1994年・平成6年の紅白歌合戦は何と言っても古舘伊知郎と上沼恵美子の大舌戦。出場歌手よりもそちらの方に注目が集まったほどですが、その一方で歌手の顔ぶれも大幅リフレッシュ。演歌ではなく往年のポップス・アイドル勢の復帰、紅白に縁のなかった超大物の初出場。見どころの多い紅白で内容も好評、視聴率もほぼ全地域で前年より上昇しました(意外にも関西地方ではダウンでしたが)。
この年から第49回(1998年)まで、紅白歌合戦は20時開始・21時半から後半戦というタイムテーブルになります。そのためしばらく記事は5分割から4分割に変更、またその2は第1部・第2部をまたぐ構成にします。
演奏時間&構成表 1(第45回・1994年)
演奏時間・構成は紅白歌合戦で実際に披露したステージを指しています。フル再生時間はSpotifyの音源基準、オリジナル未配信曲は手持ちのCDからインポートしたiTunes音源を基準としています。
曲順 | 楽曲 | アーティスト | 演奏時間 構成 |
フル再生時間 構成 |
1(紅1) 紅前半1 |
BOY MEETS GIRL | trf | 3分24秒 冒頭+2コーラス |
4分48秒 冒頭+2コーラス+サビ |
2(白1) 白前半1 |
SCANDALOUS BLUE | access | 2分53秒 2コーラス |
5分4秒 2コーラス+サビ2 |
3(紅2) 紅前半2 |
恋しさと せつなさと 心強さと | 篠原涼子 | 2分52秒 冒頭+1コーラス+サビ |
4分22秒 冒頭+2コーラス |
4(白2) 白前半2 |
LOVE YOU ONLY | TOKIO | 3分7秒 冒頭+1コーラス半+サビ |
3分56秒 冒頭+2コーラス+サビ |
5(紅3) 紅前半3 |
早くしてよ | 久宝留理子 | 2分37秒 2コーラス+サビ |
3分42秒 2コーラス+サビ2 |
6(白3) 白前半3 |
Get Along Together | 山根康広 | 3分9秒 1コーラス+サビ |
4分44秒 2コーラス+サビ |
7(紅4) 紅前半4 |
惚の字傘 | 長保有紀 |
2分48秒 2コーラス |
4分56秒 3コーラス |
8(白4) 白前半4 |
関門海峡 | 山本譲二 | 2分39秒 2コーラス |
4分17秒 3コーラス |
9(紅5) 紅前半5 |
ひとり酒 | 伍代夏子 |
2分45秒 2コーラス |
4分27秒 3コーラス |
10(白5) 白前半5 |
夢の道草 | 堀内孝雄 | 2分59秒 2コーラス |
3分48秒 2コーラス+サビ |
11(企1) | Micky Mouse Our Shining Star |
東京ディズニーランド | 1分56秒 2コーラス |
2分27秒 2コーラス |
12(紅6) 紅前半6 |
Let’s Go | 森口博子 | 2分52秒 1コーラス半+サビ |
4分56秒 2コーラス半+サビ |
13(白3) 白前半6 |
がんばりましょう | SMAP | 3分26秒 2コーラス半+サビ |
3分47秒 2コーラス半+サビ |
14(紅7) 紅前半7 |
女…ひとり旅 | 田川寿美 |
2分26秒 1コーラス半 |
4分1秒 2コーラス半 |
15(白7) 白前半7 |
夢いちど | 香田 晋 | 2分14秒 2コーラス |
4分25秒 3コーラス |
16(紅8) 紅前半8 |
ただ泣きたくなるの | 中山美穂 |
3分23秒 1コーラス+サビ |
5分4秒 2コーラス+サビ |
17(白8) 白前半8 |
DAYS | 藤井フミヤ | 3分22秒 1コーラス |
6分26秒 2コーラス |
各ステージ・補足
TM NETWORKがこの年に解散、そのメンバーであった小室哲哉は本格的にプロデュース業メインの活動になりました。trfはいわゆるTKファミリーの代表、J-POP界に革命を起こした存在に相応しくトップバッターとして登場します。構成はラストサビ以降カットで、それまでは間奏もカット無しのフルコーラス。2番は冒頭サビと全く同じ歌詞構成での歌唱、ラストサビに繋ぐメロディーで演奏終了という流れでした。
一方の白組も電子音中心のサウンド、後にこちらもプロデューサーとして名を馳せる浅倉大介が所属していたaccess。6枚リリースされたシングルから選ばれた歌唱曲は、10月発売の「SCANDALOUS BLUE」でした。2コーラス歌唱ですが、間奏は本来2番の後に入る分が1番の後に移動の上後半カットという形になっています。終わり方はフェイドアウトから変更。観客席からはファンの大歓声が聴こえますが、年が変わった翌日に活動休止発表するとは誰も想像しなかったのではないかと感じます。
紅組は2組続けて小室哲哉プロデュース、「恋しさと せつなさと 心強さと」が大ヒットした篠原涼子です。冒頭サビを歌った後セクシーな衣装に早替え、そこから間奏無しの1コーラス半歌唱。1番Aメロで一瞬マイクオフになるハプニングがありました。翌年も「もっと もっと…」がヒットしますが、下半期以降TKプロデュースから外れたこともあって意外な不出場。ただそれより驚いたのは28年後に同じ曲で再出場。そしてもう一つ想定外だったのは、再出場より当時の方が僅かに演奏時間が長いことでした。
第42回以降ダンサーとして出演していたTOKIOは、この年バンドスタイルでデビューかつ歌手として初出場。「LOVE YOU ONLY」をパワフルに演奏します。イントロとアウトロはカット気味でしたが間奏はフル、歌は2番Aメロカット。ただデビュー曲初出場で3分7秒というのは、2分台前半が連発しているここ最近の初出場よりもずっと良い待遇のように感じます。
前回のトップバッター久宝留理子は2年続けてヒット、「早くしてよ」をTHE THRILLの大迫力演奏をバックに歌います。2回目の間奏とラストサビ2回目がカット、元々がやや短いので演奏時間も少し短めでした。
山根康広の「Get Along Together」はピアノを弾きながらのステージ、原曲ともリメイク版とも異なるオリジナル性高めのアレンジでした。音源よりも高いキー設定、弦楽器が入るアレンジ、ラストでためる編曲、冒頭と終わりで白黒になる映像演出。歌詞は1回目のサビが前半1番後半2番の構成。素晴らしいステージでした。言うまでもなく大ヒット曲で当時の結婚式定番ソングですが、それだけにもう少し現代でも歌われて良いのではないかと感じます。
1990年代に入ってコンスタントに10万枚のCDセールスを記録した長保有紀は、この年に売上が評価される形で初出場。”演歌だね”のフレーズが耳に残る「惚の字傘」を歌います。短い間奏で早替え演出があったものの、マイクの持ち替えをミスして大失敗。急遽早替え前に着ていた赤い布地をマイクに巻きながら歌うという、珍しい光景が繰り広げられました。歌は1番と2番の歌唱です。
「みちのくひとり旅」で東北のイメージが強い山本譲二ですが、この年は琴五郎のペンネームで自作・自身の出身地を題材にした「関門海峡」を歌います。7年ぶりの紅白復帰でした。1番と3番の歌唱、アウトロが紅白仕様にスケールアップしています。
伍代夏子は代表曲、後年でも2度紅白で歌われた「ひとり酒」を歌唱。語感の良さ・艶のある歌声・決して外さない音程としっかり三拍子揃っています。1番と3番の2コーラスでした。
堀内孝雄は例年通り『はぐれ刑事純情派』主題歌、この年は「夢の道草」です。冒頭の音出しタイミングが、先ほどのステージ演奏ラストと若干被りました。1コーラス半扱いになることが多い堀内さんですが、この年はしっかり2コーラス。間奏もしっかり確保されています。(ステージレビュー→紅白歌合戦・堀内孝雄の軌跡)
第1部の中間地点では、紅白歌合戦で初となるディズニーキャラクター総登場。「Mickey Mouse Our Shining Star」に乗せて、東京ディズニーランドのショーを紅白の舞台で再現します。まだこの時は出場歌手の参加は無く、舞台袖で楽しむギャラリーそのものと言った状況でした。曲は2回目のAメロ部分前半がカットされています。
ディズニーショーから間髪入れず登場するのは、白いウィッグと帽子を装着する衣装が印象的な森口博子。Dual Dreamとの共作「Let’s Go」を歌いますが、肝心のバンドメンバーは事前録音のコーラスのみで不参加。CD売上が高くない割に紅白に出場していることをバラエティ番組でいじられ始める頃でしたが、NHKではちょうど『ポップジャム』の司会を担当し始めた時期でした。構成は1コーラス半でラストサビ繰り返しあり、間奏は1番終了後の短い方が採用されています。
SMAPの代表曲は「世界に一つだけの花」までほぼ2年おきに更新される状況でしたが、1994年の時点ではこの紅白でも歌った「がんばりましょう」でした。少年隊と光GENJIがいなくなり、女性ファンの声援が一番多くなったのはやはり彼らです。そろそろ国民的グループになりつつある当時のSMAPでしたが、それを象徴するかのようなフルコーラス歌唱。1番の後に入る間奏だけが、僅かに短くなっています。
この年から『NHK新人歌謡コンテスト』グランプリ特典が紅白出場になりましたが、その第1号が田川寿美。もっとも「女…ひとり旅」は1992年のデビュー曲、正確に言うと新人ではない上に、同年他の賞レースで最優秀新人賞も受賞しています。とは言え当時19歳なので、期待の若手であったことは確かです。出場の経緯が経緯だったので、ここでは2コーラスに満たない1コーラス半歌唱でした。
同じく初出場となった香田晋は「夢いちど」。1番と3番の歌唱で間奏短縮、1コーラスが短い故の2コーラスという印象で演奏時間はかなり短いです。この出場はヒットというより演歌の未来を懸念して若手を抜擢したという意味合いが強いですが、早くも翌年でこういった事例は無くなり元のベテラン実力派重視になりました。香田さんも次の年に発表した「雪次郎鴉」はこの年以上のCDセールスを記録しましたが、残念ながら連続出場ならず。一時期バラエティ番組出演もありましたが、現在は歌手活動を引退します。
中山美穂は自身主演のドラマ主題歌「ただ泣きたくなるの」、ミリオンセラーを記録したバラードです。難度の高い曲ですが、ヒットを考えるとこの選曲になるのは必然。ただステージそのものは、まさにCDを聴いているような感覚という内容でした。構成はテレビサイズの1コーラス半。(ステージレビュー→紅白歌合戦・中山美穂の軌跡)
すっかりシンガーソングライターという趣の藤井フミヤですが、グループ時代から続く観客席からの歓声はまだかなり大きめ。曲はアコースティックギター主体のバラード「DAYS」。2コーラスで6分以上ある長い曲、したがって紅白だと必然的に1コーラス。演奏時間は決して短くないですが、歌番組向けの曲でないこともまた確かでした。(ステージレビュー→紅白歌合戦・藤井フミヤの軌跡)
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