19時20分からの第1部は「昭和の紅白」と標榜した、特別版に近い内容でした。一方21時からの第2部は、例年通りの紅白歌合戦という位置づけでの放送です。
演奏時間&構成表 2(第40回・1989年)
演奏時間・構成は紅白歌合戦で実際に披露したステージを指しています。フル再生時間はSpotifyの音源基準、オリジナル未配信曲は手持ちのCDからインポートしたiTunes音源を基準としています。
曲順 | 楽曲 | アーティスト | 演奏時間 構成 |
フル再生時間 構成 |
16(白8) 白後半1 |
声援 | 武田鉄矢 | 2分57秒 2コーラス |
5分5秒 2コーラス半 |
17(紅8) 紅後半1 |
六本木ララバイ ’90 | 内藤やす子 | 3分10秒 2コーラス |
4分10秒 2コーラス半 |
18(白9) 白後半2 |
まいったネ今夜 | 少年隊 | 3分16秒 サビ+1コーラス半 |
4分14秒 2コーラス半 |
19(紅9) 紅後半2 |
恋一夜 | 工藤静香 | 2分46秒 1コーラス+サビ |
4分32秒 2コーラス+サビ |
20(白10) 白後半3 |
TIME ZONE | 男闘呼組 | 2分54秒 1コーラス+サビ |
4分33秒 2コーラス+サビ |
21(紅10) 紅後半3 |
Virgin Eyes | 中山美穂 | 2分31秒 1コーラス半 |
4分11秒 2コーラス半 |
22(白11) 白後半4 |
太陽がいっぱい | 光GENJI | 3分34秒 サビ+1コーラス半 |
5分21秒 サビ+2コーラス半 |
23(紅11) 紅後半4 |
淋しい熱帯魚 | Wink | 3分21秒 2コーラス+サビ |
4分29秒 2コーラス半 |
24(白12) 白後半5 |
Friends and Dream | チェッカーズ | 3分4秒 サビ+1コーラス+サビ |
4分33秒 サビ+2コーラス+サビ |
25(紅12) 紅後半5 |
ユア・マイ・ライフ | 荻野目洋子 | 3分0秒 2コーラス半 |
3分56秒 2コーラス半 |
26(白13) 白後半6 |
ソーラン節 | 伊藤多喜雄 | 4分21秒 4コーラス |
10分17秒 7コーラス |
27(紅13) 紅後半6 |
百万本のバラ | 加藤登紀子 | 2分56秒 2コーラス半 |
5分6秒 3コーラス+サビ |
28(白14) 白後半7 |
愛念(ゴイニム) | アラン・タム | 2分56秒 1コーラス半 |
4分38秒 2コーラス半 |
29(紅14) 紅後半7 |
朝の国から | キム・ヨンジャ | 3分1秒 2コーラス |
3分55秒 2コーラス+サビ |
30(白15) 白後半8 |
大きな玉ねぎの下で ~はるかなる想い |
BAKUFU-SLUMP | 3分15秒 1コーラス半+サビ |
4分56秒 2コーラス+サビ2 |
31(紅15) 紅後半8 |
ロンドンデリーの歌 | 佐藤しのぶ | 3分12秒 1コーラス半 |
3分17秒 1コーラス半 |
32(白16) 白後半9 |
冗談じゃねぇ | 堀内孝雄 | 2分26秒 1コーラス+サビ |
4分35秒 2コーラス+サビ |
33(紅16) 紅後半9 |
男の情話 | 坂本冬美 | 2分31秒 2コーラス |
4分16秒 3コーラス |
34(白17) 白後半10 |
北の鷗唄 | 鳥羽一郎 | 2分50秒 2コーラス |
3分59秒 2コーラス+サビ |
35(紅17) 紅後半10 |
女の舞 | 大月みやこ | 3分2秒 2コーラス |
4分43秒 3コーラス |
各ステージ・補足
平成最初の紅白歌合戦、「平成の紅白」トップバッターは武田鉄矢が白組司会兼任での担当でした。前年の10月からこの年の3月まで放送された、『3年B組金八先生』第3シリーズ主題歌の「声援」を2コーラス歌います。テンポは原曲よりやや速め、歌唱は若干先生テイストだったでしょうか。ラストは”白組 頑張れ 頑張ってくれ”と歌詞を変えての熱唱でした。また、本来2番歌唱後に演奏される間奏が1番歌唱後に変更されています。ただアウトロの時点で紅組司会の三田佳子が喋り始めるのは、いささか早すぎたような気がしてなりません。
紅組のトップバッターは初出場の内藤やす子。「弟よ」「想い出ぼろぼろ」などがヒットした時期はとある事情で出られなくなった過去があるので、喜びもひとしおだったでしょうか。歌は5年前に発表した「六本木ララバイ」、タイトルに翌年の年号が付加されました。2コーラス、ラストフレーズは繰り返しあり。演奏はギターサウンド中心に原曲よりアップデート、テンポを少し遅くすることで歌の迫力をより前面に出すアレンジでした。
少年隊の「まいったネ今夜」はオープニングから豪華なアレンジ、原曲とは異なりサビから入る構成になっています。そこから1番+紅白オリジナル間奏(タップダンスあり)+2番サビ、原曲より速いテンポでの演奏です。ダンシング・スペシャルの女性ダンサーを交えたステージは、まさにミュージカルという趣でした。
大ヒット曲を連発した1989年の工藤静香、歌唱曲として選ばれたのは「恋一夜」でした。美しい声で聴かせるステージでしたが、曲紹介でもあった通り高音部に本番直前にひいた風邪の影響が少し出ています。1番とラストサビの歌唱。なお「嵐の素顔」「黄砂に吹かれて」は、33年後にようやく紅白初歌唱となっています。
男闘呼組もこの年の大ヒット曲「TIME ZONE」、前回は代役でしたが今回は最初から出場歌手に選ばれています。1番フルと2番サビ+ラストの歌唱、迫力のステージでした。(ステージレビュー→紅白歌合戦・バンド出場歌手の歴史(怒涛の1980年代編))
中山美穂は杏里作曲の「Virgin Eyes」を歌唱、作曲者本人が曲紹介に登場します。登場する際にマジックを披露する演出ですが、歴代の紅白でも珍しいくらいの大失敗という結果でした。歌は1番と、Cメロから始まる終盤の歌唱です。(ステージレビュー→紅白歌合戦・中山美穂の軌跡)
光GENJIはこの年の大ヒット曲「太陽がいっぱい」でしたが、冒頭と最後は音源にない新たな歌詞が追加されました(メロディーはサビとほぼ同様)。間奏もオリジナルと異なるメロディーで、リップシンクが多い彼らのテレビ出演では珍しい生歌ステージです。オリジナル以外の構成は歌い出しサビ+1番フル+Cメロ後半(ラララ…の部分)+2番サビ。紅白バージョンという副題がついても不思議ではない、オリジナル色強めのアレンジでした。(ステージレビュー→紅白歌合戦・光GENJIの軌跡)
初出場のWinkはレコ大受賞曲の「淋しい熱帯魚」、曲紹介は同じ女性デュオで11年前にレコ大を受賞したピンク・レディーでした。イントロ・間奏ややカット気味の2コーラス、2番はAメロ・Bメロ・サビ+サビ後半(裏声を駆使するパート)+サビ2回という構成です(=3番Bメロ前半がカット)。演奏は生では無い、オリジナルに近い事前録音でした。
チェッカーズは12月リリースの「Friends and Dream」を選曲。冒頭+1番+セリフ+間奏+ラストサビという構成でした。(ステージレビュー→紅白歌合戦・チェッカーズの軌跡)
荻野目洋子「ユア・マイ・ライフ」は終盤こそカットされたものの、2コーラス半の途中まで全くカット無しの構成でした。ただ歌は声量こそ素晴らしいものの若干裏返り気味で、決して調子良くなさそうだったのが惜しい所です。
伊藤多喜雄の「ソーラン節」は1988年のアルバム『TAKIO』に収録、原曲はなんと10分17秒もあります。尺八メインのスローテンポで2コーラス、総勢13名のTAKIO BAND演奏が2コーラス。途中サックス奏者・坂田明によるソロ演奏もありました。なお直前にMr.マリックの審査員参加型ハンドパワーショーを開催、その後ろでセット転換とバンドのセッティングがなされています。
加藤登紀子は18年ぶりの紅白歌合戦出場、当時話題になっていたソ連のヒット曲「百万本のバラ」カバーを熱唱。2コーラス半という構成ですが、内訳は1番+2番Aメロ+3番なので若干変則的です。間奏はほぼカット、3番からの転調は彼女が歌った音源通りでした。
この年は紅白歌合戦に代わる歌番組として「アジア音楽祭」を放送する動きもあったと言われています。それを見越して登場したのが、香港の大ヒット歌手アラン・タムでした。歌唱曲の「愛念(ゴイニム)」はこの年リリース。広東語で歌い切ると思いきや、サビは1回目・2回目ともに日本語での歌唱です。
キム・ヨンジャは前年のソウル五輪閉会式で歌った「朝の国から」を2コーラス。1番を韓国語、2番を日本語(歌詞は1番)で歌います。非常に華やかなステージでした。なおこの曲は前年に日本でも再デビュー曲としてリリース、この年発表の「暗夜行路」以降は原則演歌歌手としての活動になります。
BAKUFU-SLUMPはこの年「Runner」「リゾ・ラバ」が大ヒットしましたが、紅白での歌唱曲は日本武道館を題材にした名バラード「大きな玉ねぎの下で~はるかなる想い」。1番フルで間奏ほぼカット、2番はBメロ以降の歌唱で最後にサビ繰り返しも1回ありました。(ステージレビュー→紅白歌合戦・バンド出場歌手の歴史(怒涛の1980年代編))
オペラから3年連続の佐藤しのぶですが、この年はアイルランド民謡、讃美歌としてよく歌われる「ロンドンデリーの歌」でした。歌詞は全く異なりますが、第14回(1963年)でアイ・ジョージが歌った「ダニー・ボーイ」と同じ曲です。1コーラス半、全編日本語での歌唱でした。多くのミュージシャンが歌あるいはインストゥルメンタルとして演奏していますが、ここでは翌年の紅白歌合戦に出場する鮫島有美子歌唱版を原曲とします(歌詞は「ダニー・ボーイ」版ですが)。
讃美歌の後にUCA(国際チアリーダーズ協会)による歓声つきのパフォーマンス、さらに白組歌手が舞台袖に登場することで若い女性ファンがキャーキャー叫ぶという大変カオスな流れが発生しました。そんな中で始まるのが大人の歌謡曲というのも、ある意味もっとも紅白歌合戦らしい展開と言えます。というわけで堀内孝雄「冗談じゃねえ」、直前の環境もそうですが歌唱構成も2コーラス歌えず間奏無しの1コーラス+サビ。色々な意味で、歌のタイトルと合致した状況になってしまっています。(ステージレビュー→紅白歌合戦・堀内孝雄の軌跡)
坂本冬美は当時22歳の若手、初出場の前回に続いて2年連続紅組演歌トップバッターでした。ステージは「男の情話」の1番・3番の2コーラス、間奏とアウトロ短め。オリコン年間40位のヒット曲ですが、あまりそうには見えない曲順・扱いです。
鳥羽一郎は力の入った海の演歌「北の鷗唄」を、アクションを交えながら大熱唱。こちらも間奏ほぼカットですが、同じ楽曲構成の堀内さんとは異なり何とか2コーラスを確保。(ステージレビュー→紅白歌合戦・鳥羽一郎の軌跡)
大月みやこは4年連続出場、左手にマイク・右手に扇子を持ちながらのステージでした。”薪能”という歌詞に合わせて、能面の花柳糸之社中3名がステージに華を添えています。1番と3番の歌唱、前3曲と違いこちらは歌以外の演奏も比較的多めでした。
コメント