今回は1979年・第30回のステージ演奏時間・構成の一覧を作成します。
1979年のヒット曲シーンは、それ以前だけでなくそれ以降の現在に至るまでと比較しても屈指の超豊作年でした。当時台頭したロック・ニューミュージックから復権なった演歌まで勢揃い。紅白歌合戦に関しても特に高い完成度を誇る内容になっています。
演奏時間&構成表 1(第30回・1979年)
演奏時間・構成は紅白歌合戦で実際に披露したステージを指しています。フル再生時間はSpotifyの音源基準、オリジナル未配信曲は手持ちのCDからインポートしたiTunes音源を基準としています。
曲順 | 楽曲 | アーティスト | 演奏時間 構成 | フル再生時間 構成 |
1(紅1) | ジュリーがライバル | 石野真子 | 2分19秒 冒頭+1コーラス半 | 3分51秒 冒頭+2コーラス |
2(白1) | マイ レディー | 郷ひろみ | 2分27秒 冒頭+1コーラス半+サビ | 3分39秒 冒頭+2コーラス半+サビ |
3(紅2) | ラブジャック・サマー | 榊原郁恵 | 2分10秒 1コーラス半 | 3分39秒 2コーラス半 |
4(白2) | 夢追い酒 | 渥美二郎 | 2分16秒 2コーラス | 3分58秒 3コーラス |
5(紅3) | シングルガール | 太田裕美 | 2分11秒 冒頭+1コーラス+サビ | 4分53秒 冒頭+2コーラス半 |
6(白3) | 青春想譜 | 新沼謙治 | 2分13秒 2コーラス | 3分58秒 3コーラス |
7(紅4) | たとえば…たとえば | 渡辺真知子 | 1分54秒 1コーラス半 | 3分13秒 2コーラス半 |
8(白4) | 大阪ものがたり | 角川 博 | 1分52秒 1コーラス半 | 3分25秒 2コーラス |
9(紅5) | サンタモニカの風 | 桜田淳子 | 2分20秒 冒頭+1コーラス半 | 3分21秒 冒頭+2コーラス |
10(白5) | 青春の一冊 | 野口五郎 | 2分27秒 1コーラス半 | 4分21秒 2コーラス半 |
11(紅6) | 万華鏡 | 岩崎宏美 | 2分23秒 冒頭+1コーラス+ラスト | 4分44秒 冒頭+2コーラス半+ラスト |
12(白6) | 燃えろいい女 | ツイスト | 2分22秒 1コーラス+サビ2回 | 3分37秒 2コーラス+サビ |
13(紅7) | ビューティフル・ミー | 大橋純子 | 2分7秒 冒頭+1コーラス+サビ | 4分0秒 冒頭+2コーラス+サビ |
14(白7) | いとしのエリー | サザンオールスターズ | 2分38秒 1コーラス半 | 4分26秒 2コーラス半 |
15(紅8) | 津軽じょんがら節 | 金沢明子 | 2分7秒 2コーラス | 3分44秒 3コーラス |
16(白8) | 関白宣言 | さだまさし | 4分44秒 3コーラス | 5分55秒 3コーラス |
17(紅9) | 花街の母 | 金田たつえ | 2分28秒 2コーラス+台詞1 | 4分12秒 3コーラス+台詞2 |
18(白9) | ビューティフル・ネーム | ゴダイゴ | 2分13秒 2コーラス+サビ2 | 3分43秒 3コーラス+サビ4 |
各ステージ・補足
トップバッターは2年連続で紅組の初出場アイドル、この年は石野真子が担当。冒頭とラストを英語詞のサビで挟む形の1コーラス歌唱でした。楽曲は「ジュリーがライバル」、標的にされたジュリーの表情もしっかり映っています。
郷ひろみは3年連続トップバッター、この年は「マイレディー」。1コーラス半の後にサビを繰り返すフェイドアウトのエンディング、ステージでは2回繰り返しの構成でした。双方のトップバッターが間奏もしっかり残す構成、速いテンポの演奏とカットが目立った前回・前々回と比べて期待が膨らむオープニングです。
この年はサンバ調の夏ソングがやや目立っていましたが、榊原郁恵の「ラブジャック・サマー」はまさにそういった内容のナンバー。演奏も歌詞も動きもかなり忙しない印象でしたが、これでもテンポは原曲より少々速い程度です。1コーラス半ですが、最後はサビ繰り返し・アウトロともしっかり残していました。
渥美二郎はこの年レコードセールス年間1位の「夢追い酒」で初出場。ここ数年における演歌の初出場ステージは、半分くらいイントロがカットされるケースが目立ちましたが、このステージはイントロ全残しでした。その代わりに間奏がほぼカットされています。1番と3番の歌唱、翌年以降もヒット曲を多く残していますが、不思議なことに紅白出場は現在までこの1回しかありません。
太田裕美の「シングルガール」は原曲より速い演奏です。1コーラスが長いこともあって、構成はイントロ無しの冒頭と1コーラス&ラストサビ。最後の最後で歌詞のワンフレーズ間違いがありました。
新沼謙治は1番と3番の歌唱。イントロで同郷の先輩・千昌夫の小芝居がありました。演歌だとアレンジされることも多いアウトロですが、このステージについてはほぼ原曲通りの終わり方です。
渡辺真知子は「たとえば…たとえば」を1コーラス半、前年に続いて1分台の歌唱時間。たださらに気の毒なのは翌年で、「唇よ、熱く君を語れ」がCMソングで大ヒットしたのにも関わらず落選。それどころか次点のリストにも挙がらなかったようです。
角川博は小気味よく「大阪ものがたり」を歌いますが、こちらも前年と同じく間奏無しの1コーラス半でした。サビの繰り返しもカットされる扱いの悪さです。
桜田淳子の「サンタモニカの風」は原曲より速いテンポの演奏。2コーラス構成の短い曲ですが、ステージは冒頭+1コーラス+サビ。間奏は全カットでしたが、アウトロはしっかり残しています。(ステージレビュー→紅白歌合戦・桜田淳子の軌跡)
野口五郎はこの年「真夏の夜の夢」のギター演奏が話題になりましたが、紅白で歌ったのは例年同様のバラード「青春の一冊」。良い曲ですが、少し勿体ない選曲だったような気もします。歌唱は1番と2番Bメロ以降。実況アナウンスが入る程度に間奏を残しています。(ステージレビュー→紅白歌合戦・野口五郎の軌跡)
岩崎宏美は冒頭とラストを挟む形の1コーラス。フェイドアウトで終わる終盤は、半音ずつ下がっていくインストの後に「あなた」の歌詞を入れるアレンジでした。第27回や第29回ほど超高速ではないものの、この年も演奏テンポは原曲と比べて相当に速いです。少なくともバラードにはあまり聴こえないような内容でした。(ステージレビュー→紅白歌合戦・岩崎宏美の軌跡)
ツイストはCMで話題になった「燃えろいい女」を披露。メンバーのバンドサウンドよりも、管楽器の音がやや目立つアレンジでした。1コーラスとサビ2回繰り返し、演奏時間は短くありませんが、やや短く聴こえる構成だったようにも思えます。(ステージレビュー→紅白歌合戦・バンド出場歌手の歴史)
大橋純子は前年に「たそがれマイ・ラブ」を大ヒットさせましたが、紅白での歌唱曲は歌い上げるバラード曲「ビューティフル・ミー」でした。冒頭と1コーラスおよびラストのサビを歌う構成。この年の紅白はここまで、イントロ無しの歌唱から入るステージが多い様子です。そういえばこの人も、1981年~1982年にかけて大ヒット・レコ大最優秀歌唱賞にまで選ばれた「シルエット・ロマンス」で紅白に出られずという不可解な選出が後にありました。
サザンオールスターズはこの年「いとしのエリー」で初出場。1番と2番サビ、”エリー My Love”はラストにためて歌う部分も含まれます。アウトロもカット無しで素晴らしいエンディングでしたが、冒頭イントロは前半ほぼカット。生演奏の音の余韻がやや長く、次の歌手の曲紹介途中まで残っていました。(ステージレビュー→紅白名言集解説・22~国民的バンドの紅白初出場~)
ロックやニューミュージックだけでなく、民謡もこの時期ブームになっていました。前年には民謡で応援コーナーまで設けられたほどですが、ゲストで登場した金沢明子はこの年紅組歌手として初出場。「津軽じょんがら節」を2コーラス歌います。歌詞そのものは多数作られているそうですが、この年選出されたのは”若衆唄えば主人の囃し”と”水がきれいで 女が良くて”がそれぞれ含まれる2コーラスでした。
この年「関白宣言」の歌詞が大変話題になったさだまさしは、特別出演する美空ひばりの口添えもあって堂々フルコーラス。この紅白出場も非常に大きな反響を呼びました。演奏時間が4分30秒を超えるステージは、確認できる限りこれが紅白歌合戦史上初(これ以前に第20回のアイ・ジョージ「ク・ク・ル・ク・ク・パロマ」が4分10秒を記録)。ただ言うまでもなく歌以外の部分は大幅カット、全体的にテンポも若干速め、”ラララ…”と歌うアウトロは演奏中に相当スピードを上げる形の演奏でした。
1973年に初めて発売された「花街の母」がこの年になって大ヒット、金田たつえの初出場も話題になりました。同じく長い間苦労して初出場の小林幸子がマイクを渡すシーンも印象的です。歌は1番・1回目の台詞・3番の歌唱。やや歌割りが長いこともあって、アウトロはカット気味です。
ゴダイゴの「ビューティフル・ネーム」は日本語詞と英語詞を織り交ぜた歌唱、ほとんど紅白オリジナルと言っても良い歌割りでした。1番AメロBメロ日本語、Aメロラララを挟んでBメロ英語、短い間奏&Aメロラララから日本語詞Aメロ2回という構成。情報量はかなり多いですが、演奏時間にすると意外に短めだったりします。(ステージレビュー→紅白歌合戦・バンド出場歌手の歴史)
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