紅白歌合戦・バンド出場歌手の歴史(飛び道具の多い21世紀初期編)

 紅白バンド史は一旦今回で最終回とします。今回は第54回(2003年)~第57回(2006年)に初出場したバンドについて書きます。J-POPの多様化がより進んだこの時期、紅白歌合戦に登場した方々はいずれもそれ以前に存在しなかったような個性派のオンパレードでした。

 なお第59回(2008年)以降に初出場したバンドについては各年の本編レビューをそれぞれ見て頂くという形にすることをご了承ください。

175R

第54回(2003年)「空に唄えば」

作詞・作曲:SHOGO
前歌手:w-inds.、後藤真希
後歌手:愛内里菜、EXILE
曲紹介:阿部 渉(白組司会)、高山哲哉(白組司会)、はなわ

 2002年~2003年は青春パンク・メロコアバンドが多くブレイクしました。ロードオブメジャー、FLOW、ガガガSP、GOING STEADY、B-DASH…。そんな中で最も人気を集めたのは、「ハッピーライフ」「空に唄えば」が連続してオリコン週間1位を獲得した175Rです。テレビ出演よりもライブ活動優先でコアファンをつかむバンドが多い中、彼らはメディア出演も積極的でジャンル外からの支持も多く集めました。その分紅白に出演した次の年以降の人気低下も早かった印象ですが…。

 序盤・白組2番手の登場なので、司会者の後ろにはまだ歌手が多く集まっています。その中から代表して喋るのは、「佐賀県」がヒットして同年に初出場となったはなわ。九州では早くから有名であることを軽く説明した後、「今日はですね、その熱い175Rの歌を、全国民よ、よーく聴け!」と熱く応援。慣れない大舞台にテンションが完全に過熱状態、横にいた阿部アナが「まあまあまあまあ」と抑えています。そんな阿部さんは、「友と朝が来るまで語り明かしたこともある全ての人に、175R、「空に唄えば」!」と歌詞も取り入れた曲紹介。新しいジャンルの音楽でも、良い意味で楽曲の紹介はこうであるべきとアピールしているかのような名文句でした。

 TシャツにGパン姿というラフな格好で歌います(ドラムスのYOSHIAKIは上にシャツも着用)。紅白歌合戦という単位で考えると極めて安い衣装代ではないかと思われますが、そこには普段のライブ通りのステージを紅白歌合戦でも体現するというメッセージ性が込められているのかもしれません。ボーカル・SHOGOのシャツには”GOING MY WAY”と印字されています。

 ホールは原則着席なのでライブとは全く違う状況、ライブハウスには絶対に足を運ばないであろう年配の方も見られます。そのため内心では相当歌いにくかった面もあるかもしれません。”何にも言わずに こっちを見ている”の歌詞で客席を映すカメラワークは、さすがにちょっと気の毒な印象もありました(数人が手を振る以外は表情も真顔が多め)。とは言えSHOGOさんをはじめとするステージの熱量は非常に高く、バンドの長所が最大限に出ていたことは間違いありません。「Oh! Yeah!」と最後に叫んだ後の拍手は、この年前半の出場歌手と比べても大きめで歓声も挙がるほどでした。

 紅白リングショーに代表される余興の出演はありませんが、中間集計やエンディングには参加しています。前半ラストで森進一長渕剛が共演するステージの前には、九州を代表する白組歌手の1組として登場する場面もありました。

 北九州出身の彼らにとって佐賀県のはなわがいたのはやはり心強かったようで、歌以外の出番は彼と一緒にいる場面が多めです。「蛍の光」では、後ろの方にいたカメラに向かってYOSHIAKIさんが反応するシーンもありました。

女子十二楽坊

第54回(2003年)「自由そして荒城の月」

作曲(「自由」):Santuri Ethem Efendi
作詞・作曲(「荒城の月」):土井晩翠(作詞)・滝廉太郎(作曲)
前歌手:ZONE、さだまさし
後歌手:安室奈美恵、森 進一
曲紹介:武内陶子(総合司会)阿部 渉(白組司会)、膳場貴子(紅組司会)、木村拓哉

 この年7月にリリースされたアルバム『女子十二楽坊 ~Beautiful Energy~』は、ミリオンセラーを記録する大ヒットになりました。『image』『feel』といったイージーリスニング系CDの需要が高まった時期で、「世界に一つだけの花」「地上の星」など日本で大ヒットした曲が収録されているのも話題になりましたが、ここまでヒットするのはレコード会社の内部の方以外予想できなかったような気がします。

 歌のないインストゥルメンタルグループの出場例は、第41回(1990年)のG-クレフステージレビュー)やその翌年のザ・ベンチャーズがあります(ステージレビュー)。紅白でも代表曲となった「自由」「奇跡」、もしくは「川の流れのように」を紅組出場歌手のバックで演奏するなども考えられましたが、蓋を開けるとオペラ歌手・錦織健とのコラボレーションで「自由」と「荒城の月」を演奏するという全く予想外の内容になりました。「荒城の月」は第51回でも披露されたばかりだったので、なおさら驚いた記憶があります。

 紅白合同演出なので、メインの進行は総合司会の武内陶子が担当。この年リリースしたエッセイについて木村拓哉にインタビューをした後、次のステージの内容について説明。出演者についてそれぞれの組担当司会が説明した後、武内アナが曲紹介。「さあそれではその2組の共演で、「自由」、そして、えーーー、「荒城の月」をお聴き頂きます。」この場面に限りませんが、武内アナの喋りはかなり力が入り気味でした。また紹介後、木村さんと一緒に”タオジャガォシンバ”と中国語で声をかける場面もあり、その言葉にメンバー振り向くシーンからカメラが向けられます(申し訳ないですが正確な意味は分からないので、フォロー頂けるとありがたいです)。

 女子十二楽坊は現在も活動していますが、時期ごとにメンバーが違います。細かいメンバーについてはこちらも全くフォロー出来ないことをご了承ください。担当楽器は二胡4名・竹笛2名・琵琶3名・揚琴2名・古筝1名、それぞれのメンバーにアップショットも用意されています。衣装の色は真赤でした。

 1分半ほど演奏した所で、錦織健がせり上がりで登場。おそらく紅白歌合戦以外では披露されていないであろう「荒城の月」もそのまま演奏となります。1901年に日本で発表された唱歌は中国と何ら関わりのない楽曲ですが、音色・雰囲気は楽曲とバッチリ合っていてなかなか見事でした。アイデアの経緯は正直申し上げると分からないですが、結果としては間違いなく上質の内容です。歴代の紅白歌合戦、事前発表で期待できなくとも予想外に良くなるステージも多いですが、このステージはその最たる物と言って良いかもしれません。

 中国在住なので紅白歌合戦自体を知らないメンバーも確実にいたかと思われますが、番組はステージだけでなくオープニング・エンディング・前半ラストの中間集計に至るまでしっかり参加していました。

ORANGE RANGE

第55回(2004年)「ロコローション」

作詞・作曲:Carole King, Gerry Goffin 日本語詞:ORANGE RANGE
前歌手:美川憲一、Every Little Thing
後歌手:島谷ひとみ、氣志團
曲紹介:阿部 渉(白組司会)

 ミクスチャーロックという言葉もいまや日本の音楽シーンにおいて一般的になりましたが、彼らの大ヒットで初めてこの用語を目にした人も多かったのではないでしょうか。Dragon AshやRIZEなど、ジャンルとしては2000年前後から台頭した音楽と考えて良いと思いますが、紅白歌合戦に関して言うと2004年のORANGE RANGEが最初になります。前年の「上海ハニー」でブレイク、この年は「ロコローション」「ミチシルベ~a road home~」が更にヒット。10月発売の「花」に至っては主題歌になった映画も話題になって大ロングセラーを記録しました。

 平成の紅白歌合戦は第42回(1991年)以降中継出演は無しでしたが、第53回(2002年)で既に解禁となっています。メンバーは大晦日地元沖縄・コザの年越しイベントに参加、とは言えNHK側もその年トップクラスのアーティストには何としても出てもらいたいという状況(一連の不祥事報道にSMAP辞退もあって尚更話題の歌手が求められる環境でもありました)。何とか中継出演OKという形になって大晦日を迎えます。

 本番は沖縄県沖縄市空港通り・特設ステージからの中継でした。嘉手納基地の映像も間に挟まれます。「こんばんは!ORANGE RANGEです。えーっとね、いま沖縄市の空港通りという所でライブしてるんですけど、ここは僕たち6人が生まれ育った町で、本当に大切な場所なんです。もう最高ですここでライブが出来て」「今日は会場の外も含めてざっと1万人くらい来てます」、ライブのMCと同時進行でRYOが喋ります。阿部アナの曲紹介を経て演奏開始。「ふるさと沖縄市コザを音楽で活気づけようと、地元の皆さんと協力しての出演です。今年まさにJ-POPの頂点に躍り出た平均年齢20.5歳の6人組。ORANGE RANGE、曲は「ロコローション」!」

 「ロコローション」は元々作詞作曲名義もORANGE RANGE、タイトルを見ても分かる通り1960年代の大ヒット曲「ロコモーション」を明白にオマージュした楽曲です。したがって本来はパクリ・盗作ということ自体が無粋な話ですが、この曲に限らずそういったネット上のバッシングは当時かなり異常なものがありました。この紅白歌合戦で予告なく作詞作曲表記が変更になったので、そちらもネット上で大きな話題となっています。

 ステージはライブハウスさながらの迫力で大盛りあがりでした。特に張り切っていたのは中音ボーカルのHIROKIで、2005の数字がデザインされた眼鏡をかけています。ラストサビではシャツを脱いで、母校山内中学校のランニング姿での歌唱となりました。右手を挙げる際に脇毛を隠しているのも印象的です。間奏ではRYOが会場を盛り上げるMC、中継ですが「NHK紅白歌合戦、白組の為にもまだまだまだまだ盛り上がっていきます!」と喋る一幕もありました。

 歌詞の気品という点ではNHK的にギリギリにも聴こえますが、会場の盛り上げ的にはむしろこれくらい振り切った方が良いのかもしれません。ステージ終了後の余韻は全く無し、中継が終わると同時に次の島谷ひとみ「ANGELOUS -アンジェラス-」の管楽器演奏開始という進行となっています。

 なおこの年のオープニングは、登場ごとに司会者が全歌手を読み上げる演出です。中継出演なのでNHKホールにいるはずがないのですが、「Gacktさん、ORANGE RANGE、TOKIOの皆さん!」としっかりアーティスト名が読み上げられていました。

第57回(2006年)「チャンピオーネ」

作詞・作曲:ORANGE RANGE
前歌手:大塚 愛香西かおり
後歌手:夏川りみ、布施 明
曲紹介:中居正広(白組司会)

 2年前と同様、この年も沖縄からの中継です。ただ場所は野外ステージではなくライブハウス・宜野湾ヒューマンステージです。なお2020年6月をもって残念ながら閉店となりました(TwitterでHIROKIさんの引用ツイートあり)。またワンマンライブの合間ではなく、この紅白歌合戦のためにファンを集めたステージだったということです。

中居「さて今日立たれているステージというのは、思い出深いステージとうかがったんですが?」
RYO「もう1回喋ってもらっていいっすか、なんすか?」
中居「そちらのステージは思い出深いステージとお伺いしたんですよ」
RYO「そうそうそう、インディーズとかの時に何回かライブしたんですけども、すごいねいま久々に立って、ドキドキというよりはワクワクしてますね」
中居「そうですか。そのステージに立って、今いかがですか?」
RYO「あの、ドキドキというよりワクワクしてますね」
中居「なんか非常に大事な方に囲まれてのステージと、うかがいましたけども」
RYO「そう、沖縄のね場所なんで、やっぱ沖縄の人たちがすっごい多くて。ちょっと安心する気持ちもあります」
中居「あると思います。会場の皆さん盛り上がってますか?」
会場「(大声援)」
中居「さあそれでは、歌のスタンバイお願い致しまーす」

 歌前のやり取りは中継なのでやや慎重に、ただその中でRYOさんが2回同じことを話す一幕もありました。会場はやはり盛り上がっています。その後の曲紹介で、2006年FIFAワールドカップNHK中継テーマソングであることを説明。前年の紅白に欠席しながらこの年出場となった理由は、もちろんこのタイアップの絡みです。

 ライブ会場からの中継はNHKホールから見ると熱が落ちるという批判も出ますが、テレビ視聴者的な観点で見ると特にバンド系は生演奏が保証されていて会場の熱気がより直に伝わりやすくなります。紅白歌合戦らしさという点では意見の分かれる所ですが、レンジらしいステージとなるとやはりアウェーのNHKホールよりこちらの方が相応しいのかもしれません。

 ただ「チャンピオーネ」は弦楽器や笛の音もあり、そちらは必然的に事前録音なので演奏もそれに合わせる形になるのが惜しいところです。フルコーラスではなくCメロカットの2コーラスなので、そこもやや惜しい部分でもありました。なお前年にKATCHANが脱退したドラムスはサポートメンバーの演奏です。

 ちなみにライブハウスからの中継は紅白歌合戦史上初、その後も現在まで例はありません。紅白出演級となると一部の初出場以外普段のライブはホール・アリーナクラスが主となるので、致し方ない所ではあります。

氣志團

第55回(2004年)「One Night Carnival」

作詞・作曲:綾小路翔
前歌手:ORANGE RANGE、島谷ひとみ
後歌手:中村美律子、布施 明
曲紹介:阿部 渉(白組司会)、小野文惠(紅組司会)
振付:綾小路翔 踊り:微熱DANJI、紫SHIKIBU

 「One Night Carnival」がインディーズでリリースされたのが2001年6月22日。以降テレビでのパフォーマンスは無いものの徐々に知名度を上げ、この年は日本武道館・国立代々木競技場・東京ドームと次々に単独GIGを成功させます。報道・ドキュメンタリー番組に出演しながらも歌番組出演は紅白が初、という点は今思えば後年の米津玄師藤井風と共通しています。

 島谷ひとみのパフォーマンス後、いよいよ彼らのステージです。その前にセット入換の繋ぎとして、この年大ブレイクした波田陽区(ギター侍)青木さやか(どこ見てんのよ!)のパフォーマンスが2階席ステージで入りました。前座としてはまさにしっくり来る内容です。その後いよいよ曲紹介。まずは「さあお待たせしました。続いては紅白初登場、そしてテレビの音楽番組に初出演。氣志團の登場です!」と阿部アナが普通に紹介します。

 お馴染み「BE MY BABY」のサウンドが流れる中で、メンバー5人がせり上がりで登場。本来は6人ですが、転落事故で療養中の星グランマニエはマネキンでの登場です。「さあ、ロックのメロディーに乗せて、学生服姿の若者5人が登場して参りました。氣志團の皆さんです。平成9年・千葉県木更津市で結成。異色の髪型と服装で、若者たちの人気を集めています。リーダー・綾小路セロニアス翔さんの歌声にもご注目ください」と、引き続き阿部アナが若干声色とテンポを変えてバンド紹介のナレーションを読み上げます。テロップは”氣志團(初出場)””千葉県木更津市 出身”と描かれたポップ体の白文字プリント。1980年代の紅白歌合戦をイメージしていますが、実を言うと本家はゴシック体の使用が一般的でした。

 イントロ開始とほぼ同時にダンサーが一斉に入場。曲名テロップはこの年の紅白歌合戦で採用されている標準スタイルと同様のデザイン。”俺んとこ来ないか!”のセリフ直後に早速紙テープ放射。華々しくオープニングが始まります。

 バックに登場したダンサーは、この年の流行と歴代の紅白歌合戦を徹底的にオマージュしています。Bメロで後ろを横切るダンサーは1980年代のチェッカーズ風の3人、松田聖子中森明菜小泉今日子を明らかに意識した衣装の3人、JAPANが付加される前のX・ToshI風の3人。西園寺瞳のギターソロでは後ろで和田アキ子3人と和泉元彌3人が縦になって踊ってます。第42回(1991年)で視聴者の度肝を抜いたとんねるずの「受信料を払おうペイント映像」、しまいにはバスタブに入る第41回(1990年)の宮沢りえみたいなのまで登場しました。

 『冬のソナタ』ブームということで、ペ・ヨンジュン風のダンサーも6人登場します。ひと通り全員がステージ上を渡り歩いた後にいよいよクライマックス。セリフの後に翔さんが、おもむろにリーゼントのカツラを取って混乱するムーブを見せます。紙吹雪が一斉に舞いますが、明らかにコントチックな終わり方で締まりはありません。ただラストのポーズは全員バッチリでした。

 ギターを弾く星グランマニエの人形が終始右腕を動かしていたり、ひたすら金色の衣装で腕を組み続けるだけの人がいたり(しかもアップ無し)、最後にはどさくさ紛れに本物の和田アキ子が一緒に踊りに参加していたりと細かい所まで非常に作り込まれたステージでした。次に歌う中村美律子が大声を挙げたところでコントチックに退場する所まで、氣志團ワールドを強烈にアピールしています。もちろん翌日のスポーツ新聞などでも、非常に大きな記事になったのは言うまでもありません。

 この年はSMAPがいないこともあって、ステージ以外でも各所で大活躍。まずはオープニング、NHKロゴが描かれたメンバーカラーの戦隊モノみたいな衣装で目をひきつけます。川中美幸「おもろい女」ステージでは小芝居演出に参加、翔さんと光さんがたこ焼き屋台の店員を務めています。ステージでの歌唱後、前半トリ前の「上を向いて歩こう」の全員合唱も学生服姿で積極的に参加。

 後半も白組2番手CHEMISTRYの曲紹介に美川憲一と参加(翔さんを除く)。「きしだん」であいうえお作文を作った結果、「ん」で「んーーーーーー、マンボー!チャッチャチャラ…メカドック!ワンワン!」とかなり苦しいオチになる台本でした。もっとも「メカドック」というのは氣志團ファンにとっては馴染みのあるフレーズで、それだけが救いだったでしょうか。旗揚げ合戦やマツケンサンバにも勿論参加、鳥羽一郎のステージで漁師に扮する場面までありました(レビュー済)。エンディングは白い学ラン姿、5人仲良く手を繋いで「蛍の光」を歌うシーンも映っています。

第56回(2005年)「One Night Carnival」

作詞・作曲:氣志團
前歌手:コブクロ、松浦亜弥&DEF.DIVA・モーニング娘。
後歌手:BoA、ゴスペラーズ
曲紹介:山本耕史(白組司会)、和田アキ子、まちゃまちゃ
振付:綾小路翔 踊り:微熱DANJI、紫SHIKIBU

 「よっしゃー!今年はなあ、白組やから遠慮なくビシビシやったるぜぇ!」。前年のステージにも飛び入り参加した和田アキ子が、ド迫力の学ランリーゼント姿で登場します。なおこの年のアッコさんはm-floとの共演で、紅組ではなく白組からの出場でした。さらにアッコさんの呼びかけで団長の同級生・まちゃまちゃも登場。この時期『エンタの神様』に魔邪という名前で毎週のように出演、2005年に多くブレイクした芸人の一人でした。

 「おーい団長!おめぇがかつて同窓会でやってくれた弾き語り。あん時オーディエンスはあたいだけだったけど、今日は日本中いろんなとこでいっぺぇの人がおめぇの歌聴いてっから。木更津のみなと祭りよりもでっけぇ花火上げてくんなよ!はやんなよ、やっちまいないよ!」。専用BGM演出あり、ハッピと鉢巻に「I ❤ 白組」と描かれた衣装での登場は非常に純粋な応援で、笑いを取る場面は無しでした。

 裏番組がK-1やPRIDEで視聴率合戦に湧いた時期、この年のステージは格闘技スタイルでした。「氣志團」「173~209cm 56~72kg ヤングロック」「JPN(旗は国旗ではなく氣志團デザイン)」「木更津の種馬」「(アーティスト写真)SHIRO」と明らかに民放の中継を意識したテロップ、ボブ・サップらしき人と曙らしき人のセコンドみたいな形で入場します。翔さんの手には千葉ロッテマリーンズの旗、この年マリーンズは31年ぶりの日本一を達成しました。ネットでよく33-4と言われる年でもあります。

 ステージにはスピーカーの他に、リングまで用意されています。1970年代に具志堅用高ガッツ石松といったボクシング世界チャンピオンの応援出演はありますが、紅白でリングがステージに置かれたのはこの時が初めてです。

 歌唱曲・ダンサー登場のタイミング・紙テープ放射は前年と同様です。星グランマニエは怪我が全快、6人での紅白歌合戦出場はこれが初めてです。曙っぽい人とボブ・サップっぽい人が複数いますが、メイクはあえてでしょうかちょっと雑です。曙っぽい面々の1人がうつ伏せで倒れる場面はまさに2003年12月31日の再現、そのまま救急に運ばれるシーンまで用意されています。

 ひたすらハッスルハッスルする小川直也っぽい3人、それに対峙する柔道着の吉田秀彦っぽい3人(2005年PRIDEのメインカードでした)。小競り合いする美川憲一っぽい人(そのまんま美川)と小林幸子(こちらは本物)、極めつけは喪服姿の若貴兄弟っぽい人(この年父親の二子山親方が逝去、葬儀での確執が報道されました)まで登場。テーマは大きく違うものの細部までこだわっている部分は、まさに前年と同様でした。

 曲の後半からは妙にセクシーなへそ出しの女性ダンサー、さらに学ラン姿のキッズダンサーが登場します。セリフでは翔さんが子役の1人を片手で抱えあげます。「ただこいつらの未来、守りたいだけさ」と少しセリフを変えますが、その子役が笑顔でカツラを取ります。光さんが子どもたちを追いかける中カツラを返さない子どもたち、一旦パフォーマンスに戻るも彼らを気にする演技がなかなかのツボでした。もっともカツラを取るムーブ・紙吹雪の演出・慌てて翔さんを抱えあげてバタバタと退場するシーンは前年と同様です。一方すぐ次のステージではなく、みのもんた他の司会陣が感想を語りつつその様子を実況するのは前年と異なる部分でした。

 オープニングは金の学ラン姿、後半最初の「世界に一つだけの花」はなぜか白鳥雪之丞の姿が見えず代わりに銅像が1体混じってます。細かく見ると台に「世界に一つだけの花」の文字が印字されていました。

 企画コーナーでは和田アキ子と一緒に「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」をパフォーマンス、アッコさんとは後年の氣志團万博にも3度出演してもらうなど現在まで非常に親交が深い関係となっています。エンディングも白鳥松竹梅がオカッパの髪型で白鳥雪之丞は黒人の姿、本人ではなく別の人がメンバーカラーの制服を着ているように見える状況でした。

 なお氣志團は翌年8月のコンサートで一旦活動休止、同時並行で翔さんによく似た外見のDJ OZMAが大ヒットして紅白に出場します。ところが当年の紅白で彼が演出で大きくやらかしてしまい、氣志團もろともNHKに出られない状況が現在まで続いています。

 氣志團は2009年に活動再開してその後も活躍、9月開催の氣志團万博は毎年非常に豪華かつ他ではまず実現できないラインナップで大きな注目を集めています。またNHKとは当然関係のない『ももいろ歌合戦』には2017年の第1回以降5年連続で出場となっています。

グループ魂

第56回(2005年)「君にジュースを買ってあげる♥」

作詞:宮藤官九郎 作曲:富澤タク
前歌手:T.M.Revolution、一青 窈
後歌手:aiko、山崎まさよし
曲紹介:みのもんた、山根基世、仲間由紀恵、山本耕史(司会)

 第56回NHK紅白歌合戦は例年にもまして多彩な出場歌手の顔ぶれになりましたが、彼らの出場を予想できた人は日本中に誰もいなかったのではないかと思われます。当時の背景については過去に名言集解説記事で触れているので、ここではステージとそれ以外の出演について記します。

 曲紹介は司会者4名が勢揃い。グループ魂についてよく知らないみのもんたに、山本耕史がメンバーの歌以外の業績も交えて説明。「俳優魂と脚本家魂、ふーん…。司会者魂って知ってる?」から始まるみのさんの講釈(「ズバッと」「おもいっきり」「お嬢さん」)を経て、山本さんが曲紹介。「アニメの司会にもなって、子どもたちにも大人気。「君にジュースを買ってあげる❤」。」

「こんばんは、夜のちょいワルおじさん・港カヲルです。今宵グループ魂、平均年齢38歳オリコンチャート最高42位の彼らが、紅白、討ち取ったりーーー!ウォーーー!」

「…それではお聴きください、歌はもちろん、仮面ライダー!」「(即座にスリップを叩いて)はいどうも、こんばんわーーーーー!!」

 通常のライブ同様、港カヲル(皆川猿時)の前説コントからステージが始まります。グループの自虐ネタに、例の仮面ライダーオマージュもありました(詳しくはこちらの名言集解説加山雄三の司会史にて記載済)。破壊(阿部サダヲ)が止めて演奏開始となりますが、普段はこんな程度の内容に留まらないことは特記しておきます。

 「こんばんは全国の皆さん今日は一生懸命歌うことが出来ますよろしくお願いしまーす」、冒頭サビ直後のセリフを挨拶に代えます。どうしようもない内容の歌詞で、「紅白饅頭」と書かれたお腹まるだしの港カヲルや「恐怖」とプリントされたシャツを着るバイト君(村杉蝉之介)のコーラスもツッコミどころしかない状況ですが、演奏は思いっきり大迫力の生演奏です。

 1コーラス歌唱後は破壊さんがステージから飛び降りて猛アピール。「どうも、グループ魂です。「だましい」じゃございません。よろしくお願いいたします。冷たい顔しないで冷たい顔しないで。グループ魂と申します」

「(この年大関に昇進した琴欧州関に向かって)あれ~?君は、今年すごい活躍したと聞いてるよ。何してる人?」
「バラエティ」
「バラエティ!? バラエティ?…分からないこと言うと時間が伸びてくよー。生放送で。君は何かコマーシャルで見たことあるコマーシャルで。あのーNHKだから商品名とか言っちゃいけない、あのヨーグルト。何のヨーグルト?」
ブルガリア
商品名言ってんじゃんよー!あっ、ビックリ。いま叩こうとしたらすっごい目で見られた。こわ…。横綱になってからまた会おうね。ナッ!」

 ゲスト審査員を務めた琴欧州関とのやり取りは、他の審査員やお客さんにも大ウケでした。その後はサビをそそくさと歌って退場。歌い終わった直後、バイト君のマイクスタンドに備え付けられたスリッパを次々に投げるパフォーマンスもありました。「ありがとうございましたー!良いお年を~!」と最後は深いお辞儀で挨拶。琴欧洲関のおかげで(?)進行が押しているため、「いやー、ぶっ壊れてますねー」山本耕史がコメントしたタイミングは挨拶する前でした。

 既に暴動こと宮藤官九郎は人気脚本家で、この時点で既に『池袋ウエストゲートパーク』『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』などを手掛けていますが、歌以外の出演はOP・ED・全員合唱くらいで意外と少なめでした。港カヲルは全員合唱で大きな角つきの帽子を被って出演、エンディングはMVと同じデザインの犬の着ぐるみを着用と本番以外でも頑張って爪痕を残しています。

 クドカンは『あまちゃん』で第64回(2013年)審査員とコーナー脚本担当、阿部サダヲはなんと大河ドラマ『いだてん』主演で第69回(2018年)審査員。村杉蝉之介は『あまちゃん』、ドラムスの石鹸こと三宅弘城も『あさが来た』で紅白に再び顔を見せています。阿部さんは当時まだ主演級ではなく三宅さんや村杉さんは端役中心、そう考えるとメンバー個々の仕事も年が経つごとに大きくなっていると実感する今日この頃です。なお琴欧州関は現役時代残念ながら横綱に昇進できませんでしたが、鳴戸部屋の師匠として今年弟子の欧勝馬関を部屋初の関取に育て上げています。

Aqua Timez

第57回(2006年)「決意の朝に」

作詞・作曲:太志
前歌手:北山たけし、GAM&モーニング娘。
後歌手:藤あや子、細川たかし
曲紹介:中居正広(白組司会)、草彅 剛

 メンバー5人全員が曲紹介に登場、また中居さんと一緒に草彅剛も加わります。SMAPのアルバム『Pop Up! SMAP』に彼らの持ち歌「だいじょうぶ」をこの年提供、歌詞が魅力的なグループであることを説明します。初出場についてはボーカルの太志がコメント、「去年はバイトしてるメンバーとかもいたんですけど、今年はこういう素晴らしい舞台に立てて本当に嬉しいです、ありがとうございます」と話します。スタンバイ後、草彅さんが「辛い時ですね、辛いと言えたらいいのに、誰もがですね挫けそうになった時ふと思う心の叫びを、まっすぐに曲に描いた曲です」と、この曲について説明した後に演奏開始。

 おそらく番組に合わせて新調はしているのではないかと推測はしますが、画面で見る限りでは普段着に近い肩の力を抜いたようなラフな衣装です。見る人が見ればオシャレと形容することは十分可能ですが、費用は歴代の紅白から見てもかなり安い方であることは間違いありません。パフォーマンスはこの年を代表するヒット曲をTVサイズで歌うという、この年多く出演した歌番組と大きく変わらない聴かせる内容です。ドレッドヘアーのベース・OKP-STARが絶え間なく動いてるのが特に印象的でした。

 出番はオープニング・美川憲一の曲紹介・エンディングが主となります。美川さんが登場する場面は、SEAMOWaTと一緒に美川さんに扮したコロッケから手ほどきを受ける内容です。なお衣装は番組全体を見渡す限り、最初から最後まで同じ格好のまま通しました。全アーティストについて調べてはいないので分からないですが、平成以降の出場者だとかなり珍しいケースではないかと思われます。

第59回(2008年)「虹」

作詞・作曲:太志
前歌手:東方神起、水森かおり
後歌手:木山裕策、秋元順子
曲紹介:中居正広(白組司会)、仲間由紀恵(紅組司会)、WaT

 前年も「しおり」「ALONES」をヒットさせていますが、出場ラインには惜しくも届かず落選。ただこの年は「虹」がドラマ『ごくせん』主題歌に起用されて大ヒット。主演の仲間由紀恵が紅組司会で起用されることもあって、2年ぶり紅白復帰という形になりました。

 『ごくせん』主題歌は3年前にも「NO MORE CRY」がD-51によって歌われています。その時と同様、曲紹介にはドラマ主演の仲間さんと2005年版に生徒役で出演した小池徹平も登場します。一応2002年のシリーズに出演したウエンツ瑛士もいますが、あまり主要な役でなかったのでぞんざいに扱われてます。というわけで内容は本編レビューで既に触れているので、そちらを見てください。なお2回目となるこの年はステージとそれ以外で別に衣装を用意していました(OPとED以外ほぼ出番無し、そこでさえも映る場面が極めて少なめでしたが)。

 

 

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