1996年・平成8年はJ-POPの勢力図が大きく変わります。小室哲哉プロデュースのTKファミリーが大躍進、第2部前半の紅組はほぼこれがメインでした。またバンド勢も前年の4組から7組に増加、それ以外のソロアーティストもバンドスタイルのステージが目に見えて多くなります。一方演歌も特に紅組で大胆な人選が増え、同じ1990年代でも前半とは完全に異なる雰囲気に変化しています。
演奏時間&構成表 1(第47回・1996年)
演奏時間・構成は紅白歌合戦で実際に披露したステージを指しています。フル再生時間はSpotifyの音源基準、オリジナル未配信曲は手持ちのCDからインポートしたiTunes音源を基準としています。
曲順 | 楽曲 | アーティスト | 演奏時間 構成 | フル再生時間 構成 |
1(白1) 白前半1 | ガッツだぜ!! | ウルフルズ | 3分23秒 冒頭+2コーラス | 3分59秒 冒頭+2コーラス半 |
2(紅1) 紅前半1 | そばかす | JUDY AND MARY | 2分56秒 2コーラス | 4分15秒 2コーラス+サビ |
3(白2) 白前半2 | 大人になれば | 小沢健二 | 3分12秒 2コーラス | 4分41秒 2コーラス |
4(紅2) 紅前半2 | 夢見る少女じゃいられない | 相川七瀬 | 2分35秒 1コーラス+サビ | 4分18秒 2コーラス+サビ |
5(白3) 白前半3 | ありがとう…勇気 | TOKIO | 2分59秒 冒頭+1コーラス半 | 4分25秒 冒頭+2コーラス半 |
6(紅3) 紅前半3 | 女の漁歌 | 門倉有希 | 2分41秒 1コーラス半 | 4分33秒 2コーラス半 |
7(白4) 白前半4 | カサブランカ・グッバイ | 鳥羽一郎 | 2分37秒 2コーラス | 4分56秒 3コーラス |
8(紅4) 紅前半4 | ヨコハマ・シルエット | 長山洋子 | 2分50秒 2コーラス | 3分23秒 2コーラス半 |
9(白5) 白前半5 | ミッドナイト・シャッフル | 近藤真彦 | 3分23秒 1コーラス半 | 4分44秒 2コーラス半 |
10(紅5) 紅前半5 | LEGEND OF WIND | TRF | 3分27秒 1コーラス半 | 5分51秒 2コーラス半 |
11(紅6) 紅前半6 | 人生そこそこ七十点 | 中村美律子 | 2分55秒 2コーラス | 4分18秒 2コーラス半 |
12(白6) 白前半6 | エレジー~哀酒歌~ | 吉 幾三 | 3分21秒 2コーラス | 5分9秒 3コーラス+サビ |
13(紅7) 紅前半7 | そうだよ | DREAMS COME TRUE | 4分46秒 冒頭+1コーラス半+ラスト | 4分50秒 1コーラス半+ラスト |
14(白7) 白前半7 | 夢で逢えたら | RATS & STAR | 3分33秒 冒頭+2コーラス半+サビ | 4分9秒 冒頭+2コーラス半+サビ |
15(紅8) 紅前半8 | ララ サンシャイン | 森高千里 | 3分31秒 冒頭+2コーラス半 | 3分40秒 冒頭+2コーラス半 |
16(白8) 白前半8 | 2億4千万の瞳 | 郷ひろみ | 3分46秒 2コーラス | 4分4秒 2コーラス |
各ステージ・補足
トップバッターのウルフルズは「ガッツだぜ!!」を完全生演奏。冒頭から1番2番と移行しますが、2番歌い出しは”ハメたい”から”ホレたい”に変更されています。2番Bメロから3番サビ移行後、MVとライブでお馴染みの気絶パフォーマンス約10秒。その後ライブさながらのアウトロ演奏が約1分、ギターソロのあるアレンジはシングルよりアウトロの長いアルバムバージョンに近いです。そのためシングルバージョンは3分42秒ですが、表はよりアウトロの長いアルバムバージョン3分59秒を原曲としました。(ステージレビュー→紅白歌合戦・バンド出場歌手の歴史)
一方の紅組もJUDY AND MARYの「そばかす」、非常にパワフルなオープニングです。2コーラス目はCメロに近いサビではなく、2番後半のサビにそのまま飛ぶ構成でした。『るろうに剣心』のOPテーマとしてもお馴染みの曲ですが、例のごとくアニメのタイトルには一言も触れられていません。(ステージレビュー→紅白歌合戦・バンド出場歌手の歴史)
ジャズバンド風の演奏をバックに歌われるのは小沢健二「大人になれば」。かなり大幅なテンポアップの上、半音上がるタイミングが少し速めです(原曲2番Aメロ後半→ステージ2番Aメロ最初から)。間奏こそ大幅カットでしたが、歌は最後の繰り返し1回分のみのカットでほぼフルコーラス。歌だけでなく、弦楽器・ベース・ドラムの音も聴き心地の良いステージでした。
初出場の相川七瀬はこの年ヒット曲連発で大ブレイクの年でした。バンドメンバーの演奏をバックに、デビュー曲「夢見る少女じゃいられない」を大迫力のパフォーマンス。1コーラス+サビのテレビサイズ歌唱でした。大ヒットは翌年も継続ですがスケジュールの都合で辞退、紅白出場も今のところこの年のみなのは残念の一語に尽きます。
ウルトラマンファミリーと怪獣のバトルが繰り広げられた後、TOKIOが「ありがとう…勇気」を歌唱。1コーラス半、ラストを”白組Go! Go!”と歌うパフォーマンスでした。なおここまで5組連続バンドスタイルのステージ、これは紅白始まって以来初の出来事です。
演歌のトップバッターは『NHK新人歌謡コンテスト』優勝の門倉有希。当時デビュー3年目でした。1コーラスの長さとキャリアを加味して、構成は2コーラスではなく1コーラス半。今のところ1回のみの出場ですが、「ノラ」「J」といった曲がこの後にヒットしています。
鳥羽一郎はいつもの漁師演歌ではなく、有線中心にヒットした大人の歌謡曲「カサブランカ・グッバイ」を披露。1番と3番、アウトロやや短めでした。バックで紳士姿のSMAPがパフォーマンス。(ステージレビュー→紅白歌合戦・鳥羽一郎の軌跡)
長山洋子の「ヨコハマ・シルエット」も貴婦人姿の紅組歌手5名が後ろでダンス、SMAPと人数を合わせてきました。「捨てられて」の流れを汲む色気のある振付つき歌謡曲ですが、全曲集には収録されていないことも多いです。2コーラス歌唱。
近藤真彦が8年ぶりに紅白カムバック、大ヒットした「ミッドナイト・シャッフル」を歌います。SMAPの曲紹介に始まり、KinKi Kidsがサビの部分を46秒パフォーマンス。ステージはバンドスタイル、かつての同志・野村義男がギター演奏で参加。かなりの豪華共演でした。歌はテレビサイズの1コーラス半。大迫力のステージですが、一箇所歌詞を間違えるハプニングもありました。
一方のTRFは12月に発売されたばかりのバラード「LEGEND OF WIND」。1コーラス半歌唱ですが、1番Aメロは3/4のサイズになっています。ラストの英語詞も繰り返しかなり少なめですが、元々6分近い曲なので演奏時間はそれなりにちゃんと確保されています。
連続テレビ小説『ふたりっ子』出演者が小林幸子と美川憲一を巻き込んだマジックパフォーマンス。ちょうどこの当時は大好評放送中、ちょっとした番宣後のステージは花柳社中が賑やかな中村美律子「人生そこそこ七十点」。『のど自慢』合格の鐘の音が曲中に入るユニークな曲を2コーラス歌います。
吉幾三はおみっちゃんと全く真逆のマイナー調演歌です。ひと昔前に「俺ら東京さ行ぐだ」を歌っていたとは思えない真っ暗スポットライト演出、2コーラス目でまた涙で歌えなくなりそうになっています。1番と2番の歌唱ですが、2番ラストは3番のフレーズを歌唱。歌詞テロップは2番表示ですが、間違いかあえてなのかは判断がやや難しいでしょうか。
DREAMS COME TRUEは前年までのメガヒットがなくシングル発売もこの年1作のみ、歌唱曲はそのシングル表題曲「そうだよ」でした。イントロ前にサビのアカペラあり、それ以降はフェイドアウトからの変更を除いて完全フルコーラス。カラオケで歌うにはあまりにも難しい楽曲を、当時日本最高峰のボーカルで聴かせてくれました。
この年再結成のRATS & STAR、1980年代に何度も紅白に出場していてもおかしくないグループでしたが初出場はこの年。再結成を飾るカバーシングル「夢で逢えたら」を歌います。冒頭からフェイドアウトのアウトロを除いて完全フルコーラス、ラストサビの田代さんによるセリフは紅白版の内容になっていました。(ステージレビュー→紅白歌合戦・バンド出場歌手の歴史)
森高千里は『めざましテレビ』でお馴染みの「ララ サンシャイン」、風船に乗ったピエロの大道芸が後ろで繰り広げられる賑やかなステージでした。2コーラス歌唱と思いきや、その後のパートも含まれる完全フルコーラス。当時の音楽番組でフルを歌う機会があまり無く、本人も完全に勘違い。思いっきり驚いた表情で歌い直すハプニングがありました。
郷ひろみは12年ぶりの「2億4千万の瞳」、この年リリースのベストアルバム『THE GREATEST HITS OF HIROMI GO VOL.III ~SELECTION~』で新録のアレンジで歌います。近年の紅白で多い全員集合パフォーマンスとは異なるアーティスティックなステージ、ジャケットプレイもまだ過剰にクローズアップされていません。億千万!とコールするイントロ・アウトロこそ若干短めですが、2番も含むフルコーラス構成。これが他の年と異なる大きな輝きを放っています。
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