紅白歌合戦・加山雄三の軌跡~司会&応援編(後編)~

 第37回(1986年)までについては、こちらの記事を参照してください。

第38回(1987年)…白組司会

オープニング

 前回は白組キャプテンとして千田正穂アナの補助がつく形でしたが、この回は単独で白組司会。紅組司会もこの年から『歌のトップテン』司会、『アッコにおまかせ!』も定着し始めた和田アキ子が相手になりました。冒頭はその2人が登場してご挨拶。

「さあアッコ、覚悟はいいかな?」
「お兄ちゃんこそ、大丈夫ですか?」
「大丈夫さー。それでは、いってみようか?」
「いきましょう!」

 2人が握手して、緞帳が開くと既に出場歌手は舞台に集合しています。両軍司会者が紹介された後にあいうえお順で歌手紹介、アッコさんと若大将はそれぞれ1組ずつ全歌手と握手。選手宣誓もこの2人が担当。

「宣誓!」
「私たちは元気に真剣に、そして明るく堂々と」
「勝利の栄冠を目指して、力いっぱい戦うことを誓います」
「昭和六十二年十二月三十一日、紅組代表・和田アキ子!」
「白組代表・加山雄三!」

この年はハプニングも特に無く順調に

 トップバッターは歴代紅白でも異例のベテラン演歌対決。紅組が八代亜紀で白組が森進一

「それでは白組から参りたいと思います。森さん、トップバッターとして心を込めて歌ってください。お願い致します」
「今年が一つの区切りの年。森進一さんは不惑の年を迎えました。新しい年には父親になります。第38回紅白歌合戦、トップバッターとして心を込めて歌ってください。森進一さん「悲しいけれど」。」

 前回イントロでの曲紹介は千田正穂アナが担当していましたが、この回以降は若大将が曲紹介全体を担当。プロンプターは勿論ADが目の前にカンペを出すことも無かった時代、森さんが歌い始める前の引きの映像でポケットからメモを取り出して読む姿が確認できます。

 2番手は7年ぶり復帰となった布施明。本人と少し話した後に曲紹介。やや不自然な話の切り方は、もしかするとスタッフの指示があったのかもしれません。
「さあ、布施明さんです。さんというより君でいいな。もう20年以上もつき合いあるもんね」
「そして今は、あの時希望に燃えて見つめていた海の向こうにあなたの家族がいて、そしてあなたの大きな夢が…。頑張っていこう!布施明くん、「そして今は」!」

 3番手は「無錫旅情」で初出場の尾形大作「さあ、初出場の尾形大作さんです」「今夜あなたが歌う無錫旅情というの、無錫というのは中国の街でしょ?行ってらっしゃったんでしょ?」「なんかこの曲向こうで大ヒットだそうですね」
「(50万本の売上に)凄いですね~。実はその、無錫市長さんからですね、電報が来てましてね。これ今読まして頂きますけども。「尾形大作さんが無錫旅情という中国人民友好を称えた曲を歌われることを聞き、無錫市民を代表して心からお祝い申し上げます。無錫市長、ゴ・トウカン」」「それではその「無錫旅情」、力いっぱい歌ってください!(握手)」
「(イントロ)中国を旅して悠久三千年の時の流れに感動して、よーし、俺もスケールの大きい歌手になるぞ!そう心に誓ったそうです。尾形大作さん、「無錫旅情」!」

 この年は全体的にシンプルな演出、慌ただしさもあった前年までと比べると番組全体がゆったりした雰囲気です。そのためスケールの大きい若大将の司会ぶりがよく合っています。

 全国から来場した一般審査員の紹介後、「さて、九州代表の審査員の皆さん、九州が生んだヒーローの登場です。よろしくお願い致します。見事な照明にもご注目頂きたいと思います。チェッカーズ!「I Love you, SAYONARA」!」こちらはイントロでの喋り無し、アーティストと曲名の呼び上げにかなり力を入れています。

 続く稲垣潤一のステージも歌前トークあり。「稲垣さんは、趣味はカーレースだって?」「レースのスタート前の気持ちと、今これから歌を歌う前の気持ちと、なにか大事な共通点みたいなものはありますか?」「(どちらも集中力が大事という答えに)いいなァ!それでは、その集中力で、頑張ってください!「思い出のビーチクラブ」、稲垣潤一さん!」アッコさんも含めてこの年は台本にかなり忠実な進行ですが、”いいなァ”というリアクションに若大将らしさを感じる部分もあります。

 山本譲二が歌う前に『にこにこぷん』の余興あり。「かわいいねぇ。そのうちあなたのお子さんも、じゃじゃ丸のファンになるんじゃないかな」「それじゃ心を込めて力いっぱい、山本譲二さん、歌ってください!」
「(イントロ)今年3月、父親になりました。生まれた時は小さかった赤ちゃんも、今やすくすく健康に育っています。父親になって初めての大晦日、娘のために歌える喜び。力を込めて山本譲二さん、「夜叉のように」。」

 吉幾三の曲紹介。「今年、東京から故郷青森に引っ越したそうです。息子を自分が育った環境と同じところで育てたい」(なぜかYes, I doと英語で答えた後)「素晴らしい自然の中で育てたい、ねえ。そういう心でもって引っ越したそうですけども。これはね、最高だよ吉くんその心。(サンキューベリーマッチと返答した後)その調子で、頑張って!」テンポの良いやり取りが歌前に入りました。
「(イントロ)彼が生まれた故郷に建てた家は、今頃真っ白な雪に包まれてることでしょう。津軽海峡に近い故郷です。吉幾三さん、「海峡」。」

 中間審査(白組有利)と、白組でオチをつけまくる連想ゲームの後に新沼謙治とやり取り。足を引っ張ってた人にクレームを入れる新沼さんですが、「いやしかしね、白組のベンチはね、笑いが絶えない方がいいと思ってさ」「締める所はピシッと締めるさ白組は」と大人の対応。そのまま「今年ノリにノッているこの人、近藤真彦さんです!」と曲紹介に移行します。
「(イントロ)今年のマッチはこの曲で数々の賞を受賞しました。またひとつ大きく成長しました。近藤真彦さん、曲は「愚か者」です!」なお直前に受賞した日本レコード大賞のアナウンスは無しでした。

 白組マッチの次は、司会者自ら「海、その愛」を歌うステージです。これについてはステージ編で記載済なので省略。その衣装のまま10組目は竜童組。前半はここまで、ハプニングらしいハプニングは特にありません。吉幾三とのやり取りを掲載しますが、対抗心むき出しで悪口まで言う吉さんと比べると若大将の紳士っぷりが目立ちます。

加山「ダウン・タウン・ブギウギ・バンドのですね、宇崎竜童さんが竜童組で帰ってきました」
吉「いいですね。加山さんも作曲しますけども、私も作曲します。宇崎竜童さんもたくさんの曲を書いています。あの足の大きい和田アキ子がですね、曲をもらってるんですよ。とんでもない、あの和田が」
加山「いやだからもうね、紅組の皆さんにも絶対応援してもらいたいですね」
吉「それはそうですね、バーっとですね」
加山「竜童組は祭りがテーマでしてね。「八木節イントロデュース」、是非とも会場の皆さんもですね、一緒にバッバッと掛け声を合わせて頂きたいと思うんですけども」
吉「いいですね。盛り上がりますね。これで白勝ちですね。あの和田の、ハハハハ」
加山「それは言わない!応援してもらうんだから。竜童組!」

後半も至って順調、自虐する余裕もあり

 前半終了後、若大将は珍しくピンク色のタキシードを着用。アッコさんと一緒に応援合戦を紹介。白組先攻から紅組先攻に切り替わり、後半トップで歌うのは韓国から初出場のチョー・ヨンピル
「白組としては初めて、外国から強力な助っ人をお迎えしました。チョー・ヨンピルさんです」「こないだ加山雄三ショーでもってお話をお伺いしましたらね、チョー・ヨンピルさんは韓国の民謡でもって喉を鍛える、そしてビートルズに影響を受けて歌手になられたそうです」「それではチョー・ヨンピルさんお願いします。「窓の外の女」」歌唱前は、コンサートで共演歴のある谷村新司もトークに参加していました。

 さてこの次は、前年曲紹介で大失態を犯した少年隊「少年隊を紹介する時は、ちょっと緊張しますね。ハハハハハ」と冒頭で思いっきり自虐。とは言えこの後は特に問題なく、2年連続失敗にはなりませんでした。「ここ2, 3年、日本でもすごいミュージカルブームですけれども、その中で日本のミュージカルをと、頑張っているのが少年隊です。彼らには本物の光があります。少年隊、「君だけに」!」

 シャンソンの金子由香利歌唱後、「感情の表現が細やかで素晴らしいと思いました」と感想を述べる若大将。セット転換の繋ぎで審査員の若尾文子にコメントを求めた後は沢田研二の登場。「この方は毎年のように楽しませてくれます。今年はどんなステージを見せてくれるのでしょうか。沢田研二さん、「チャンス」!」

 2回目の中間審査では紅組有利なので「うーわー」と嘆く若大将。以降は常連の演歌中心なのでテンポ良く進みます。

「村田さんが歌謡界にデビューした年に生まれたお嬢さんが、つい先日結婚なさいました。さすがの男・村田もこの時ばかりは花嫁の父として涙したそうです。今年で26回目の紅白出場、村田英雄さん「男の花吹雪」」
「今年はレトロという言葉が流行りました。音楽の世界でもレトロブーム、アルゼンチンタンゴが流行り、オールディーズがよく聴かれた年でした。さて、我々には懐かしく、若い人たちには新鮮なこんな曲も大ヒットしました。「ラ・バンバ」、菅原洋一さんです!」
「チョー・ヨンピルさんは、韓国の民謡で喉を鍛えました。わが細川たかしさんは、日本の民謡で喉を鍛えます。声と拳には絶対の自信を持ってます。本当に歌の上手い人だなと思います。演歌仲間の応援で歌います、「夢暦」」
新沼謙治さんの奥さんは、バトミントンの元・世界チャンピオンです。彼の腕も相当上がったそうです。彼の故郷、大船渡市で1月の3日にバトミントン大会があるそうですが、勿論ご夫婦で出場されます。新沼謙治さん、「津軽恋女」」

アッコさんへの優しさが胸に残る終盤

 紅組司会であるとともに、自身初のトリ歌唱が控えている和田アキ子はラスト3組の時点で既にド緊張。

「ねえアッコ、ちょっと肩の力抜くために深呼吸でもしない?」
「そうですか、是非お願いします」(尋常ではないほどの深い呼吸に)「これがやりたかった本番で」

「すごいねそれ、ちょっと待って(笑いながら)」
「こんな感じ。もうねお兄ちゃん、負けてられないんです。次は紅組、石川さゆりさんです」
「よし、白組も受けて立ちましょう。北島三郎さんですよ!」
「はい、頑張ります!(この後イントロでさゆりさんの曲紹介)」

 2人のトーク内容はあらかた台本で決まっていたと思いますが、深呼吸に関してはこの場の状況で決めた可能性もありそうです。こんな状況でも自ら軌道修正するアッコさんはさすがのプロ根性ですが、さゆりさんの曲紹介はやはり喋りに緊張が隠せない様子でした。サブちゃんの曲紹介はイントロのみ、わけあって2年ぶり復帰ですが何事もなく連続出場してるかのようなアナウンス。
北島三郎さんの目は世界に向いてます。日中友好にも大きな貢献をされました。来年はブラジル移民80周年で力を注ぎます。1つ年をとるごとに、スケールがますます大きくなる方です。人生をとうとうと流れる川に託して歌います、北島三郎さん「川」」。

 トリ前の谷村新司はこの年初出場でした。「サライ」での共演が世に知られていますが、24時間テレビで世に出たのはこの5年後です。
「初出場ながら、待ちに待ったこの方をご紹介したいと思います。どんなジャンルにもこだわらず、自分の世界を確立したい、そんなスケールの大きい方です。谷村新司さん、「昴」!」

 ラスト、紅組トリで歌う和田アキ子の曲紹介も若大将が担当します。両方のトリ紹介を1人で担当するケースは、第20回(1969年)~第23回(1972年)の宮田輝以来15年ぶり2人目でした。

「さあ、紅組で歌う方はあと1人になりました。僕が紹介させて頂きたいと思います。早いもので、彼女がデビューして来年で20年になります。子どもの頃から毎日欠かさず日記をつけていて、もう何十冊にもなったそうです。今年の日記の最後のページ、どんなふうに書くんですか?アッコ。和田アキ子さん、「抱擁」です。」

 舞台袖で待つアッコさんの方を向き、舞台中央で待って直接声をかけます。「今日は素晴らしかった。よく頑張った!心から拍手を贈りたいと思います。頑張ってどうぞ」。その姿は歌手以上に前に出るような司会者と全く違う、紳士的な優しさに満ち溢れていました。歌うアッコさんも、それに応えるかのような大熱唱で紅組を締めくくります。

 大トリは白組、「1987年という年がこの曲とともに去っていきます。このひとときに皆さんにとって今年一番大きかった出来事を思い起こしてみてください。五木さんにとっては今年は非常に大きな年でした。念願のニューヨーク・リンカーンセンターで歌ったこの曲「追憶」。五木ひろしさんです!」。1987年を代表する大ヒット曲ですが、レコ大でも紅白でも大晦日は引き立て役に徹する形になってしまいました。ステージは既にこちらの記事でも書いた通り素晴らしい内容です。

 最終結果も紅組の優勝でした。アッコさんが優勝旗を受け取る前に若大将と握手。敗れた形になりましたが、コメントは「本当に素晴らしかったですよアッコはね。来年は皆さんにとって素晴らしい年になるように心からお祈りします。そして皆さん、ご覧頂いたことを心から感謝いたします。本当にありがとうございました。アッコおめでとう!」。涙が溢れるアッコさんの目を若大将が指で拭き、思わず寄りかかるラストも非常に印象的でした。

第39回(1988年)…白組司会

オープニング

 林英哲の和太鼓独奏後に両司会登場。前年の司会ぶりが好評ということもあって、和田アキ子とともに2年連続続投という形になりました。

「どうです、この素晴らしい太鼓の響き。まさに男の迫力そのものじゃないですか」
「そうですか?私には情熱的な女性の胸のときめきに聴こえますけども」

「そうですかねぇ。まあしかしいよいよまたこの瞬間がやって来ましたね」
「よろしくお願いします」「どうぞよろしくお願いします」

(2人で挨拶しながら)「よろしくお願いします」

 この回は1階席両端の扉から出場歌手が入場、風船で飾りつけがされています。一人ずつ握手したりハイタッチしたりして、登場する歌手を出迎えます。

 選手宣誓はこの年初出場・トップバッターの中山美穂光GENJIが担当。紅組が全員ソロ歌手なのに対して白組はグループが多く、番組内で何度もアッコさんに文句を言われます。最初から「選手宣誓をグループでやるんですか?なんか白組は数で来そうですね!」と攻撃しますが、「いやそうじゃないよ、チームワークの勝負なんです」となだめる加山さん。20年以上経った現在はむしろ紅組の方が人数勝負になっている状況ですが…。

アイドルと団体が続出した前半戦

 1988年は光GENJIが尋常ではないほどヒットした年なので、会場にいる女性ファンの声援が凄まじいことになっています。曲紹介は他の白組出場歌手も加わり、テンションも高めでした。前回無かったレコ大受賞のアナウンスもあり、当日の観客にとっては初めて知るニュースなのでさらに会場のボルテージが上がります。
「レコード大賞に輝いた光GENJI、これは今年芸能界の最大の話題でしたね。ねえ、光GENJIのヒット曲知ってますか?」
「(細川たかし)知ってます、知ってます、レコード大賞なんと、あのパラダイス銀河」「(藤井郁弥)剣の舞」「(尾形大作)Diamondハリケーン」「(サンプラザ中野)ガラスの十代」
「じゃあ今日はそれ全部やっちゃえ!「光GENJI ’88メドレー」!」

 2番手は例のごとく少年隊ですが、さすがに3回目となると落ち着いたものです。「さて、ニッキ・ヒガシ・カッちゃんの3人の登場です。今年は時代劇やミュージカルなどで、それぞれの活躍が目立った少年隊です。そのステージぶりも非常に磨きがかかってきました。魅力的になりました。お願いしましょう。「じれったいね」、少年隊!」

 2組ずつ終了後、地方審査員紹介のため両司会とも舞台に登場。その後、18歳で初出場を果たした工藤静香の曲紹介にも同伴。彼女のかわいさと、それをアピールするアッコさんの押しの強さにタジタジ、次の曲紹介で登場した吉幾三「何ニタニタニタニタしてるんですか」と怒られます。

 男闘呼組の紹介は「男の中の男」という触れ込みで、細川たかし新沼謙治サンプラザ中野がステージに向かいますが「違うよ君たちじゃないの」と止めます。「よーし、いくぞー!」と言った所で「はい、なんでございましょう」と返事する吉幾三、テンポの良い軽妙なやり取りですがウケはゼロ。と言うより声援が目立ってこんなやり取り誰も聴いていないのではないかという雰囲気です。「「DAYBREAK」、初出場・男闘呼組!」、内容自体はとてもシンプル。

 前年と違ってアッコさんの台本はやけに攻撃的で、「いつから紅白歌合戦は団体競技になったんですか?」「群れをなさないと紅組に勝てないんですね」とグループが続く白組を挑発。そんなわけで白組は近藤真彦のステージ、「今年の締めくくりにビシッと決めてください」と直接メッセージを伝えます。「やり始めたらとことんやる、それが近藤真彦さんのポリシーです。男らしいですね。それではいきましょう、「グッと」、近藤真彦さんです」。曲名から”あぁ”が抜けた紹介でした。なおマッチの対戦相手は中森明菜、後年の立場どころか翌年の大晦日から見ても色々考えさせられることの多い曲紹介の文面です。

 この年の前半5組は完全に同じジャンルで固めた曲順です。ラストはチェッカーズ。歌前のやり取りは過去の記事で紹介しましたが、また後から見ると何とも言えないことになっています。「21世紀まであと12年。その時我々はいったい何をしているでしょうか。21世紀に向けて、チェッカーズも頑張ります。「素直にI’m Sorry」!」

格段の進歩ぶりを魅せる白組司会の進行

 5組終了後に上海雑技団のミニコーナー、少年隊光GENJIのメンバーが紹介を担当します。その後に坂本冬美が歌うので10分間裏で待機、その間に青いスーツからグレーのタキシードに交換。電報を読み上げます。「はるかベーリング海沖でスケトウダラ漁に取り組む第五十八寅丸より。細川たかし頑張れ、白組頑張れ!現在地・北緯五十六度東経173度、基本零下15度。第五十八寅丸乗組員より。細川たかしさんが歌います、「北緯五十度」!」

 初出場の堀内孝雄は、曲紹介にアリス時代の仲間・谷村新司も同伴。谷村さんがメッセージを送った後、「堀内孝雄さんで「ガキの頃のように」。頑張ってください」とシンプルな曲紹介。ちなみにステージに出る直前、緊張を和らげるため背中に指先で文字を書き、おまじないのようなことをしてくれたことにとても感謝をしているという話を後に『紅白50年』のインタビューで堀内さんがしています。

 新沼謙治さんは今年、全日本バトミントンシニアでベスト16まで勝ち進みました。コーチはもちろん元チャンピオンの奥さんです。夫婦同じ趣味を持つということは最高ですね。新沼謙治さん「さよなら橋」」、新沼さんの曲紹介は、2年続けて歌と全く関係のないバトミントンのエピソードでした。続く吉幾三は53連勝を達成した審査員・千代の富士関のコメント(美酒を4回味わったという内容)を受けてのステージ。「吉幾三さん、今年もまた素晴らしい曲を作りました。彼のメロディー・彼の歌声は何よりも温かみがあります、深味があります。「酒よ」、吉幾三さんです」。

 余興を挟み、紅組の岸千恵子が歌うゆさぶり民謡には若大将も衝撃を受けた様子。「画面からはみ出してたじゃないですか」と思わず口にしています。爆風スランプはボーカル・サンプラザ中野とのトークあり。「あの岸千恵子さんってさ、ちょうどあなた方のお母さんのジェネレーションじゃないですかねぇ」「あのエネルギーに負けないでやれますよね」とのトークに、「もろ!あ、いや、もちろん!」と返す中野さん。「もろ、ね」と笑顔で流しつつ、スタンバイ後は「爆風スランプのステージはいつも熱狂的です。今日はどんなステージになるでしょうか。爆風スランプ「RUNNER」!」としっかり曲紹介。「星に願いを」を歌うコーラスグループのタイム・ファイブは、日本ジャズボーカル賞に輝いたという実績をしっかり話します。

 TM NETWORKは歌前トーク無し、1人でじっくり曲紹介。「もう1組、若い世代には圧倒的な人気のある初出場のグループをご紹介させて頂きます。TM NETWORKの皆さんです。エレクトロニクスの使い方・視覚的効果、どれを取っても80年代後半のトップを突っ走るグループ。そして来年は更に世界に飛躍をしようという素晴らしいステージをじっくりとご覧頂きたいと思います。「COME ON EVERYBODY ’88 FINAL MEGA-MIX」、TM NETWORK!」。横文字が多い上に文章もやや長い司会者としての山場でしたが、見事に言い切りました。もっともこの次に自身が歌う「マイ・ウェイ」は全編英語詞、そもそも英語が堪能な若大将にとっては意外に大した負担ではなかったかもしれません(なおステージはこちらで掲載)。

司会者としては2勝1敗の結果に

 若大将の熱唱後に、観客席に配られたハンカチで中間審査。画面ではどちらとも取れる状況ですが、アッコさんは紅組が多いことをひたすら猛アピール。最初は「わからんな、こりゃ」と言っていた若大将も、さすがに「赤は目立つからじゃないの」とちょっと呆れています。島倉千代子のステージ以降は後半戦、特に後攻の白組はイントロのみの曲紹介が多くなります。

「韓国の文化に世界に歌うチョー・ヨンピルさんにとって、今年最大の喜びは何と言ってもソウルオリンピックの大成功でした。今夜歌う曲は彼自身が発掘した、古い韓国民謡です。「恨五百年」、チョー・ヨンピルさんです!」
「(「さあ、頑張ってください」と握手後)上京して8年目、今年始めて故郷福岡で開いたコンサート。地元のファンの皆さんが感激してくれました。初心に帰って力いっぱい歌います。尾形大作さん、「いやんなっちゃうなァ」」
「(「鳥羽さん、幸せいっぱいで頑張ってください!」と握手後)鳥羽一郎さんにとって今年は忘れられない年になりました。結婚、そして長男の誕生と続きました。そしてこの曲は今年NHKのど自慢で一番たくさん歌われた歌です。「男の港」、鳥羽一郎さんです!」

 タンゴの菅原洋一は、歌前トークでデビュー30年目とその当時から憧れのスタープレイヤーと演奏することをアナウンス。「セステート・タンゴの皆さんの伴奏で、「ラ・クンパルシータ」、菅原洋一さんです!」

 続く森進一は演歌なので普通にイントロ曲紹介。「森進一さんです。父親になりました。そして21回目の紅白の舞台で初めて自分で作曲した曲を歌います。「京都去りがたし」、今夜の京都は比較的穏やかな年の瀬を迎えています。森進一さんです!」「苦労を重ねた長い下積み時代がありました。やがて日本を代表する歌手になってからもひたすら走り続けてきました。そして今年見事に築いた素晴らしい家庭。さらにさらに大きくなれ。五木ひろしさん「港の五番町」」「谷村新司さんは、今年ロンドン交響楽団をバックにレコーディングをしました。その時日本語の素晴らしさを再認識したそうです。これからも日本語を大切に歌っていきたいと、そう思っています。谷村新司さん「群青」です」。立て続けのステージが続く終盤、いよいよラストです。

「昭和63年という年が、あと20分あまりで過ぎ去ろうとしています。この忘れられない年、最後の歌を、最後に歌うのはこの方、北島三郎さんです!」
「北島さんの歌の舞台は大自然。そして、テーマは人生です。この地球の緑の自然を守りたい、そんな願いからこの歌が作られました。優しい心で力強く歌います。「年輪」、北島三郎さんです!」

 昭和63年の最後を飾るステージは、結果的に昭和の紅白ラストとなりました。したがって、昭和の紅白歌合戦で最後に曲紹介した司会として加山さんの名前も刻まれる形になっています。

 お互いそれぞれの組を抱える歌手のために勝ちたいと話す最終審査。加山さんが自らアッコさんの手を繋いで一緒に前に出ます。カゴの中に入ったボールを投げる形の結果発表、優勝は白組でした。前列にいる白組歌手とハイタッチして、喜びを分かち合います。

「本当に幸せだなぁという感じです。それにしても、本当に初出場の方々がね、本当に頑張って頂いたし、ベテランの方々も頑張りました。何よりも皆さんに心から感謝いたします。ありがとうございました!」晴れやかで爽やかな笑顔でコメントします。ラストは細川たかしに優勝旗を渡し、白組歌手が陣取る舞台上手側を往復する演出でした。

 第37回での進行は大変危ういものがありましたが、番組演出や紳士的な人柄もあってその後の2回は本来の持ち味がとてもよく出た内容でした。どうしても1つのミスが繰り返し強調されるのは致し方ない所ですが、その後2回の温かい司会ぶりももう少し振り返られて良いのではないでしょうか。

第48回(1997年)

 個別の場面で目立った箇所はあまりないですが、全員が登場する演出には笑顔で参加しています。T.M.Revolutionのステージで白いハンカチを振る場面、シャ乱Qの曲紹介で中居正広に年寄り扱いされて彼を叱るさだまさしをなだめる場面、南こうせつが歌う後ろでタンバリンを鳴らす場面などが見られました。中居さんの頑張りもあって白組優勝、決定の瞬間横にいた森進一と握手する場面もあります。

 

第50回(1999年)

 この年は全員合唱で「21世紀の君たちへ~A Song for Children~」を歌うコーナーがあります。場面ごとに前列後列が入れ替わる立ち位置ですが、加山さんはモーニング娘。のメンバーと一緒にこの曲を歌いました。

 堺正章中居正広和田アキ子松たか子と歴代司会が歌手として勢ぞろいした記念紅白。白組司会を担当した中村勘九郎に、「今年の白組は最高ですよ。本当にそう思う」とエールを贈ります。またスポーツヒーローショーでは、当時競泳で活躍していた田島寧子選手をエスコートしています。

第51回(2000年)

 この年8月11日に初孫が誕生したという若大将。「孫」の大泉逸郎が歌う前に、シドニー五輪で銀メダルを獲得したソフトボールチームと一緒に登場します(彼女たちの紹介も担当)。「初孫めんこいですよ」とコメントしていました。その大泉さんとは、後半に設けられた民謡歌合戦の企画で隣同士の立ち位置です。

 全員合唱「上を向いて歩こう」では、松田聖子とマイクを共用して一緒に歌っています。

 

第52回(2001年)

 翌年の日韓共催ワールドカップを記念してショーコーナーが作られましたが、こちらに参加。アフリカをテーマにしたショーで、民族衣装を着ながら太鼓を叩いています。サングラスをしている若大将は、紅白歌合戦だとこの時のみしか見られないレアな扮装でした。

 

第61回(2010年)

 この年は後半最初が「歌の力」全員合唱です。2番ラストのパートを、かつて紅白司会でコンビを組んだ和田アキ子と担当。自身のステージもアッコさんとの出場歌手参加メドレー対決となっています。ちなみに近年も2人で『徹子の部屋』ゲストに登場するなど、親交は紅白の司会以前からかなり深いようでした。

 

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