紅白歌合戦の歌手について書く記事も多くなりましたが、司会については今回が初めてになります。過去に美空ひばりの記事を書いたこともありますが、第21回(1970年)の紅組司会は本編全体が確認できない状況なので割愛しました(データ編・ステージ編)。
今回は第37回(1986年)の加山雄三の司会について、本番中の流れ全体をまとめる記事を作っています。合わせてそれ以外の紅白における、歌以外の出演シーンも振り返ります。第37回だけで随分な長さになりましたので、第38回以降の司会と第48回以降については次回の記事でまとめることにしました。
第37回(1986年)…白組キャプテン
オープニング
歌唱順に紅白各1組ずつ入場するオープニング。キャプテンとしての相手は斉藤由貴ですが、最初は歌手としての対戦相手である松田聖子と一緒に13番目の登場。「究極の青春キャプテン・加山雄三さん!」と千田正穂アナが紹介します。
全歌手入場後、アナウンサーの司会担当があらためてキャプテンを紹介。「我々白組も心を一つにして、今年こそは勝たせて頂きたいと思っています。全国の皆さん白組をよろしくお願いいたします」とご挨拶。
審査方法と特別審査員の紹介後、選手宣誓も斉藤由貴と一緒に担当。ちなみに若大将が選手宣誓を担当するのは、第28回以来9年ぶり2回目でした。
「宣誓!」
「私たちは明るく、そして真剣に」
「楽しく、そして堂々と」
「勝利の栄冠を目指して戦うことを誓います」
「昭和六十一年十二月三十一日、白組代表・加山雄三!」
「紅組代表・斉藤由貴!」
その後すぐに、紅組先攻でトップバッター・荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー」のステージに入ります。
最初の曲紹介から大ハプニング
白組のトップバッターは少年隊。当ホームページでも繰り返し書いている仮面ライダー事件です。既に記事にしていますが、あらためて再掲。
「さあ、若さには若さで、白組のトップバッターは少年隊。オイ、張り切って行こうぜ!紅白初出場、少年隊、仮面ライダーです!」
観客の歓声が音に乗っていないので会場の反応は分かりませんが、この間違いに全視聴者が「えっ?」となったのではないかと思われます。ただ紅組側でこのハプニングを回収することはなく、苦節22年で初登場の大月みやこが歌った後に本人が自ら釈明。
加山「いやー、千田さん、僕がちょっと勢い良すぎました、どうもすみませんでした」
千田「どうも失礼いたしました。少年隊は「仮面舞踏会」でございました、失礼いたしました」
謝罪後はすぐに切り替えて、この年2年ぶりの紅白復帰となった新沼謙治を紹介。紅白復帰と結婚を本人に直接祝福します。なおこの年は歌前のやり取りをキャプテン、イントロでアナウンサーが曲紹介する台本でした。
その後の進行もなかなか危うく…
両組の演奏担当を紹介後、松田聖子と村田英雄を交えた4人でのやり取り。紅組最大のアイドルと熟年パワー、小泉今日子と三波春夫のステージを紹介します。三波先生の曲紹介は「さあ、白組の熟年軍団のトップを切って三波春夫さんがおおいに聴かせます。さあ、北前船…「あゝ北前船」です」という具合で、こちらでも危うくタイトルを間違えそうな所でした。向こうのキャプテン・斉藤由貴も目の前の進行にいっぱいいっぱいの上、曲紹介のセリフを飛ばす場面もあったので初っ端から大変な状況です。だからこそ両アナウンサーの補助があったわけですが…。
そんなキャプテン・斉藤由貴のステージには朝ドラから温かい応援が入ります。一方対戦相手の吉幾三には青森県からの中継応援。中継を引き取った後、突然津軽弁でエールを贈る若大将には「急に訛ってどうしたんですか」とツッコミを入れられます。故郷の温かさを若大将なりに演出していますが、伝わったかどうかは…。「感情をね、本当に率直に表現出来る吉幾三くん、歌います「雪國」です」と紹介してステージに送り出す若大将、さらに千田アナがイントロで曲紹介。初出場の感動で涙を浮かべながら熱唱、歌い終わった後に千昌夫と抱擁する場面も印象的でした。
謎のコメントが連発する前半戦
4組終了後、はやくも第1回の中間審査。さらに北海道・占冠と松山・道後温泉から中継が入ります。この年は全国8箇所の100人が会場ごとに審査する形式を取っていて、インタビューもそれぞれ設けられていました。それを受けてキャプテン同士のやり取りが小柳ルミ子と田原俊彦の対決前に用意されます。
「さあ、どうですか。いま北海道、すべて真っっっ白な銀世界でしたね」
「いやーでも、あのー、皆さんのほっぺたがかわいらしく、あかーくなってましたよねー(思わず笑い)」
「そうですかー?アハハハハ…」
どちらも日本を代表する名優ですが、実に微笑ましいやり取りです。1970年代や1980年代前半のテンポの良い、あるいはバチバチの対決モードとはまるで違う雰囲気でした。
連続してのステージなので、田原俊彦の曲紹介は担当しません。中森明菜を経て、次の沢田研二の紹介も「さあ我らがジュリーの登場です。白組に勝利の女神が微笑みますように。歌うは「女神」です」という簡単な内容でカメラには映っていません。
6組終了後、両キャプテン含めた出場歌手がトレーニングウェアの衣装で登場。先ほど画面に映っていなかったのはこういった事情があるわけですが、ここで「紅白サバイバルゲーム」たるミニコーナーが開催。じゃんけんをして負けた方が直径55センチの狭い台に乗り、乗り切れなくなって台から落ちると上にある風船が割れるという、歌番組とは思えない企画です。
両キャプテンがトップバッターですが、ここで若大将が紅組歌手相手にじゃんけん4連勝。これがものを言ってゲームは白組の勝利でした。かなり体力を使ったようで、「負けて悔しいですねこれはちょっと」と話す斉藤さんは息があがっています。もっともこれに対する若大将の返答は「勝って嬉しい花いちもんめですけども」…。そのまま「すごくいい歌」という名目で、テレサ・テン「時の流れに身をまかせ」を曲紹介する斉藤さん。「もうこうなったら紅組はここで大きく、差をつけさせて頂きますから」のコメントに、「態度でっかくなりましたねー」と返すセリフもなかなか味があります。
前半終了、ここまでの感想は…
テレサ・テンの対戦相手は山川豊。「初出場おめでとう、白組期待かかってるからね。山川豊さん、「ときめきワルツ」!」と直接握手して声をかけます。字面にすると温かい名場面ですが、実は”初出場”が言えてなかったり”山川”を言い直している所がまた微笑ましい所でありまして…。もっとも滑舌がうまくいかない部分は、研ナオコを紹介する向こうのキャプテンも同様でした。
シブがき隊の曲紹介は、勢い良く登場する3人に「行ってこい!」と男らしく声をかけています。五輪真弓を経て、「熱き心に」を歌う小林旭は往年の名優のツーショット。曲紹介の内容はノーマルでしたが、この2人が同じテレビ画面に映っているというだけで価値があるというものです(ちなみに1960年代は五社協定の存在で、日活と東宝で所属が異なる映画での共演は無しでした)。
というわけで、各9組ずつ終了した所で中間審査&中継。広島県・宮島からの中継でマイクを向けられた10代と思わしき少年が、ここまでの感想を非常に素直にまとめています。「仮面ライダー」もそうですが、じっくり見返すと「両方ともどっこいどっこい」という一言も大変趣深いものがあります。
両方ともどっこいどっこいだと思いますけど、加山雄三さんの仮面ライダーは点が高いと思います。(第37回・広島の一般審査員)
— 昭和の紅白名言集 (@kouhakumeigen1) November 18, 2021
後半戦も謎演出にハプニングが盛り沢山
後半は攻守交代で白組先攻。この年身内に不幸があった近藤真彦の曲紹介は、彼が尊敬しているという小林旭がエールを贈ります。「その勢いで頑張って、いけーー!」というアキラさんの語尾の伸ばしも、妙に個性があります。
河合奈保子のステージを経て、大川栄策の曲紹介で突然大きな若大将の顔の被り物をしたキャラクターが登場。
偽物「僕が司会をやれば、もう紅組には大きな顔はさせないよ」
本物「そりゃそうだ。こんなに大きな顔他にもいないもんね」
偽物「皆さん、白組は演歌の宝刀を出しましょう」
本物「聴いてくださいましたか。伝家の宝刀を洒落てるつもりなんですよ」。
被り物はおそらくどこかの番組から流用した物と思われますが、説明不足もあって全くの不明です。衣装から見るに白組歌手の誰かが着用している可能性も高いですが、こちらも実際の所は分かりません。
川中美幸のステージは普通ですが、菅原洋一でマイクに音が入らないハプニング発生。次の和田アキ子でも途中から歌詞テロップが出ず、キャプテンや演出だけでなくスタッフもグダグダです。若大将は菅原さんの曲紹介後、タキシード姿から裃姿に着替えて歌舞伎スタイルのご挨拶。その後出場歌手が勧進帳や道成寺を演じている間にまた着替えて、自らのステージに臨みます(その様子はこちらで掲載)。
白タキシード着用で臨んだ紅白歌合戦のキャプテンですが、ステージは黒タキシードの衣装でした。そのまま次の角川博の紹介からキャプテンの仕事に復帰。色々あって多少時間が押しているのでしょうか、角川博とチェッカーズの曲紹介で喋る場面はほぼ歌手名と曲名のみになってきます。
最終結果は白組の勝利
残り各5組は演歌メインということで立て続け。「さあ、いよいよ最後の山場に差し掛かってきましたけど」という冒頭のセリフも、総合司会が攻守交代をアナウンスする前に先走って喋っています。「4年連続勝とうと、そうはいきませんよ」という情報も間違えていて、前年・前々年は紅組勝利でしたが3年前の第34回は白組の勝利でした。
「おじいちゃんおばあちゃんには人気が圧倒的です」(千昌夫)、「明るくとても気分のいい男」(細川たかし)、「さあ白組はやはり男の歌で勝負します」(村田英雄)、「全国の五木ファンのお待たせしました。五木さんは今年はこの歌で勝負です」(五木ひろし)。終盤は歌手名と曲名以外のセリフはこれだけで、他の情報は完全に千田アナ任せでした。トリ前の両キャプテンによるやり取り後、大トリの森進一も「今年の紅白歌合戦、歌い納めはこの方です!」の一言のみです。
この年の結果発表はボール投げではなくスクリーンでグラフ表示という形式、意外と最近の紅白に近い形式です。8箇所の一般投票は紅優勢の地域の方が多かったですが、吉幾三のお膝元・青森県黒石では15対85いう大差で白優勢。結果は674vs825で白組優勝、その瞬間飛び上がって大喜び。「やりました!ありがとうございました皆さん本当に頑張ってくれました!」と早口で嬉しそうに話します。
これ以前の白組司会が宮田輝→山川静夫→鈴木健二という歴代のNHKでも伝説級のアナウンサーだったので、おそらく放送前は相当懸念されていたと思われていますが、実際の所は果たしてどうだったのでしょうか。ただハプニング多数も不思議と好感を持てる内容だったのは確かで、そこが次年度の連続起用に繋がった部分もありそうです。振り返ると、第64回(2013年)で紅組司会を務めた綾瀬はるかに近い愛らしさがあったと考えて良いのかもしれません。
第17回(1966年)
第17回は歌手総出のシーンが非常に少なく、歌手応援席もテレビ画面に映らない場所にあるため歌唱シーン以外で目立つ場面はほとんどありません。唯一目立っていたのは後半で村田英雄が歌う前に客席から曲紹介するシーン。司会の宮田輝や舟木一夫とともに登場、白いハチマキを巻いて「白組のために是非ご声援お願いします!」と、メガホンを使った大声で呼びかけています。
第27回(1976年)
紅組2番手で登場したのは海をテーマにした、西川峰子「峰子とマドロスさん」。船長姿で歌う峰子さんに、間奏で草刈正雄と一緒にペンダントとブーケをプレゼント。わざわざこの場面だけのために、船乗りをイメージした白黒縞模様のシャツに着替えています。
紅組歌手がコーラスやダンスで応援する桜田淳子「夏にご用心」に対抗して(ステージはこちら)、白組歌手も郷ひろみ「あなたがいたから僕がいた」で簡単なダンス応援。西城秀樹や布施明などが白いセーター姿で応援しますが、一緒に参加している若大将はなぜかタキシード姿のまま。もしかすると当日飛び入りで参加という形だったのかもしれません。紅組白組ともに出場歌手総出の応援ステージがこの年は多く、あおい輝彦のステージにも参加しています。ただ殿さまキングスのマンボダンスは不参加の様子でした。
第28回(1977年)
司会者やキャプテンの担当が多いオープニングの選手宣誓ですが、この年は森昌子と若大将が担当。昌子さんも後に第36回(1985年)で、紅組司会を担当します。ちなみにこの年の昌子さん、昭和52年を32年と言い間違えていました。
特筆すべき場面は少ないですが、前半で空手道着の姿で応援するシーンがありました。三波春夫・村田英雄・三橋美智也の大ベテランが演舞を披露、三橋さんの「ウォンテッド!」という渾身?のボケにズッコケています。
ステージで歌う前にアグネス・ラムからレイをプレゼントされたのは既に書いた通りですが、その後黒タキシードから白タキシードに着替えてからもレイは首にかけたままでした。ただエンディングまでには外した様子です。
第29回(1978年)
冒頭、トップバッター・郷ひろみが応援する際に掛け声がなぜかマイクオンになっています。ゴーゴーヒロミ!と大声で声援する声が思いっきり入っていました(名言集にて紹介済)。
ニューミュージックの初出場が続くステージで、ツイストが演奏する前に先輩歌手のちょっとしたスピーチが設けられます。
「昔ツイストが流行った頃、僕はよく遠くの海へ出ていた。今でもツイストと聞くと、その頃の海を思い出す。これから歌うツイストも青春そのもの。爽やかな若者たち、彼らのようにいつまでも青春そのものでいられたら、こんなに幸せなことはないと思う。」
ゆっくりと丁寧に話す若大将。ただ事前の予定より長かったのでしょうか、次に庄野真代が歌う前に話す予定だった和田アキ子にはカメラこそ向けられたものの、即座に隣にいた紅組司会・森光子の曲紹介が始まって丸々カットされてしまいました。
この年は対戦カードごとにプラカードが作られ、直前に歌った歌手が司会者の隣でそれを掲げる進行になっています。もっともこれは映ったり映らなかったり協力しない人もいたりで全く一貫性なかったですが、次の新沼謙治が歌う前にしっかりプラカードを持つ所が若大将のノリの良さです。
第30回(1979年)
基本的に紅白では白か黒のタキシードが多数ですが、応援合戦に参加する際は意外な衣装を身につけることもあります。この年の白組の演目は御諏訪太鼓、肩を露出した黒シャツ姿の若大将が大きな太鼓を叩く場面が見られます。またこの年は珍しく、紺色のタキシードが主体となっていました。
第32回(1981年)
デュエットショーで石川さゆりとペアになり、都はるみ・田原俊彦も加わった「銀座の恋の物語」を歌うシーンが設けられました。さゆりさんにマイクを向ける若大将の姿が非常に絵になる名シーンです。
三波春夫や村田英雄にフランク永井といった大ベテランにもおかしな格好を応援でさせていた当時の紅白ですが、さすがに若大将は二枚目俳優としての側面もあるのでそういった場面は少なめでした。前年にあったはばたけ鳥軍団とかシェイプアップ体操とか、そんなことはいくら当時のスタッフでも止めようという話になったものと思われます(もっともこんなオファーがあっても二つ返事で引き受けそうなのが若大将の良さでもありますが…)。
第33回(1982年)
紅白お揃いのブレザーでランダムに登場するオープニングは河合奈保子と一緒に登場。絵になるツーショット、総合司会の生方恵一アナには「このカップルは理想のパパに甘えるかわいらしい現代娘といった所でしょうか」と紹介されました。
前年に続いて設けられたデュエットコーナーは森昌子とペア。「二人でお酒を」を、石川さゆり・中村雅俊も交えて一緒に歌います。爽やかです。あとついでという感じで、紅白玉合戦というミニゲームでもジャージ姿で参加している場面が映っています。ただ、「旅笠道中」などを踊ったり殺陣を披露したりする白組歌手全員参加の応援合戦は不参加でした。
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