1981年の紅白歌合戦は紅白史を語るにあたって大変重要な年となっています。舞台の演出方法がこの年から大幅に変更、曲中曲間のセット転換が頻繁に行われるようになりました。また紅組白組入り混じったショーコーナーが初めて作られ、お笑いや俳優などのゲスト陣がしばらくの間一切出演しなくなります。
出場歌手も1970年代後半以降原則各24組ずつでしたが、前年は各23組この年は各22組に減りました。新時代の紅白歌合戦、各ステージの演奏時間はどうなったでしょうか。早速見ていきます。
演奏時間&構成表 1(第32回・1981年)
演奏時間・構成は紅白歌合戦で実際に披露したステージを指しています。フル再生時間はSpotifyの音源基準、オリジナル未配信曲は手持ちのCDからインポートしたiTunes音源を基準としています。
曲順 | 楽曲 | アーティスト | 演奏時間 構成 |
フル再生時間 構成 |
1(紅1) | スマイル・フォー・ミー | 河合奈保子 | 2分26秒 2コーラス |
3分38秒 2コーラス半 |
2(白1) | ギンギラギンにさりげなく | 近藤真彦 | 2分13秒 1コーラス半 |
3分51秒 2コーラス+サビ |
3(紅2) | まちぶせ | 石川ひとみ | 2分17秒 2コーラス |
3分39秒 2コーラス |
4(白2) | 悲しみ2 (TOO) ヤング | 田原俊彦 | 2分9秒 冒頭+1コーラス半 |
3分22秒 冒頭+2コーラス半 |
5(紅3) | 帰ってこいよ | 松村和子 | 1分57秒 2コーラス |
3分26秒 3コーラス |
6(白3) | みちのくひとり旅 | 山本譲二 | 2分23秒 1コーラス+ラスト |
3分48秒 2コーラス+ラスト |
7(紅4) | 涙のジルバ | 高田みづえ | 2分32秒 冒頭+1コーラス半 |
4分24秒 サビ+2コーラス |
8(白4) | お嫁サンバ | 郷ひろみ | 2分43秒 冒頭+1コーラス半 |
4分4秒 冒頭+2コーラス半 |
9(紅5) | 夏の扉 | 松田聖子 | 2分31秒 2コーラス |
3分32秒 2コーラス |
10(白5) | 望郷酒場 | 千 昌夫 | 2分55秒 2コーラス+小唄 |
4分8秒 3コーラス+小唄 |
11(紅6) | 有明けの海 | 水前寺清子 | 3分15秒 2コーラス+台詞 |
4分9秒 2コーラス半+台詞2 |
12(白6) | 雪の渡り鳥 | 三波春夫 | 2分19秒 2コーラス |
3分34秒 3コーラス |
13(紅7) | ふたり酒 | 川中美幸 | 2分31秒 2コーラス |
3分47秒 3コーラス |
14(白7) | ジプシー | 西城秀樹 | 2分40秒 2コーラス |
3分18秒 2コーラス+サビ |
15(紅8) | たそがれラブコール | 小柳ルミ子 | 3分22秒 2コーラス |
3分59秒 2コーラス+サビ |
16(白8) | 慕情 | 菅原洋一 | 2分27秒 1コーラス半 |
2分56秒 1コーラス半 |
17(企1) | 愛のコリーダ | 出場歌手11名 | 2分49秒 2コーラス半 |
6分26秒 3コーラス+サビ繰返 |
各ステージ・補足
出場歌手全員がお揃いのブレザーで入場するオープニング、新しい時代の紅白歌合戦を到来させるこの回のトップバッターは河合奈保子「スマイル・フォー・ミー」でした。テロップも最初の曲名にアニメーション演出が入り、2番冒頭では出場歌手の出身地まで表示されるようになります。歌は間奏若干カットの2コーラス、テンポは原曲より若干速め。ただそれ以上に、彼女のひたむきさと笑顔が印象に残る素晴らしいステージでした。(ステージレビュー→紅白歌合戦・河合奈保子の軌跡)
マッチこと近藤真彦は「ギンギラギンにさりげなく」で初出場。原曲より速いテンポの演奏が、かえって若さゆえの勢いを強調しているかのような内容でした。1コーラス歌唱後すぐに2番後半へ移行、ラストは半音上げのサビをもう1度歌う構成になっています。
石川ひとみは当時『ザ・ベストテン』にランクインするたび青春とは…の芝居を披露していましたが、同じ徹子さん司会の紅白でもそれが再現されました。短い曲ということもあって、「まちぶせ」の歌唱は間奏とサビ繰り返しがカットされる程度でほぼフルコーラス。テンポも原曲より若干速い程度です。ただ歌唱中は終始涙声で今にも歌えなくなりそうな状態、歌唱終了後すぐに紅組歌手陣が彼女の元に駆けつけています。(ステージレビュー→紅白名言集解説・42~青春とは~)
田原俊彦は2年連続で白組2番手。原曲よりテンポが速いのも2年連続ですが、さすがに「哀愁でいと」ほど極端な速さではありませんでした。派手なアクションを見せながら、台詞も含めた1コーラス半歌唱の「悲しみ2 (TOO) ヤング」を披露。(ステージレビュー→紅白歌合戦・田原俊彦の軌跡)
松村和子は三味線を手にしながらヒット曲「帰ってこいよ」を披露、このスタイルの出場歌手はこまどり姉妹以来でしょうか。短めの間奏で2コーラス、1コーラスが短い上にテンポが原曲よりも随分速め。演奏時間は非常に少なくなってしまいました。
師匠・北島三郎の応援を受けて山本譲二も「みちのくひとり旅」で初出場。1コーラスとラストパート、構成的には短く聴こえますが1コーラスは長め。したがってそこそこの演奏時間は確保されています。
高田みづえ「涙のジルバ」は、イントロの演奏から感じるほどのテンポ速いステージでした。演出はガラリと変わりましたが、前回ほどではないものの高速演奏はまだ健在のようです。間奏無しの1コーラス半、アウトロややカット気味でした。あとは原曲より少しキーを上げて歌ってるようにも聴こえます。(ステージレビュー→紅白歌合戦・高田みづえの軌跡)
郷ひろみはかの有名な「お嫁サンバ」を歌唱。冒頭から1コーラス歌唱後、間奏カット無しでラストサビに繋げる構成でした。決して曲がサンバでは無いのは有名な話ですが、後ろの男女ダンサーは途中から社交ダンス風。むしろ先ほど歌っていたタイトルにあるジルバに近い内容の振り付けになっています。
2回目の出場ながら早くも満を持してといった曲紹介の松田聖子、ヒット曲多数の中で「夏の扉」を歌唱。イントロ・間奏・2番Aメロ前半はカットされましたが、TVサイズの尺はほぼ確保されています。ステージの舞台全体せり上がり演出、およびステージでモニターを使った演出はこれが紅白史上初でした。
千昌夫は岩手県のアイドル?という触れ込みでヒット曲「望郷酒場」を歌唱。1番と3番、さらに「南部牛追唄」を拝借する一節も含む構成でした。間奏など歌以外の部分もカット少なめ、そのため演奏時間は比較的長くなっています。
水前寺清子はペンライトを波に見立てるバックの演出で「有明けの海」、こういう演出手法もこの年が初でした。台詞入りの2コーラス、1コーラスが長いので演奏時間は堂々の3分超え。
三波春夫は2年前に歌ったばかりの「雪の渡り鳥」を歌唱、ただステージは当時よりかなり広く使われています。間奏が長くなったため、演奏時間は前回歌唱時より10秒長くなりました。なお歌詞は1番と3番で前回と同じです。(ステージレビュー→紅白歌合戦・三波春夫の軌跡)
川中美幸はこの年初出場、2年越しのロングセラーになった「ふたり酒」を歌います。和服が似合う演歌歌手として現在も活躍中ですが、初出場の衣装はドレス姿でした。1番と3番を歌唱、間奏もしっかり残しています。
西城秀樹は客席後方から派手に登場、専属バンドを従えて「ジプシー」を歌唱。非常に絵になる格好良いステージでしたが、最後に歌詞を間違えるハプニングもありました。サビ繰り返しがカットの2コーラス構成。間奏やアウトロもカット無しで、歌だけでなく演奏でも魅せるステージでした。(ステージレビュー→紅白歌合戦・西城秀樹の軌跡)
小柳ルミ子の「たそがれラブコール」は1コーラスやや長めですが、ラストサビをカットする程度で2コーラス。したがって演奏時間は3分台、おそらく前年までなら1コーラスとサビのみの構成になっていたものと思われます。(ステージレビュー→紅白歌合戦・小柳ルミ子の軌跡)
菅原洋一はハリウッドで活躍した俳優ウィリアム・ホールデン追悼の意を込めて、1955年公開の映画「慕情」主題歌を歌唱(英題:「Love Is a Many -Splendored Thing」)。数多くの歌手がカバーしている名曲ですが、ここではThe Four Acesが歌う原曲を基準とします。元々の原曲が短め、この年は3分前後のステージも多いので必然的にフルコーラスですが、2コーラス目の前半は女声合唱団のみの歌唱でした。
さてこの年はラインダンスや組体操といった歌と全く関係ない応援合戦は無くなりましたが、代わりに歌を主体としたショーコーナーはいくつか組まれました。その第1弾は、若手歌手が主体となって踊る「愛のコリーダ」ステージ。白組からはたのきんの2人と新御三家、紅組からは淳子・ヒロリン・郁恵・聖子・ひとみにシルヴィアという面々が出演。わざわざ紅白のため新たに作られた日本語詞で、踊りを交えたステージを披露しました。
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