2023年12月30日に八代亜紀さんの逝去が、年明け1月9日に報道されました。9月から難病で活動休止中だったとのことですが、あまりにも突然の訃報に驚きを隠せません。
出場23回、トリ3回大トリ2回。紅白歌合戦の歴史を語る上で超重要人物であることは言うまでもないですが、まだ個別の記事はここまで書いていません。本来ならもっと早く取り上げるべき歌手で、このタイミングというのは心苦しい部分もありますが、あらためて書いていきます。
八代亜紀の紅白歌合戦エピソード
立て続けに大ヒットして一気にスターダムへ
八代さんのデビュー曲は1971年発表の「愛は死んでも」、初ヒットは「なみだ恋」。この間に読売テレビ『全日本歌謡選手権』10週連続勝ち抜きでグランドチャンピオンに輝いた実績があります。1973年2月に発売された「なみだ恋」はロングセラーを記録、オリコン週間最高12位ながら年間では19位の大ヒット。これが紅白歌合戦初出場歌唱曲となります。
その後は1980年までほぼ毎年オリコン年間ランキング100位以内を記録するヒット曲を連発。紅白歌合戦で歌われていない曲だけを挙げても「おんなの涙」「しのび恋」「愛の執念」「おんなの夢」「花水仙」「ふたりづれ」「恋歌」「涙の朝」と多数あります。女性演歌歌手の総売上枚数は、現在に至るまでトップの数字を記録。むろん紅白歌合戦で歌われたのはその中でもさらに1年を代表する楽曲。「なみだ恋」「もう一度逢いたい」「舟唄」は後年の紅白でも歌われる形となりました。
2年連続大トリは美空ひばり以来2人目
発表される曲が次々に大ヒットした1970年代、早いうちから終盤の曲順が定位置になります。第28回(1977年)は5回目の出場で早くも紅組トリに抜擢。白組の森進一や五木ひろしと同様、20代という若さで歌謡界を背負う存在となります。
ハイライトはやはり第30回(1979年)・第31回(1980年)における2年連続大トリでしょうか。阿久悠・浜圭介コンビの「舟唄」「雨の慕情」は八代さんどころか演歌というジャンルを代表する名曲、「雨の慕情」では日本レコード大賞を筆頭に多くの音楽祭でグランプリ級の賞を受賞しています。
2年連続大トリは第18回(1967年)~第23回(1972年)、6年連続の美空ひばりに続く記録で当時は他に誰もいない快挙となりました。ただ第31回は宝くじ抽選会のルーレットで先攻後攻を決める演出、白組先攻で八代さんが大トリになったのは運命のイタズラという側面もあります。とは言えこの後も連続での大トリは森進一、北島三郎、SMAP、松田聖子、嵐、MISIAのみ。特に女性演歌ではひばりさんと八代さんのみという事実はおさえておく必要があります。
五木ひろしとのライバル対決
全日本歌謡選手権10週連続グランプリからのブレイク、これは「よこはま・たそがれ」が大ヒットした五木ひろしと同様でした。2回目の出場となった第25回(1974年)では、早くも五木さんとの対決が組まれます。
以降第33回(1982年)までの10回で、五木さんとの対決は7回。第28回~第33回までの6回連続は、紅白史上最多記録となっています。3回トリを務めた際も相手は全て五木さん。1980年は日本レコード大賞も五木さんとの争いが注目され、メディアでは「五八戦争」とまで書き立てられました。ただ1983年以降は八代さんのヒットがやや落ち着いたこともあって、紅白での直接対決は組まれなくなります。
八代亜紀の紅白データ~23回分のまとめ
出場回 年齢 | 歌唱曲 | 作詞者 作曲者 | 発売日 | 曲順 | 主なデータ | 主な受賞 | 他の発売曲 |
第24回 (1973年) 23歳 | なみだ恋 | 悠木圭子 鈴木 淳 | 1973/2/5 | 紅8/23 | 1973年オリコン年間19位 1974年同56位 | ・日本レコード大賞歌唱賞 ・日本歌謡大賞放送音楽賞 | ・おんなの涙 ・女ごころ |
第25回 (1974年) 24歳 | 愛ひとすじ | 川内康範 北原じゅん | 1974/5/25 | 紅19/25 | 1974年オリコン年間25位 | ・日本有線大賞グランプリ ・日本レコード大賞歌唱賞 ・日本歌謡大賞放送音楽賞 | ・しのび恋 ・愛の執念 |
第26回 (1975年) 25歳 | ともしび | 悠木圭子 鈴木 淳 | 1975/5/25 | 紅20/24 | 1974年オリコン年間35位 | ・日本歌謡大賞放送音楽賞 | ・おんなの夢 ・貴方につくします |
第27回 (1976年) 26歳 | もう一度逢いたい | 山口洋子 野崎真一 | 1976/9/25 | 紅19/24 | 1976年オリコン年間97位 1977年同78位 | ・日本レコード大賞最優秀歌唱賞 ・日本歌謡大賞放送音楽賞 | ・花水仙 ・ふたりづれ |
第28回 (1977年) 27歳 | おんな港町 | 二条冬詩夫 伊藤雪彦 | 1977/2/5 | 紅組トリ | 1977年オリコン年間56位 | ・全日本有線放送大賞特別賞 | ・恋歌 |
第29回 (1978年) 28歳 | 故郷へ… | 池田充男 野崎真一 | 1978/9/25 | 紅18/24 | 1978年オリコン年間169位 | ・日本レコード大賞金賞 ・日本歌謡大賞放送音楽賞 | ・愛の條件 ・哀歌 |
第30回 (1979年) 29歳 | 舟唄 | 阿久 悠 浜 圭介 | 1979/5/25 | 大トリ | 1979年オリコン年間98位 1980年同55位 | ・日本レコード大賞金賞 ・日本歌謡大賞放送音楽賞 | ・涙の朝 ・女だから |
第31回 (1980年) 30歳 | 雨の慕情 | 阿久 悠 浜 圭介 | 1980/4/25 | 大トリ | 1980年オリコン年間26位 1981年同97位 | ・日本レコード大賞受賞 ・日本歌謡大賞受賞 ・日本テレビ音楽祭グランプリ | ・港町絶唱 |
第32回 (1981年) 31歳 | うしろ影 | 山口洋子 北原じゅん | 1981/10/5 | 紅組トリ前 | 1981年オリコン年間290位 | ・女の街角 ・あなたに逢いたい | |
第33回 (1982年) 32歳 | 海猫 | 高橋直人 小林 学 | 1982/8/21 | 紅組トリ前 | 1982年オリコン年間254位 | ・日本作詩大賞作品賞 | ・あなたと生きる |
出場回 年齢 | 歌唱曲 | 作詞者 作曲者 | 発売日 | 曲順 | 主なデータ | 主な受賞 | 他の発売曲 |
第34回 (1983年) 33歳 | 日本海 | 阿久 悠 大野克夫 | 1983/8/21 | 紅17/21 | 1983年オリコン年間348位 | ・日本レコード大賞特別金賞 | ・なみだ川 ・ブルーレイン大阪 |
第35回 (1984年) 34歳 | 恋瀬川 | 秋野めぐみ 竹田 賢 | 1984/10/5 | 紅組トリ2つ前 | 1984年オリコン年間339位 | ・日本作詩大賞入賞 | ・ふたりの夢 ・涙の最終列車 |
第36回 (1985年) 35歳 | 命火 | 石原信一 浜 圭介 | 1985/9/21 | 紅17/20 | 1985年オリコン年間418位 | ・愛しても今は他人 | |
第37回 (1986年) 36歳 | 港町純情 | 水木かおる 鈴木 淳 | 1986/8/22 | 紅17/20 | 1986年オリコン年間628位 | ||
第38回 (1987年) 37歳 | 恋は火の川 | 池田充男 徳久広司 | 1987/9/21 | 紅組トップバッター | 1987年オリコン年間334位 | ・竜二 | |
第40回 (1989年) 39歳 | 下町夢しぐれ | 石本美由起 岡 千秋 | 1989/2/10 | 紅後半17/20 | 1989年オリコン年間163位 | ||
第41回 (1990年) 40歳 | 花(ブーケ)束 | 阿久 悠 服部克久 | 1990/2/10 | 紅後半15/20 | 1990年オリコン年間222位 | ・日本レコード大賞作詞賞 | |
第42回 (1991年) 41歳 | 舟唄 | 阿久 悠 浜 圭介 | (2回目) | 紅後半10/18 | ・愛を信じたい | ||
第43回 (1992年) 42歳 | 愛の終着駅 | 池田充男 野崎真一 | 1977/9/25 | 紅前半トリ | ・雪のれん | ||
第44回 (1993年) 43歳 | もう一度逢いたい | 山口洋子 野崎真一 | (2回目) | 紅前半6/8 | ・カラス | ||
第50回 (1999年) 49歳 | 舟唄 | 阿久 悠 浜 圭介 | (3回目) | 紅後半5/14 | ・風のブルース | ||
第51回 (2000年) 50歳 | なみだ恋 | 悠木圭子 鈴木 淳 | (2回目) | 紅後半6/14 | ・朧月夜 ・あなたの背中に | ||
第52回 (2001年) 51歳 | これからがある | もず唱平 伊藤雪彦 | 2001/3/17 | 紅前半6/13 |
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