと考えています。
演歌では異例の若さで紅白歌合戦初出場
洋楽カバーを歌わない、日本調の歌謡曲を主体にした歌手が10代で紅白歌合戦に初出場するのは極めて異例です。「涙の連絡船」で初出場したのは17歳、これは第5回の美空ひばりと同い年で第8回の島倉千代子や松山恵子より2才若いです。日本調の歌謡曲、都さんの初出場当時は一般化されていない言葉でしたが、やがて「演歌」という一つのジャンルに成長します。言うまでもなく、都さんは演歌の第一人者として紅白歌合戦に君臨する存在でした。
1960年代中盤、17歳以下で初出場する紅組歌手は吉永小百合に伊東ゆかりなど珍しくはなくなりましたが、演歌というジャンルで限定すると都さん以降森昌子と西川峰子しか達成していない記録になっています。
「北の宿から」でついに大トリを射止める
第26回(1975年)、この年の紅白歌合戦で披露した曲は12月に発売されたばかりの「北の宿から」でした。
紅白歌合戦をきっかけに、かどうかは不明ですが、年明け以降ヒットチャートの順位が徐々に上昇し始めます。オリコンでは夏頃にTOP10入り、12月に週間1位を獲得という記録が残っています。つまり、1976年においては1年中ほぼずっと大ヒットした曲でした。
1976年の年末賞レースは、日本レコード大賞を筆頭にほとんど全てこの曲が大賞受賞となりました。第8回以来美空ひばりと島倉千代子で18年連続独占状態だった紅組トリも、この曲のヒット・12回目というキャリアで全く文句ありません。大トリで堂々と歌い上げ、紅組を優勝に導きました。
なおレコード会社はひばりさん・お千代さん・はるみさんともに日本コロムビア。ひばりさんより前の笠置シヅ子や二葉あき子もコロムビアなので、21年連続コロムビア所属歌手の紅組トリは継続となっています(翌年のテイチク・八代亜紀でようやくストップ)。
伝説の引退ステージ
都さん最大のハイライトは、紅白歌合戦だけでなく歌手活動を通して考えても、やはり1984年12月31日を置いて他にありません。
放送前から大々的に宣伝され、放送中は同じ京都出身の紅組司会・森光子とのデュエットもあり。もちろん番組一番の目玉としての大トリ、さらには紅白唯一のアンコール演出まで用意されるというお膳立て。視聴率は関東地区で78.1%、これは第23回(1972年)以来の高さで最後の70%台という結果になっています(ただ関西地区は微増に留まる63.1%で第32回より低め)。
これに関してはステージ編で詳細に記す予定としています。なおミソラ発言に端を発するその後の反響については紅白名言集解説・35~ミソラ事件~を見てください。
平成になって復活、再び常連に
引退後プロデューサー業を経て、美空ひばり逝去を機に再び歌手活動再開。平成最初の紅白歌合戦、第1部いわゆる「昭和の紅白」大トリとして登場したのは、5年ぶりにステージで歌う都はるみでした。
翌年の復帰作「小樽運河」は大ヒット、カップリング曲「千年の古都」で紅組トリとなります。以降は演歌に留まらず多彩なジャンルに挑戦、第47回の「好きになった人 ’96」は名曲をロックアレンジで歌う姿が印象的でした。
1997年・第48回を最後に紅白歌合戦からは卒業(1998年に辞退を表明)。以降も精力的な活動は続いていましたが紅白復帰はなく、2016年以降は長い休止状態に入っています。
都はるみの紅白データ~29回分のまとめ
出場回 年齢 |
歌唱曲 | 作詞者 作曲者 |
発売日 | 曲順 | 主なデータ | 主な受賞 | 他の発売曲 |
第16回 (1965年) 17歳 |
涙の連絡船 | 関沢新一 市川昭介 |
1965/10/5 | 紅組2番手/25組中 | 100万枚以上の累計売上 | ・さすらい小鳩 ・よさこい鳴子踊り |
|
第17回 (1966年) 18歳 |
さよなら列車 | 関沢新一 市川昭介 |
1966/6/5 | 紅組18番手/25組中 | ・アラ見てたのね ・ふるさと音頭 |
||
第18回 (1967年) 19歳 |
初恋の川 | 関沢新一 市川昭介 |
1967/9/1 | 紅組トリ2つ前 | ・飛んで来てきっと来て ・レモン月夜の散歩道 |
||
第19回 (1968年) 20歳 |
好きになった人 | 白鳥朝詠 市川昭介 |
1968/9/1 | トップバッター | オリコン週間最高24位 年間45位クラスの売上 |
・霧笛の波止場 ・涙のバラ |
|
第20回 (1969年) 21歳 |
はるみの三度笠 | 市川昭介 市川昭介 |
1969/4/1 | 紅組トリ前 | オリコン週間最高25位 | ・惚れちゃったんだヨ ・ゆうがおの丘 |
|
第21回 (1970年) 22歳 |
男が惚れなきゃ女じゃないよ | 金井さち子 市川昭介 |
1970/11/25 | 紅組18番手/24組中 | オリコン週間最高52位 | ・ふるさとが泣いた ・きっと、きっと、また来てネ |
|
第22回 (1971年) 23歳 |
港町 | 石本美由起 猪俣公章 |
1971/10/10 | 紅組20番手/25組中 | オリコン週間最高52位 | ・愛しちゃって馬鹿みたい ・男は黙って勝負する |
|
第23回 (1972年) 24歳 |
おんなの海峡 | 石本美由起 猪俣公章 |
1972/10/10 | 紅組19番手/23組中 | オリコン週間最高76位 | ・哀愁の旅路 ・長崎の恋は悲しい |
|
第24回 (1973年) 25歳 |
涙の連絡船 | 関沢新一 市川昭介 |
(2回目) | 紅組トリ3つ前 | ・日本レコード大賞制定15周年記念賞 | ・国盗り音頭 ・私の心の赤い馬車 |
|
第25回 (1974年) 26歳 |
にごりえの町 | 横井 弘 平尾昌晃 |
1974/7/1 | 紅組13番手/25組中 | ・おぼろ月夜 ・あなたの港 |
出場回 年齢 |
歌唱曲 | 作詞者 作曲者 |
発売日 | 曲順 | 主なデータ | 主な受賞 | 他の発売曲 |
第26回 (1975年) 27歳 |
北の宿から | 阿久 悠 小林亜星 |
1975/12/1 | 紅組トリ2つ前 | 1976年オリコン年間3位 | ・お願いします ・みれん節 |
|
第27回 (1976年) 28歳 |
北の宿から | 阿久 悠 小林亜星 |
(2回目) | 大トリ | 1977年オリコン年間11位 | ・日本レコード大賞受賞 ・日本歌謡大賞受賞 |
・ただひとり |
第28回 (1977年) 29歳 |
しあわせ岬 | たかたかし 岩久 茂 |
1977/10/1 | 紅組トリ前 | ・雨やどり ・海鳴りの詩 |
||
第29回 (1978年) 30歳 |
なんで女に | 千家和也 小林亜星 |
1978/10/1 | 紅組トリ前 | ・のれん ・九十九里はたそがれて |
||
第30回 (1979年) 31歳 |
さよなら海峡 | 吉岡 治 市川昭介 |
1979/8/1 | 紅組トリ前 | ・あゝ放浪 ・大東京音頭 |
||
第31回 (1980年) 32歳 |
大阪しぐれ | 吉岡 治 市川昭介 |
1980/2/1 | 紅組18番手/23組中 | 1980年オリコン年間49位 1981年オリコン年間6位 |
・日本レコード大賞最優秀歌唱賞 ・日本作詩大賞受賞 |
|
第32回 (1981年) 33歳 |
浮草ぐらし | 吉岡 治 市川昭介 |
1981/1/1 | 紅組トリ2つ前 | 1981年オリコン年間88位 | ・ふたりの大阪 ・金沢の夜 |
|
第33回 (1982年) 34歳 |
涙の連絡船 | 関沢新一 市川昭介 |
(3回目) | 紅組トリ | ・東京セレナーデ | ||
第34回 (1983年) 35歳 |
浪花恋しぐれ | たかたかし 岡 千秋 |
1983/5/21 | 紅組14番手/21組中 | 1983年オリコン年間18位 1984年オリコン年間39位 |
・日本レコード大賞特別金賞 ・日本有線大賞受賞 |
・裏町ごころ ・札幌ふたりづれ |
第35回 (1984年) 36歳 |
夫婦坂 | 星野哲郎 市川昭介 |
1984/9/30 | 大トリ | 1984年オリコン年間163位 1985年オリコン年間27位 |
・日本レコード大賞特別大衆賞 | ・道頓堀川 ・ふたりのラブソング |
出場回 年齢 |
歌唱曲 | 作詞者 作曲者 |
発売日 | 曲順 | 主なデータ | 他の発売曲 |
第40回 (1989年) 41歳 |
アンコ椿は恋の花 | 星野哲郎 市川昭介 |
1964/10/5 | 紅組前半大トリ | ||
第41回 (1990年) 42歳 |
千年の古都 | 吉岡 治 弦 哲也 |
1990/6/27 | 紅組トリ | オリコン週間最高13位 | ・小樽運河 |
第42回 (1991年) 43歳 |
王将一代 小春しぐれ | 吉岡 治 市川昭介 |
(1988/5/21) | 紅組前半大トリ | ・BIRTHDAY ・愛は花、君はその種子 |
|
第43回 (1992年) 44歳 |
つくしんぼ | 水木かおる 市川昭介 |
1992/4/1 | 紅組後半15番手/19組中 | オリコン週間最高71位 | |
第44回 (1993年) 45歳 |
おんなの海峡 | 石本美由起 猪俣公章 |
(2回目) | 紅組トリ前 | ・あなたの隣りを歩きたい ・桜時雨 |
|
第45回 (1994年) 46歳 |
古都逍遥 | たかたかし 弦 哲也 |
1994/4/19 | 大トリ | オリコン週間最高88位 | ・花の乱 |
第46回 (1995年) 47歳 |
草枕 | 吉田 旺 徳久広司 |
1995/3/21 | 紅組トリ前 | オリコン週間最高41位 | |
第47回 (1996年) 48歳 |
好きになった人 ’96 | 白鳥朝詠 市川昭介 |
(2回目) | 紅組前半大トリ | ・ふるさとよ ・Dreaming On My Life |
|
第48回 (1997年) 49歳 |
海峡の宿 | 坂口照幸 南郷 孝 |
1997/10/1 | 紅組トリ3つ前 | オリコン週間最高69位 | ・幻夢のえれじい |
コメント