2024.9.23 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in Hitachinaka 最終日

ライブレポ

 国内4大フェスの1つであるROCK IN JAPAN FESTIVAL、その第1回が茨城県国営ひたち海浜公園で開催されたのは2000年8月12日・13日のこと。全16組・1ステージ制2日間開催で始まったロッキンは2019年に20年目を迎えましたが、その後コロナ禍やそれに伴う医師会からの要請で中止・会場変更を余儀無くされました。2022年以降は千葉県蘇我スポーツ公園での開催が恒例になりましたが、25回目のアニバーサリーイヤーを迎える今回はひたちなかと合わせて10日間開催。その最終日、9月23日に見たステージをレビューします。

 日によっては当日券も出るという売れ具合でしたが最終日23日だけは特別で、抽選倍率は極めて高く5万人キャパに対して数十万の応募がありました(オフィシャルXより)。その要因は言うまでもなくサザンオールスターズによる”最後の夏フェス”と銘打っての出演発表、1次抽選を前にしてのことだったため余計に応募が殺到。サザンの歴史において夏フェス出演も重要な位置を占めていて、(詳しくはふじもとさんのnote記事を参照)それは一人でも多くのファンにその勇姿を見て欲しいという思いを込めたものだったかもしれません。

 個人的には元々どのラインナップでも最終日に足を運ぶ予定にはしていましたが、結果的にはサザン以外も全く見逃せない超豪華な顔ぶれ。というわけで全ステージ、しっかりレビューすることにします。

 

朝礼

 長年朝の挨拶は渋谷陽一氏が担当していましたが、病気療養もあって今年3月でRO社の社長を退任。今年のJAPAN JAMからは海津亮氏がJフェス総合プロデューサーを担当しています。

 25周年、8月と合わせて10日間開催の最後は地元・ひたちなか出身のスタッフを呼び込む展開になりました。2023年入社の女性、ちょうどロッキンが始まった2000年に生まれた方のようです。市報ひたちなかでインタビューも受けたそうで、その記事も大きな映像で紹介されます(webからも閲覧可能)。社長とのやり取りはなんだか面談みたいな印象で、質問された方も緊張したのではないかと思いますが、そつ無くハキハキと答えていました。彼女の話によると初めてロッキンに参戦したのは2013年、思い出に残ったのは2017年、B’zの裏で頑張っていた岡崎体育のステージとのこと。そのセンスに会場から歓声、これが入社の決め手になった可能性もありそうです。

 ロッキン25周年とともにひたちなか市制30周年、全体的には地元との繋がりを中心に話していました。また、海津さんの話は幾分穏やかな印象もありました。渋谷さんの体調回復はもちろん願うですが、アーティストだけでなく運営も世代交代が進んでいることをあらためて実感。30年後はもしかするとまさに今回海津さんと話したスタッフが朝礼を担当している可能性もありますが、どうなるでしょうか。

 

ヤバイTシャツ屋さん (2016年初出演)

 自分がヤバTのステージを生で見るのは2017年レディクレ以来。あの時は少し後の別ステージにB’zという超大物が控えていましたが、今回はサザンオールスターズというレジェンド中のレジェンドと同日。当時はメジャーデビューして間もない頃、「あつまれ!パーティーピーポー」で締めるのが定石だったのではないかと思われますが、結成10周年の今は1曲目に持っていくセトリになっています。かなり走り気味のテンポに聴こえましたが、マスコットキャラクター・タンクトップくんが登場するアニメーション映像との動きにズレはありません。この辺りはさすがにプロフェッショナル、7年近く大きなステージでの演奏を続けられる大きな理由になっています。

 「Tank-top of the world」「メロコアバンドのアルバムの3曲目くらいによく収録されている感じの曲」、最初の3曲はインディーズ時代から演奏されている定番。メロコアで全員座らせてジャンプさせるというノリは今も健在でした。「前で最後の曲です!」「(今は)ももクロの待機中です」と相変わらずふざけきったMCの後は、ラジオで桑田さんに絶賛されたと自分から話す「癒着☆NIGHT」。ただビジョンに流れる歌詞と合わせてみると、この韻の踏み方・フレーズのセンスの良さは確かに桑田さんと共通する部分がかなりあるように見えます。

 勝田駅の近くにあったジャスコに捧げますと称して演奏された「J.U.S.C.O.」。新曲という体で進行していますが、実際は2020年のアルバム『You need the Tank-top』収録曲。そもそも勝田のジャスコの閉店は2010年なので相当前の話、JUSCOのロゴがボヤけるアニメーションが大変にシュールでした。ただこの次の「すこ。」は本当に新曲です。「Tank-top Festival 2019」ではラストに「勝手にシンドバッド」を歌う場面あり、これはご丁寧にこやまさんのXにも掲載されています。現場では勝手に歌った可能性高いですが、おそらく後で許可を貰ったのではないかと思われます。

 ヤバTは大阪芸術大学の軽音サークルで作られたバンドですが、サザンも青山学院大学で結成。自らおこがましいですがと話しつつ、同じサークルバンドであることを説明。したがって偉大な大先輩・サザンに続きたい…という熱いMCを繰り広げた後に「サークルバンドに光を」。思いがけなく感動的な場面になりました。

 「無線LANばり便利」でWi-Fiの偉大さを力説、相変わらずカップル向けかと思いきや全くもってそうではない曲第1位「ハッピーウェディング前ソング」、税金が高いことを高らかに歌う「NO MONEY DANCE」。笑いとバカバカしさが勝っているのであまりそうは聴こえませんが、よく考えると風刺が効いている歌詞も元はと言えばサザンの得意分野。サークルバンドという点以外も、共通点は思いのほか多いです。ラストは「かわE」で締めました。

 終盤のMCでは、大きいステージに立ち続けることの難しさも熱く語っていました。同時に、その難しさをあくまでポジティブに考えているところがヤバTらしさであるようにも感じました。確かにひたちなかのロッキン単位で考えても、大きなステージから小さいステージに移動したアーティストは山のようにいます。果たして彼らの場合はどうなるでしょうか。ただ志摩スペイン村ワンマンの成功、他にはない個性ということを考えると、どこかのタイミングで大バズリして目標である紅白歌合戦出場にまで至っても不思議でないような気はしています。

ももいろクローバーZ (2017年初出演)

 JAPAN JAM 2024で見たももクロはどちらかというと新しい曲メイン、ブレイク当時とは異なる魅力を見せつけていましたが、今回前半はなんとメドレーを20分ノンストップ。「労働讃歌」「サラバ、愛しき悲しみたちよ」「DNA狂詩曲」「ココ☆ナツ」「泣いてもいいんだよ」「笑一笑 シャオイーシャオ!」「ニッポン笑顔百景」「Chai Maxx」「MONONOFU NIPPON」、最後の曲以外は全て長年モノノフに愛されている定番中の定番。後ろに控えるメンバーも相変わらず超豪華で、ギターはお馴染みマーティ・フリードマン。ベースとドラムはYOASOBIのサポートメンバーで、ステージだけでなく音の面から見ても半端ないレベルの高さです。

 初めて見る人が多いことを予期して、4人とも丁寧な口上で自己紹介。しっかり年齢もサバ読みすることなく公表しています。あーりんが28歳というのを”まだ”と捉えるか”もう”と捉えるかは意見分かれるところですが、彼女が15歳の誕生日を迎えた日に拝見した西宮ガーデンズのイベントはいよいよ遠い昔になりつつあります。20分くらい茶番を繰り広げた後で8曲も披露したことに驚愕したものですが、13年経った今でも激しい振り付けの曲をノンストップぶっ続けで出来るのは凄いとしか言いようがありません。

 後半はフルサイズで「レナセールセレナーデ」「MOON PRIDE」「BLAST!」「行くぜっ!怪盗少女 -ZZ ver.-」の4曲。新曲の「レナセールセレナーデ」以外はこちらも動きの多い曲でした。さすがにバク転やえびぞりジャンプは腰の負担もあって難しいようですが、縦横無尽に端から端まで運動量は非常に多いです。

 ただならぬ本気度、2012年に初めて見た時からずっと凄まじい内容のライブを見せつけていますが、今回はこれまで見た中でも一番でした。完全にライブアイドルとして不動の地位を築いていますが、あとはどれだけ長く見られるかでしょうか。10年以上前に描いた未来がまさに現在だと思っていますが、今度はまた新しく10年先のももクロを想像するフェーズに入っているのかもしれません。

緑黄色社会 (2018年初出演)

 昨年はなかなかフェスで見られなくてやきもきしていましたが、今年はスキマフェスジャイガに続いて3回目の遭遇。本来見に行く予定だった日の蘇我ロッキンにも出演予定あり、狙っていないのにこれだけ被ることは過去にありません。とは言え彼女たちのステージは何度見ても良いものです。ただ超鉄板曲の「Mela!」が最初に演奏されたのは少し驚きました。

 「merry-go-round」「始まりの歌」のMC、まずはオーディエンスと一緒に水分補給の乾杯。昨年のサマソニ以来miletYOASOBIと立て続けに見ている光景、もしかするとソニー系列の同年代女性アーティスト間で共有されている事項なのかもしれません。

 続いては配信開始したばかりの新曲「僕らはいきものだから」を披露。本番中に言及はありませんでしたが、Nコン課題曲のタイアップがあります。内容はリョクシャカ史上もっとも歌い上げるタイプのバラードで、鬼束ちひろやSuperflyがここで歌っていた時のことを思い出させるパフォーマンスでした。名曲も名曲、15年前の「YELL」を初めて聴いた時を思い出します。タイトルももしかすると、そのリスペクトを込めた部分もあるかもしれません。

 今年の夏フェス出演は今日が最後、というわけで夏も今日で終わり。そんなMCを経て聴く「サマータイムシンデレラ」は、曲の儚さが季節の終わりと非常にマッチしていました。「Shout Baby」はお馴染みの定番曲、長屋さんのアカペラが今日も広い青空に響き渡っています。会場の広さに感激していましたが、緑黄色社会は今回がGRASS STAGE初出演。縦だけで無く横にも無限に広がっているのが他との違い、これは映像で見た上の個人的見解です。

 「キャラクター」も定番曲ですが、そういえばここまで見た2回では選曲されていませんでした。それだけフェスに持っていける曲が多くなったことを示しています。あとはこの夏フェスにおける核となった「恥ずかしいか青春は」、そして「花になって」。ロッキンの緑黄色社会もやはり圧巻、来年以降も1つでも多くこの人たちのステージを見たいです。

Creepy Nuts (2017年初出演)

 昨年はビバラで彼らのステージを拝見。ここ数年の時点で既に各ロックフェスで欠かせないアーティストになっていますが、今年は何と言っても2024年ブッチギリNo.1、日本どころか世界中で聴かれているヒット曲があります。いわゆる現在における最重要アーティスト、したがって後方にいても”前に詰めてください”というアナウンスが何度も係員から入ります。

 ステージは「ビリケン」からスタート。直後のMCでもアピールしていましたが、ステージ上は完全にマイクとDJブースだけ。映像のアニメーションも他と比べれば抑えめで(というより結果的に目がいかなかった部分もありますが)、確かにコストパフォーマンスは抜群。口先と指先だけでここまで来たと話すR-指定の話には100%納得できます。「堕天」「2way nice guy」と続くパフォーマンスは極めてレベル高く、ジャンルとしての進化を感じずにはいられませんでした。国内でラップグループが多くブレイクしたのは20年ほど前ですが、その当時でもここまでラップ・DJともにプレイが人間業ではないと思わせたミュージシャンはいません。

 ”拳を上げろ” “タオルを回せ” ”声を出せ” などアーティストによってはノリの強要にも解釈できるコールですが、R-指定は「ガイド役」と説明しています。つまりノるも自由ノらないも自由、動きが揃って無くても楽しめていればそれでOK。懐の大きさは全ミュージシャンでトップクラス、垣根が高いと思われるヒップホップにおいてこれほど掴まれるMCは他にありません。一通り喋って、綺麗にオチのように繋げる曲紹介はヒップホップというよりもはや落語、思わず”うまい” ”座布団一枚!”と叫びたくなるような流れの良さです。

 今年の代表曲「Bling-Bang-Bang-Born」からこれまでの代表曲「のびしろ」に至るまでの流れは圧巻も圧巻、動きもコールも見事なくらい揃っています。後半は「かつて天才だった俺たちへ」「よふかしのうた」と人気の高いアゲ曲連発、「のびしろ」もそうですが「よふかしのうた」の前フリもまた”フェスで興奮しっぱなしで夜ふかしして…”の流れから綺麗に繋がる形でした。最後は「二度寝」で締め、見終わった後も興奮冷めやらない状況です。

 これまで自分が行ったロッキンのGRASS STAGEは2009年のSuperflyと2019年のMrs. GREEN APPLEがベストアクトですが、今回はそれと同等もしくはそれ以上の内容。5年前にレビューした言葉をそのまま借りると、まさに「時代を創るアーティストだけが出来るライブ」。昨年サマソニで見たYOASOBIもそうですが、後々まで語り草に出来る伝説のステージでした。

 

WANIMA (2015年初出演)

 WANIMAもフェスで2度ステージを体験していますが、生で見たのは2019年メトロック大阪が最後。久々に見るとボーカル・KENTAの髪型が大きく変わっていて、金髪ショートヘアの風貌はEXILE ATSUSHIに近いルックス。とは言え「いいから」「オドルヨル」「THANX」、懐かしい曲と彼が話す通り定番曲の魅力は変わることありません。大きな声ではっきりと歌うボーカル、激しい演奏以上に歌詞・言葉を大事にするバンドであることも再認識できます。

 挨拶とともに熱く説得力のあるMC、ただその直後に「眩光」の出だしを間違えるというオチもつきました。「眩光」「夏暁」、最新曲「Rolling Days」のビジョンは歌詞テロップがメインの内容。ポジティブな表現が目立つ平成末期と比べると、様々な紆余曲折があっていきついた言葉という印象もあって説得力があります。”自分たちの音楽が頼りになるならいくらでも頼って”という言葉には、頼もしさが備わっていました。

 最後はかなり時間が押していたようで、ラストの代表曲「ともに」の演奏は心なしか押し気味。”早く撤収して!” ”急げ!急げ!”と音を鳴らしながら舞台袖にはけていく光景はなかなかのレアさです。そういえば個人的には過去に見た2回、直後に別のアーティストを見るためにステージが終わってすぐの移動でした。その逆パターンを見せられるとは、さすがに想像していませんでしたがなかなか因果なものを感じます。

THE YELLOW MONKEY (2000年初出演)

 この日の目玉は個人的にも対外的にもサザンオールスターズで間違いはありませんが、それと同じくらい楽しみだったのがTHE YELLOW MONKEYのステージ。2016年に再結成されたとは言え、コロナ禍や吉井さんの療養による活動休止もあってライブ再開は昨年12月28日になってから。数少ない第1回・ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2000出演者、5日間見渡しても他はエレファントカシマシのみです。

 ”楽園にいきましょう”の号令を元に、最初に演奏されるのは1996年発表の名曲「楽園」。その次に披露されるのも同じ年にヒットした「SPARK」。個人的にはリアルタイムで何百回と聴いたような曲なので、歌詞レベルまで脳に染み付いています。おそらくGRASS STAGEでもそういった方が多かったのでしょうか、吉井さんがマイクを向けるたびに大合唱のコールが巻き起こります。

 2000年、2016年に出させて頂いたと挨拶、”今日はプチヒット曲ばかりやります”との言葉に会場が沸いた後、「BURN」の演奏が始まります。タイトル通り炎の吹き上がる演出が入りました。ビジョンに歌詞テロップの表示はありませんが、自分にとっては全く関係のないことです。その後も超定番かつ超名曲「太陽が燃えている」、プチヒットどころか大ヒット曲ばかり演奏されている状況です。

 今回はなんとサザンオールスターズの直前を任されているということで、それにまつわる話を披露します。なんと吉井さんが人生で初めてカバーしたのがサザンで、当時中学生。演奏した曲は「いとしのエリー」「チャコの海岸物語」「勝手にシンドバッド」など、1982年までのシングル曲が並びます。既に還暦超えのメンバーが出ているレジェンドがさらに上のレジェンドを語る展開、全国各地のフェスに足を運んでいますがまるで見たことのない光景です。そんなサザンの影響を受けたかもしれない曲として次に演奏されたのはかの有名な「JAM」。喉の病気でかなりの長期間活動休止となりましたが、そうとは思えない美しい歌声での熱唱でした。

 要所要所でマイクをオーディエンスに向ける動きを見せていますが、「LOVE LOVE SHOW」では歌い出しでそれを要求。たださすがにそれは難易度高く、周りでも正しく歌えた人は少なめ。2番サビ後半の歌詞を間違える、微笑ましいハプニングもありました。その後のMCは解散直前のロッキン出演、再集結のきっかけ、サザンへの憧れなどを語る熱いMC。”時間薬ってのがあるからさ”と、桑田さんから直接励まされたエピソードもありました。ラストの演奏は「バラ色の日々」、そして「パール」。終わってみれば8曲全てが解散前のヒット曲、リアルタイム世代にとってはこの上ないレベルの神セトリ神ライブでした。

サザンオールスターズ (2005年初出演)

 イエモンのステージが終わると、いよいよスタンディングエリアは立錐の余地がありません。決して前方ではなく真ん中より後ろくらいから見る形になりましたが、そこでもフロントエリアばりの混雑になっています。電波はどの時間帯でもステージが始まる前は通じにくくなるものですが、とりわけここでの待機時間はスムーズな通信と程遠い状況でした。開始予定時間が近づくにつれて大きくなる歓声、最後には手拍子まで巻き起こります。それだけ期待値が高く、特に前方に陣取るファンは興奮している状況です。やがて紹介ムービーが流れて、サポートメンバーに続く形でメンバーも登場。このステージはロッキンのみならず他のフェスでも過去に記憶が無い、全国の映画館でライブビューイングも開催。そのため曲名・歌詞テロップが表示されていて、数多くいるファン以外にも非常に見やすい環境が整っていました。そういえばサザンオールスターズは1990年代のTBSで大晦日の年越しライブが恒例、音楽のみならず会場からのライブ生中継という点でも先駆者であります。

 注目の1曲目は「女呼んでブギ」。1978年の1stアルバム『熱い胸さわぎ』収録曲、調べてみるとメジャーデビューのきっかけになった曲だそうです。ひたすら男の性欲を直接的に描いた歌詞ですが、見事な韻の踏み方をしています。当時はおそらく若さと勢いに任せて書いたのではないかと思われますが、今この歌詞を見るとなんだか時代に反旗を翻すようにも感じるのが時の流れの面白さ。冒頭の軽い挨拶を経て、2曲目は先日配信されたばかりの「ジャンヌ・ダルクによろしく」、曲と曲の間に46年のインターバルが発生しています。

 『ステレオ太陽族』のロック歌謡「My Foreplay Music」、『人気者で行こう』のバラード「海」とアルバムからの人気曲が続きます。曲に合わせた照明も綺麗に鮮やか、メンバーだけでなくロッキン側もこのステージに力を入れていることがよく分かります。その次は21世紀になってからの曲で「神の島遥か国」「栄光の男」、1974年長嶋茂雄引退を題材にした「栄光の男」は、今回で夏フェスを引退する自身を投影しているかのように聴こえます。

 1996年のミリオンヒット「愛の言葉 ~Spiritual Message~」は、原曲をさらに進化したようなアレンジでした。2コーラス以降の展開には鳥肌が立ちましたが、あらためて聴くと発表当時から見ればかなり先進的なアレンジ。1990年代後半のサザンは、他の時期と比べても時代を先読みしたような実験作がシングル表題曲も多い頃でした。

 キラキラしたようなSEが流れた瞬間に大歓声、次はかの有名な名曲「いとしのエリー」。1979年、もう45年前の曲ですが、リアルタイムどころか10代20代でも知っているような楽曲です。これだけ月日も経っているので普通なら声量なりキーなり下がるものですが、現在も当時の声質とさほど変わらないまま楽しむことが出来ます。凄まじい話です。そして「いとしのエリー」の次のシングル、「思い過ごしも恋のうち」が9曲目。ここまで8曲、1曲ごとに”ありがとね~”の挨拶と消灯はあるものの、MC無しでぶっ通し。メンバー全員60代後半で毛ガニさんに至ってはもうすぐ70歳ですが、踊らないとは言えこちらもなかなか容易に出来ることではありません。

 ここでようやくMC、あらためて夏フェス出演は今日が最後であることを話します。とは言えあくまで”夏フェス”が最後ということで、秋に出演することは否定しませんでした。またここで、今日の出演者をひたすら褒める流れに入ります。ヤバTやWANIMA、クリーピーなどを大絶賛。同業者をリスペクトするスタイルもまた、サザンが長く人気を保ち続けている理由の一つです。

 一定のメロディーで声出しを促した後に演奏されるのは「東京VICTORY」。オーオーオーのコールが、そのままイントロでの大合唱に繋がります。花火も上がり始め、ステージ演出がかなり派手になり始めています。その次は超スタンダードナンバー「真夏の果実」、68歳の桑田さんが原曲キーで大熱唱。日本を代表する名曲であるとともに、そのキーの高さでおそらく何百万人がカラオケで撃沈したと思われるあの曲です。さすがに裏声が超綺麗に決まっていたとは言いませんが、そもそもこの年齢にしてこの声量・原曲キーで歌い上げるということ自体が凄まじいことです。

 ここで今回のロッキンを記念した小唄のようなものを披露。ひたちなかに感謝すると同時に、本日の出演者をひたすら持ち上げるスタイル。見る人にとっては即興ですが演奏される以上事前の打ち合わせはあり、しっかり歌詞テロップも対応していました。その次の演奏は今年配信開始の新曲「恋のブギウギナイト」。妙にセクシーな女性ダンサーたちが多数登場、いよいよライブも佳境に入りつつあります。

 「真夏の果実」同様サザン史上でもキーの高い名曲「LOVE AFFAIR ~秘密のデート~」、1998年の大ヒット曲は不倫を題材にしたドラマの主題歌でした。後半はキラーチューン連発ですが、1983年のアルバム曲「マチルダBABY」もその一つ。レーザービーム連発、バックの映像は懐かしいゲーム画面を彷彿とさせるもの。そういえばファミリーコンピュータ、いわゆるファミコンとアルバム『綺麗』の発売日は僅か10日違いのことです。さらに続くは1984年の大ヒット曲「ミス・ブランニュー・デイ」、畳み掛けの次元があまりにも違い過ぎます。

 「みんなのうた」でついに大放水演出突入。4人のスタッフを巻き込み、超長いホースで観客に水を撒き散らします。かなりの重量がありそうで、桑田さんの動きに合わせてスタッフもあちこち走り回る姿に面白味を感じました。最初から最後までこの調子だったので、フロントエリアにいた方々はずぶ濡れになったのではないかと思われます。そしてサザンというよりJ-POP史上もっともとんでもない歌詞で大ヒットした「マンピーのG★SPOT」に突入。変なデザインのカツラを被って、レグがハイなオネーチャンが大量に登場。ただ一番酷かったのは映像で、電動マッサージ器やらバナナやらアワビやらのイラストがひたすらスクロールする光景は開いた口が塞がらない状況です。これを5万人の観客、30万人はいると思われるライブビューイングの観客に見せつけています。こんなことをおおっぴらにやって笑って許される、同時にそれをやる度胸を持ち合わせているミュージシャンは、今の時代だとやはりサザンしかいないわけだと思う光景でありました。

 約2時間、17曲というワンマンライブに近いボリュームですがさらにアンコールがあります。他のアーティストと違い、案外リズム音だけでは次に演奏する曲が想像できない面もありますが、まだ今日聴いていない超定番曲は2つあります。原さんのキーボードに乗せられたメロディーと同時に大歓声、1曲目は前回2018年ロッキンで最初に歌った「希望の轍」でした。そういえばこの年の紅白歌合戦でも2曲歌ったうちの1曲は「希望の轍」、というわけでもう1つ演奏されるのはもちろん「勝手にシンドバッド」。サンバ姿の女性ダンサーが大量に登場します。この日は随所で各出演者を大絶賛、”みんな帰ったよ!”と桑田さんが言ってた一幕もありましたが…。

 やはりそんなわけはなく、桑田さんの呼びかけに応じて一組残らず全員登場。同じサークルバンドのよしみとして?何度も最高!最高!とベタ褒めしていたヤバイTシャツ屋さん、なぜかももクロと言わずクローバーゼット!クローバーゼット!と連呼されていたももいろクローバーZ、「恋のブギウギナイト」直前の口上で後のことは任せたと1組だけ名指しで直々にご指名を受けた緑黄色社会、語感の良さで6組のうち一番連呼されていたような気がするCreepy Nuts、歌の上手さを大絶賛、教えを請いたいとまで言っていたWANIMA、そして気がつけば長年の同志となっているTHE YELLOW MONKEY。凄い面々です。映像で見た2018年紅白歌合戦も凄まじかったですが、会場で直で見る光景は本当にまさしく夢のようでありました。これは見る側だけでなく呼ばれた側もおそらくそうで、まさか桑田さんにマイクを向けられて”ラララララララララ…”と一緒に歌ったりすることは…。デビュー前には想像出来なかったのではないかと思われます。

 アウトロの演奏から、締めの合図を任されたのはなんとイエモンの吉井さんでした。本人驚くも、ジャンプとともに演奏終了。サザンをコピーしていた中学生の頃には考えられない展開です。そして最後の挨拶という大役を任されたのはももクロの玉井詩織。彼女は両親がサザンの大ファン・「栞のテーマ」が名前の由来になったというエピソードがあります。前年に桑田さんから頂いた帽子を被っている彼女、逆に桑田さんがアンコールで着ていたTシャツはももクロのグッズでした。

 演奏中も花火が幾度となく舞っていましたが、記念撮影をして全プログラム終了後あらためて恒例の花火が打ち上がります。5万人がGRASS STAGEに集結した結果、終演からシャトルバスに乗るまで2時間近くかかりましたが、それでもまだ足りないくらいの余韻が残る凄まじい内容でした。この冬に新しいアルバムリリース決定、夏フェス出演は無くともおそらく全国ツアーはやるはず。70近くなってもパフォーマンスは当然のようにトップクラス、サザンの歴史がこの先もまだまだ続くことは間違いありません。

 

まとめ&写真集

 ロッキンに足を運んだのは2008年・2009年・2019年に続いて4回目ですが、今回も忘れられない一日になりました。自分が初めて行ったフェスは2008年のROCK IN JAPAN FESTIVAL、ここでこんな光景を味わえたのはまさしく感無量につきます。

 ただロッキンの醍醐味は広い会場で複数のステージを見られることでもあるように思います。自分が足を運んだ日は超絶豪華な顔ぶれだったので問題無かったですが、それでもゲートをくぐってすぐに見られるLAKE STAGEがフリースペースになっていたのは寂しいの一語に尽きました。蘇我移転して今年で3年、JAPAN JAMで会場には一応足を運びましたが、やはりロッキンはひたちなかでやるからこそロッキンであることは実際に足を運んだからこそ痛感できます。

 観客だけではありません。今回の開催にあたって尽力したひたちなか市を筆頭とするスポンサー、RO社のスタッフにGRASS STAGEに立った演者の面々。その全てが来年以降もここでのロッキン開催を熱望しているように見えました。音楽業界的にはフェス文化発展の歴史の中心的存在として、地域としてはそこを盛り上げてくれるイベントの一端として。来年以降の継続的開催を、個人的には切に願います。

 もっとも風が強く気温も高くなかったため快適だからこそ余計に感じた部分もあり、8月だとやはりこの会場はサマソニ大阪ほどでないとしても酷暑であることは事実。千葉県との関係もあります。来年以降のロッキンがどういった形での開催になるでしょうか。場合によってはブッキングするアーティストの顔ぶれ以上に、大きな注目ポイントになりそうです。

 

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