前回の視聴率不振・ハプニング多発などを受けて、1987年の紅白歌合戦は大幅にリニューアルされました。歌謡曲だけでなくオペラ・シャンソンから久々の出場もあり、照明を中心にセットもシンプルかつ高級感のあるイメージに変化します。多様化が進み始めた時代に、紅白歌合戦も多様化を目指すといったところでしたが…。
演奏時間&構成表 1(第38回・1987年)
演奏時間・構成は紅白歌合戦で実際に披露したステージを指しています。フル再生時間はSpotifyの音源基準、オリジナル未配信曲は手持ちのCDからインポートしたiTunes音源を基準としています。
曲順 | 楽曲 | アーティスト | 演奏時間 構成 | フル再生時間 構成 |
1(白1) | 悲しいけれど | 森 進一 | 3分45秒 2コーラス | 4分23秒 2コーラス+ラスト |
2(紅1) | 恋は火の川 | 八代亜紀 | 2分44秒 2コーラス | 4分7秒 3コーラス |
3(白2) | そして今は | 布施 明 | 4分5秒 4コーラス | 3分41秒 3コーラス+ラスト(原曲) |
4(紅2) | 夢やぶれて | 岩崎宏美 | 3分33秒 2コーラス | 4分28秒 2コーラス |
5(白3) | 無錫旅情 | 尾形大作 | 2分28秒 2コーラス | 4分11秒 3コーラス |
6(紅3) | 命くれない | 瀬川瑛子 | 2分55秒 2コーラス | 4分29秒 3コーラス |
7(白4) | I Love you, SAYONARA | チェッカーズ | 2分50秒 1コーラス | 5分1秒 2コーラス |
8(紅4) | 難破船 | 中森明菜 | 3分18秒 1コーラス半 | 4分29秒 2コーラス半 |
9(白5) | 思い出のビーチクラブ | 稲垣潤一 | 2分57秒 2コーラス | 4分40秒 2コーラス半 |
10(紅5) | Hold On Me | 小比類巻かほる | 3分29秒 冒頭+1コーラス半 | 4分46秒 冒頭+2コーラス+サビ |
11(白6) | 夜叉のように | 山本譲二 | 3分24秒 2コーラス | 4分7秒 2コーラス+ラスト |
12(紅6) | 愛は別離 | 川中美幸 | 3分5秒 2コーラス | 3分34秒 2コーラス半 |
13(白7) | 海峡 | 吉 幾三 | 2分49秒 2コーラス | 4分58秒 3コーラス |
14(紅7) | なみだの棧橋 | 松原のぶえ | 3分9秒 2コーラス | 4分43秒 3コーラス |
各ステージ・補足
15年ぶりのトップバッター・森進一は当時もトリ翌年の抜擢でしたが、この回は史上唯一となる大トリの次の年にトップバッター。「悲しいけれど」を2コーラス、1コーラスが長いので演奏時間も1番手としては異例の長さです。
八代亜紀は初のトップバッター、番組前半での歌唱も「なみだ恋」で初出場した第24回以来14年ぶりでした。演歌のトップバッター自体「心のこり」以来12年ぶりですが、「恋は火の川」のような聴かせる曲がトップバッターというのは更に異例のことでした。1番と3番の歌唱、曲順以外は至ってノーマルです。
布施明は7年ぶりの出場で「そして今は」、ステージ内容や曲についてはリンク先を参照してください。シャンソンなので原語はフランス語ですが、このステージでは1番英語・2番日本語・3番以降英語(歌詞テロップ無し)での歌唱です。演奏が進むにつれてテンポが速くなり、最後はアカペラの箇所もあるアレンジでした。白組2番手としてはおそらく史上最高の名演だと思います。なおサブスク配信の音源はライブテイク、8分40秒にわたる演奏です(音源は冒頭MC含めて9分50秒)。(ステージレビュー→紅白歌合戦・布施明の軌跡)
岩崎宏美は当時出演していたミュージカル『レ・ミゼラブル』より「夢やぶれて」を歌唱。羽田健太郎のピアノを交えて、日本語詞フルコーラスの歌唱でした。岩谷時子の訳詞ですが、内容は後年レコーディングした音源と差異があります。なお岩崎さん歌唱の「夢やぶれて」は、2007年のカバーアルバム『PRAHA』に収録。こちらでは2コーラスの前に別の歌唱パートが加わっています。(ステージレビュー→紅白歌合戦・岩崎宏美の軌跡)
尾形大作は「無錫旅情」が大ヒット、オリコンシングル売上年間8位という記録を作っています。本来なら現在まで歌い継がれる楽曲ですが、修学旅行生が多く犠牲になった中国での列車事故による放送自粛、所属事務所とのトラブルなどもあり、実績と比べて全くと言って良いほど伝わっていないのが現状ではないかと感じます。1番と3番の歌唱でした。
瀬川瑛子の「命くれない」も大ヒット、1987年で最もシングルレコードを売り上げたのはこの曲でした。初出場の嬉しさに涙を堪えながらのステージです。1番と3番の歌唱。
チェッカーズはこの年の大ヒット曲「I Love you, SAYONARA」。バンド仕様のステージが続く曲順で、大掛かりな円型の照明セットが天井に備え付けられています。2コーラスで5分の曲ということもあって、1コーラス構成(ラストのタイトルフレーズ繰り返しはあり)。イントロとアウトロはしっかり時間を取っているので演奏時間は短くないですが、やはり一部短縮でももう少し歌を聴きたかった所です。(ステージレビュー→紅白歌合戦・チェッカーズの軌跡)
中森明菜は壮大なバラード曲「難破船」。1番と3番(3番は元々サビ無し)を歌唱、間奏・アウトロカット無しの贅沢な構成です。ただ歌以外の割合が高いせいでしょうか、3分超えのステージにも関わらず若干の短さも感じさせるステージでした。(ステージレビュー→紅白歌合戦・中森明菜の軌跡)
稲垣潤一は「思い出のビーチクラブ」が歌唱曲。彼のキャリアでこれ以上にヒットした楽曲・年も多くありますが、紅白の出場は残念ながら現在もこの1回のみです。専属バンドの生演奏、音楽フェスでよく見かける骨組み状のセットなど、ホールコンサートの雰囲気を最大限に出したようなステージングになっています。1番と2番の歌唱。こういうジャンルの歌手を他に多く出せればこの年の紅白はもっと盛り上がっていたように思いますが、オファーを受けない例も多いので難しい所です。
小比類巻かほるは「Hold On Me」で初出場、こちらも迫力満点の生演奏ステージです。観客席も冒頭から手拍子、非常に盛り上がるステージでした。大胆に歌詞を間違えた箇所もありましたが、それも生の醍醐味です。冒頭~1番と2番Bメロ~サビを歌唱、フェイドアウトで終わる原曲は当然アレンジあり。稲垣さんともども、前年までの紅白では見られなかった臨場感満載のステージでした。
山本譲二は2年ぶりの復帰ですが、諸事情もあるので前回の新沼謙治みたいに復帰しました的な曲紹介は一切ありません。阿久悠作詞の情念演歌「夜叉のように」を歌唱、1コーラス長めの曲ですが普通に2コーラスでした。
川中美幸は父親を亡くした年、「愛は別離」の2コーラス歌唱後に涙を流す場面がありました。ドレス姿にソバージュをかけた長い髪型、衣装は他の紅白と大きく異なっています。
2回目の出場となる吉幾三は2年連続で「雪國」がロングセラーを記録しましたが、歌唱曲はこの年発表の「海峡」でした。1番と3番の歌唱ですが、間奏がカット気味です。
松原のぶえは9年前に森昌子が歌った「なみだの棧橋」、この年シングル曲としてカバーしました。1番と3番の歌唱は当時と同様ですが、演奏時間はこちらの方が34秒長め。間奏とアウトロをしっかり残しているのが、当時とこの年の大きな違いです。
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